重度の産後うつになった女性、子供を奪われる不安から命を絶つ(英)

新しい命が宿ったことを夫と大喜びし、これからの人生を家族で幸せに暮らしていくことを何より楽しみにしていたに違いない女性。しかし出産後に重いうつ病に陥り、生後7週の娘を残して命を絶ってしまった。周りにいる誰一人として、なぜ女性を救うことができなかったのか。やりきれない悲劇のニュースを『The Sun』『Mirror』などが伝えている。

英グレーター・マンチェスターのブレッドベリーに住む元ビューティー・セラピストのマグダレーナ・オナーさん(30歳)が、自宅浴室で首を吊って死亡したのは出産から2か月も経っていない2月24日のことだった。

ポーランド出身のマグダレーナさんは、友人を介して知り合ったトムさん(30歳)と2010年から交際を始め、6年後に結婚した。明るく前向きで優しい性格のマグダレーナさんは家族を何よりも愛し、トムさんの母親ルイーズさんとも義理の母娘というだけでなく仲のいい親友のような関係を築いていたという。

マグダレーナさんは、トムさんと一緒に購入する家の費用を貯めようと懸命に仕事に励んでいたが、妊娠がわかった時には夫とともに大喜びした。そして1月6日、元気な女児を無事に出産、母子ともに翌日退院となった。

退院してから数日間は、子供が生まれた新しい環境に慣れていないからか疲れを見せていたマグダレーナさんだったが、やがて不安や用心深さが際立つようになった。授乳がうまくできていないのではないか、母乳を与えすぎもしくは足りていないのではないか…などと常に心配するようになり、その様子がいつも顔に出るようになった。授乳についてのアドバイスも受けたが、悩むようになっていたマグダレーナさんはトムさんの誕生日にも外出を拒んだという。10月3日にマグダレーナさんの死因審問に出廷したルイーズさんは「そのあたりから症状が悪化していった」と話している。なおトムさんは、最愛の妻を失った心の傷が深く審問に立ち会うことができない状態だったため、代わりにルイーズさんが出廷したとのことだ。

「私に依存するような態度を見せることが多くなり、ポーランドの友人や家族ともコミュニケーションを取らなくなりました。こんなことはまるでマグダレーナらしくない…といった感じでした。抗うつ薬を処方してもらったりしていましたが症状が改善されず、治療のためにポーランドに娘を連れて帰ろうとまで口にするようになりました。生まれたばかりの娘のパスポートを取らなければなどと頑なに言い、飲食もあまりせず、よく眠れていないようでした。」

心配したルイーズさんは、2月16日にマグダレーナさんの診察ための予約を取ろうとGP(一般診療所)に電話をしたが、空きがないので予約ができないと言われてしまった。しかしこの時、ロバート・ベアードセル医師とマグダレーナさんは直接電話で話しており、マグダレーナさんは不眠が続いていることや不安があることなどを打ち明けていたようだ。ルイーズさんは、医師は深刻に取り合っていなかったと話しているが、死因審問で同医師はこのように述べた。

「患者は、子供のことについてとても不安になっていた。呼吸をちゃんとしているか頻繁に確認したりして、用心深くなっていたようだ。授乳についても不安を口にしていたが、授乳することは子供との結びつきに重要だから続けるようにと伝えた。“ベビー・ブルーズ”と呼ばれる産後うつだと思い、治療をすれば大丈夫だろうと薬を処方したが、授乳しているからと飲んでいなかったようだ。患者からは精神疾患や錯覚に悩まされているような様子は感じ取れず、自傷行為をする危険性があるとは思っていなかった。」

しかし結局、医師の読みは外れることになる。マグダレーナさんはその2日後の18日に手首を切った。そこで多岐にわたるメンタルヘルス支援サービスの専門家が揃うチーム「The Rapid, Assessment, Interface and Discharge team(RAID)」がマグダレーナさんに対応し、精神科医のもとへ回されるも在宅治療のコースを受けるのみに留まった。

ルイーズさんは死因審問で、義娘の症状が悪化していたにもかかわらず週に1度のヘルスビジター(子供の成長過程を観察したり母親の子育ての様子を確認する保健師)の訪問では「まったくもって不十分だった」と不満を口にした。

「義娘が電話でヘルスビジターに授乳について不安に思っていることを相談しても、迷惑そうにあしらわれ、自分の話をちゃんと聞いてもらえないととても悩んでいました。」

マグダレーナさんは「抗うつ剤を飲まなきゃならないから、授乳を止めて粉ミルクにしたほうがいいかもしれない」とも話していたという。しかし度重なる不安が幻想を生むようになり、「ソーシャルサービス(社会福祉機関)が私から子供を取り上げてしまう。そうなったら大変なことになる」と恐怖を感じてしまうようになっていた。そして2月24日、ついにマグダレーナさんは命を絶ってしまった。この日、トムさんは友人の結婚式にベストマンとして参加する予定で家を空けており、ルイーズさんが2人の家に泊まっていた。

シャワーを浴びているにしてはやたら時間がかかっている…気になったルイーズさんが浴室ドアのロックを5ペンス硬貨でこじ開けると、変わり果てた姿のマグダレーナさんを発見した。このような最悪の事態になるかもしれないという兆候を、それぞれの専門家が誰一人として見抜けていなかったことが悲劇に繋がったと言えなくもない。しかしヘルスビジターのヘイゼル・ウィルソンさんは、法廷でこのように発言している。

「産後うつになっていることに心配ではあったが、特に問題があるようには見受けられなかった。赤ちゃんとの生活が落ち着くまでは周りのサポートを得ればいいと思ったし、こちらもベビークリニックや授乳グループへの参加を勧めた。私自身は、メンタルヘルス支援サポートの訓練を受けてはいるが、それを訪問先で提供する立場ではない。」

また、マグダレーナさんの在宅治療担当だったアナ・ロイ医師はこう語った。

「手首を切ったすぐ後ではあったが、こちらの質問には的確に答えていた。『バカなことをした、死なずに済んで良かった』と患者は話していた。うつ病であることを理解していたが、これ以上自傷行為のリスクがあるとは思えなかった。」

ストックポートRAIDチームのケア・コーディネーターであるマイケル・ヒューズさんは「引き続き注意が必要という思いはあったが、家族がしっかりと支えているようだったので大丈夫だと思う気持ちもあった。子供には全く危害を加えていなかったが、母親を救うことは子供を救うことにも繋がるため、精神科医を紹介した」と話している。

法廷では、クリス・モリス検視官が「明るく活発で、人生まだまだこれからという時であり、母としてもその人生を送ることを楽しみにしていたに違いないであろう女性に、このような悲劇が訪れたことは非常にいたたまれない」と述べた。

このニュースを知った人からは「あまりにも悲しすぎる」「もっと専門家らがきちんと適切な対応をしていたら避けられたかもしれないだけに…残念でならない」「私も産後うつの経験があるけど…不安が強すぎて、疑心暗鬼になって、もう死ぬんじゃないかって思った」「とても胸が痛む。家族のみなさんにお悔やみ申し上げます」といった声があがっている。

画像は『The Sun 2018年10月4日付「TRAGIC MUM Beautician, 30, hanged herself after post-natal depression made her wrongly fear social services would take her newborn away」(IMAGE: CAVENDISH PRESS)』のスクリーンショット

(TechinsightJapan編集部 エリス鈴子)

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