【医師監修】子どもの受動喫煙「外で吸ってるから大丈夫」は本当?<パパ小児科医の子ども健康事典 第5話>



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タバコを吸うことや、受動喫煙が体に悪いということは多くの人が知っていることです。では、子どもにとっては具体的にどのような影響があるのでしょうか。これまでにたくさんの研究があります。

(1)乳幼児突然死症候群のリスクの上昇
(2)咳や痰の症状の増加
(3)気管支喘息を発症しやすい
(4)肺がんの原因となる
(5)中耳炎になりやすくなる

参照サイト:National Center for Biotechnology Information

上記のように、さまざまなリスクが科学的に証明されています。肺がんや気管支喘息など呼吸器系に関するものはご存じの方が多いと思いますが、乳児突然死症候群や中耳炎のリスクも上昇させるものです。気管支喘息は発症だけでなく、家にタバコを吸う人がいると発作のコントロールが難しくなります。

受動喫煙だけでなく、誤飲事故の危険もあり、子どもの異物誤飲で最も多いのはタバコです。※1 ジュースの缶を灰皿がわりに使用することで、タバコの成分が溶け出し、それを誤って飲んでしまうと大量のニコチン摂取となり危険です。

また、最近流通している加熱式タバコはスティックが2.5cmほどと小さく、子どもがちょうど口に入れやすい大きさのため、誤飲事故が増えています。※2

受動喫煙や誤飲事故など、タバコは子どもにとって危険が多いものですので、ご自身の子ども、またはお孫さんができたら、子どものためにも禁煙が大切です。

「外でタバコを吸ってるから大丈夫」は本当なのか
しかし小児科医が、喫煙している保護者に禁煙をお勧めしても「外で吸ってるから大丈夫です」などの理由で断られることも多いのが現状です。本当に大丈夫なのでしょうか?


Q1 外で吸っているから大丈夫?
外で吸ったとしても喫煙者の服や髪の毛に有害物質が付着しているため、家の中に運んでしまっています。家で吸わなくとも、喫煙者の肺の中には有害物質が残存し、呼気の中には有害物質が含まれているため、外で喫煙したとしても、受動喫煙をしていると言えます。

Q2 換気扇の下で吸っているから大丈夫?
換気扇の下で吸ったとしても、その煙が全て室外に排出されるわけではありませんから、受動喫煙を防ぐことはできません。※3

Q3 空気清浄機を使ってるから大丈夫?
タバコの有害物質をすべて除去することはできません。このことは空気清浄機の商品ページなどにも記されています。有害物質の多くは気体成分であり、粒子成分にのみ有効な空気清浄機では効果は乏しいと考えられます。

Q4 加熱式タバコは煙が出ないから大丈夫?
現在のところ安全であるという科学的根拠はありません。まだ加熱式タバコは使用されてから日が浅く、受動喫煙についての十分なデータがありません。ゆえに多くの国でまだ加熱式タバコは販売されていませんし、WHO(世界保健機構)も加熱式タバコは規制すべきもとのとしています。※4

タバコを吸ってすぐに肺がんになるわけではありません。10年、20年と吸い続けて発症するので、時間がたたないとはっきりしたデータはとれないと考えられます。

現状では加熱式タバコの健康への影響はよくわからないものとしてとらえるほうがいいでしょう。ただ、煙は出ないとしてもタバコを吸って吐いた息の中には有害物質は含まれています。煙がでないからこそ、傍で吸っていても気づかず避けることが難しいという面もあるため、健康に影響がないというデータが出る可能性は極めて低いと考えます。


やめられない理由はコカインやヘロインに次ぐ依存性
禁煙することは健康面のほか金銭面などでもメリットが大きいため、タバコを吸う人のうちおよそ3割が禁煙したいと考えていますが※5、それでもなお禁煙できないのはなぜでしょうか?

それはタバコ(ニコチン)には「依存性」があるからです。依存性とはタバコがなくなるとイライラしたり落ち着かないなど離脱症状の出やすさのことで、麻薬であるコカインやヘロインに次ぐ強力なものです。※6

そのため、自力で禁煙することは極めて難しく、たとえ禁煙できなくても必ずしも本人がだらしないからというわけではありません。

子どものため、自分のため、どうしたら禁煙できる?
タバコの害がどれだけ子どもにとっても悪いものか分かったとしても、禁煙できない方たちがいるのは確かです。

紙巻きタバコから加熱式タバコに変更したら、少なくともそこには受動喫煙を気にしている「芽」のようなものあるという見方もあります。責め立てて芽を潰してしまうよりは、その芽に水を与えて育て、加熱式タバコもいずれやめることができるようにサポートが必要です。

周囲のサポートを得るには、医療機関で開設されている禁煙外来を受診するのが一番の近道です。家族より第三者の意見のほうが受け入れやすい場合もあり、専門家のアドバイスや治療を受けることができます。

ニコチンを急に切ると離脱症状がでますから、段階的に減量するために禁煙治療薬が用いられます。禁煙外来は全国で1万6000施設以上にあり治療が可能で、中には土日に受診できる禁煙外来やオンライン診療もあります。※7

家族に喫煙者がいると、子どもがタバコを吸い始める可能性が上がります。家族の喫煙は連鎖するため、禁煙をすることはいま子どもへの健康への悪影響を減らすことができるだけでなく、将来的に子どもや孫の世代がタバコを吸う可能性を減らすこともできます。

以前、私が医学生のころ出会った、タバコが原因となる慢性の肺障害の肺気腫であろう男性のことをコラムに書いたのですが、この方も病気を患っているであろうにも関わらず、タバコがやめられない様子でした。

喫煙の連鎖を断ち切るという財産を子ども達や孫、その次の世代にまで残す、この記事を一つのきっかけにしていただけたら幸いです。

参考資料
※1 命を落とすこともある!子どもの誤飲事故 <独立行政法人国民生活センター>
※2 日本小児科学会こどもの生活環境改善委員会
※3How should parents protect their children from environmental tobacco-smoke exposure in the home? <家庭内の環境たばこ煙曝露から両親を守るにはどうすればよいですか?

※4 Heated tobacco products (HTPs) information sheet<加熱タバコ製品(HTP)インフォメーションシート>
※5 平成 28 年 国民健康・栄養調査結果の概要 <3.禁煙意思の有無の状況>
※6 タバコは薬物である<日本禁煙学会>
※7 禁煙治療に保険が使える医療機関情報最新版

(パパ小児科医)

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