カーマニアがクルマを買うのは「自分の割れた腹筋を鏡で見る」ようなもの

日刊SPA!

2018/10/7 08:53



今年登場したトヨタの新型クラウンのCMで、初めてニュルブルクリンクの名前を知り、世界一過酷なサーキットだと認識した人は多いでしょう。このニュルで一番速いクルマというのは一つの大きな勲章。まるでマンガの世界です。そんなニュルにおけるFF最速の称号をホンダから取り戻すべく、ルノーの伝説のクルマが新型になって登場しました!

MJブロンディ改め永福ランプ=文 Text by Shimizu Souichi

池之平昌信=写真 Photographs by Ikenohira Masanobu

◆世界の草野球の王者を目指す伝説のクルマ再び!

乗り物と言えば満員電車専門で、それ以外はめったに乗らない読者のみなさま、こんにちは! 今回はまたしても、みなさまにはまったくどーでもいい話題を取り上げます。だからこれ以上読まないでください。時間のムダですから。

では、始めます。新型ルノー・メガーヌRSが発売になりました~! うおおおお~。コーフンするなあ。

なにしろ先代メガーヌRSは、ニュルブルクリンク(略してニュル)でFF最速を誇ったマシン。なんのことかわからないでしょうが、ドイツのニュルブルクリンクというとても過酷なサーキットで、前輪駆動のクルマの中では、世界一速かったということです。うーん、説明が長い。

ニュルブルクリンクは、1周3000円くらい払えば誰でも走れるサーキットで、私も激遅レンタカーで走ったことがあります。誰でも走れるだけに、市販車がタイムアタックをして、おのれのスゴさを見せつける“スッポンパワーな舞台”となっているのです。

このニュル市販車最速の座は、最近はランボルギーニとポルシェが争っているようですが、FF最速に関しては、メガーヌとシビック(ホンダ)が火花を散らして参りました。

ランボ対ポルシェなんて、ゴジラ対キングギドラみたいなもんだけど、FFというのはつまり基本的にフツーのクルマということで、わりと誰でも買える。そのなかで最速というのは草野球のチャンプみたいなもので、アツいカーマニア達は、「メガーヌRSに乗ればオレもチャンプになれる!」と、ライザップのCMのようにその気にさせられたものでした。

そんな伝説のクルマが新型になったので、カーマニア達は「いったいどんなマシンなんだ!?」と興味津々なのです。

「メガーヌRSなんて見たことも聞いたこともねえけど?」

満員電車派の諸君はキョトンとするでしょうが、実は本邦はメガーヌRSにとって世界で5番目の大市場。先代の全生産台数3万3000台のうち、約7%が日本で売られたそうです。奇しくもこの比率は、フェラーリが日本で売られる数字に近い。実は日本は、ディープなカーマニアが多数生息する国なのです。

そんなわけで、フランス人も新型メガーヌRSの開発にあたって、日本市場を重視したとのこと。日本でもテスト走行を繰り返し、なんと「首都高のジョイントでガツンと来ないようにした」というのですから、首都高を愛する私は涙が出ます。

ただ、カーマニアが残念がるのは、先代は3ドアだったのに新型は5ドアになったこと、そして当面はAT車だけということです。「メガーヌよ、お前もか!」という感じです。

もちろん5ドアのほうが便利だし、MTよりATのほうが速い。実を取れば正しい方向性なのですが、カーマニアは心が狭いので、なかなか納得しないのです。

で、その走りはどうだったか。

速かったです……。

「4コントロール」という四輪操舵システムが、状況に応じて後輪も少し切ってくれて、電車がレールの上を走るみたいに自動的に曲がる! ガチにカーマニア向けのクルマが電車に似てしまったのは皮肉ですが、パワーも279馬力ですげぇ加速! 音もイイ! うおおおお~~~!

しかしまあ、実はカーマニアにとっても、実際の速さはわりとどうでもよくなっています。それよりも、3ドアのMTしかなくてニュルFF最速という、「硬派なメガーヌRS(先代)に乗るオレ」に萌えたのだと思います。

つまり、5ドアでATのラクチンで速い新型メガーヌRSに440万円出すならば、200万円しないスイフトスポーツ(スズキ)のMTに乗ってたほうが、ソンケーされるかもしれない。性能的にもホントはそれで十分だし。

結局カーマニアがクルマを買うのは、割れた腹筋を鏡で見るみたいに、「それに乗るオレ」に萌えたとき。性能じゃないのでした。

<結論>

いま、カーマニアに尊敬されるのは、「速いクルマではなく、つらいクルマ」です。古いとか、故障しそうとか、パワステがないとか、最低限「クラッチ踏むのってめんどくさいのにMT車に乗っててエライ!」とか

【清水草一】

1962年東京生まれ。慶大法卒。編集者を経てフリーライター。『そのフェラーリください!!』をはじめとするお笑いフェラーリ文学のほか、『首都高速の謎』『高速道路の謎』などの著作で道路交通ジャーナリストとしても活動中。清水草一.com

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