「リノベーション済み」のマンションはアリなのか


○リノベーションとは? リフォームとどう違う?

「リノベーション」は新たに認知された言葉です。それまで一般的であったリフォームとどう違うのでしょうか。不動産業界が新たなニーズを求めて、「リノベーション」という言葉を活用し始めたことが認知の理由の一つです。

長く続く経済の低迷や震災を経て、日本人はようやく「絆」など「モノ」ではない価値に改めて目を向けるようになりました。そうした気運の中、若い世代では中古の比較的安価なマンションを購入して、思い通りにリノベーションして、自分達の「暮らし」を創造しようとする傾向が生まれてきました。

リノベーションとは「新しい暮らし」「新しい価値の創造」へ発想の転換といった意味合いを、より強調する時に使われるものだと思います。設備や単なる間取りの変更ではない、「ときめきのある暮らし」というソフト面に焦点を当て、日本の住生活がようやく本当の「質の時代」へと向かうことを示すキーワードといえます。

リノベーションとリフォームを正確に区分する規定はありません。我が家も数年前に模様替えをしましたが、一般的基準からすると我が家はリノベーションではなくリフォームとなりそうです。しかし、やがて来る老後の生活の新しい価値を求めての投資であって、気持ちはリノベーションなのです。

我が家の今後の生活に必要なものは、家事負担が削減でき効率的な収納、趣味に没頭できる空間や長年の夢である本に囲まれたコーナー、在宅業務になったので快適な事務空間と接客スペースといったきめ細やかな空間設定なのです。

リノベーションは目に見えない価値の創造であるので、意図を伝え理想的な空間を手に入れるには、相当のエネルギーが必要といえます。
○リノベーションのメリット・デメリット

メリット……メリットとしては以下のものがあります。
1. 新築より価格を抑えられる
2. 思い通りの内装・空間・設備等が選択できる
3. 中古物件は多種多様。立地や広さなど、希望に合ったものが見つかる可能性がある。
4. 一つの建物を長く使い続けることにより、地球環境保全に寄与する。

デメリット……デメリットは下記のように、とにかく手間隙がかかることです。
1. 思い通りの設計を実現できる建築士や施工業者選びが大変
2. 暮らしの意図を伝える努力とエネルギーが必要
3. 理想の暮らしを実現するために時間がかかる
○リノベーション済みの物件とは

リノベーション済みの物件が売りに出されていて、それが自分たちのニーズに見合っていれば、前述のデメリットは解消されます。価格が妥当であれば、購入に問題はないでしょう。しかし、リフォーム+α程度のものであれば別ですが、本当の意味での自分たちにフィットする物件はそう見つからないはずです。

では売る側がリノベーションを行って売り出す意図やメリットは何でしょうか。リフォームやリノベーションを行ってから売り出すのは、売りやすくするだけでなく、リフォームやリノベーションにかかった費用も上乗せして販売できるからです。単に価格を高く設定できるだけでなく、一般にリフォームやリノベーションも仲介業者や売主(不動産業者)が行いますので、その利益もプラスされます。リフォームやリノベーションの利益率は高く、業者にとって大いにメリットあるのです。

売主が不動産業者でなく個人の場合は、売主にリノベーションさせれば仲介業者はリスクを売主に負わせて、物件を売りやすくできます。リノベーションによる付加価値は売値に反映されますが、売れずに価格を下げざるを得なくなった時の負担は売主が負います。仲介業者がリノベーション工事を請け負えば、それに対する利益も得られます。高額のリノベーションを売主に行わせ、売れなければ価格を下げる悪質な業者もないわけではありません。

時間もエネルギーもかかりますが、できればリノベーションもリフォームも行っていない物件を安く購入し、自分でリノベーションする方がコストを抑えられる可能性があります。
○リノベーションに成功するには

リノベーションに成功するには、自分達にとっての「ときめきのある暮らし」を建築士や工事店に正確に伝えなくてはなりません。当然ながら、自分達の「ときめきある暮らし」とはどのようなものかがはっきりしている必要があります。生涯設計がしっかり作られていて、暮らしのスタイルが明確でなければなりません。

リノベーション済みの物件を購入する場合も、同様です。リノベーションが新しい価値の創造であるのなら、自分たちの価値観を明確にして、それとマッチしているかどうかの見極めが必要なはずです。万人向けのリフォーム済み物件と違い、良いリノベーション物件を選び出すには生活スタイルの価値観が明確である必要があります。

リノベーションに成功するには、住まいを新築するときと同等の心構えが必要ではないかと思います。
○リノベーションで利用できる制度

住まいの取得に関する優遇制度は、リフォーム等にも適用される場合もあります。代表的なものは次のものがあります。

中古住宅と住まい給付金……「住まい給付金」は原則新築住宅が対象ですが、中古物件購入場合も住まいの給付金が受けられる場合がます。中古住宅購入者の条件は、新築住宅の条件のほかに、売主が宅地建物取引業者であること、売買時等の検査により品質が確認された次の住宅((1)既存住宅売買瑕疵保険に加入・(2)既存住宅の性能表示制度を利用し、耐震等級1以上・(3)建設後10年以内で、新築時に住宅瑕疵担保責任保険に加入または建設性能表示制度を利用)となっています。ローンを利用しない50歳以上の現金購入者も、一定条件を満たせば給付を受けられます。

リフォームで利用できる税の優遇措置……リフォームの際に利用できる税の優遇措置は下記の3つです。それぞれに要件が設定されています。互い併用可能なものとそうでないものもあります。このほかに固定資産税の減額制度なども設定されています。一般的には建築士事務所登録している事務所に所属する建築士が、適用の対象となるかどうかを確認し、所定の証明書を発行する仕組みとなっていますので、詳細は建築士等にご相談ください。

(1)中古住宅・リフォームの住宅ローン減税: 住宅ローン減税を利用できる中古住宅は、耐火性能や築年数等の条件があります。耐火建築物の場合の築年数条件は、取得の日以前25年以内に建築されたものに限定されます。

(2)リフォーム減税(ローン型減税): 所定のバリアフリー工事または省エネ工事を行った時、5年以上の償還期間を有するローンの場合、残高の1%または2%が5年間、所得税額から控除されます。

(3)投資型減税: リフォームローンを利用しない場合、確定申告により、最高20万円所得税額から控除されます。

贈与税の非課税措置……大規模修繕や区分所有部分の過半の修繕模様替え、耐震補強、省エネ対策等、所定の工事を行った場合、贈与税の非課税措置が受けられます。平成25年は700万円(耐震性・省エネ工場は1,200万円)まで、控除されます。

【フラット(リフォーム一体型)】【フラット35】リノベ……中古住宅を購入してリノベーションを行う時や住宅事業者により一定の性能向上リフォームが行われた中古物件を購入する場合、一定期間金利が引き下げられる制度です。

○■著者プロフィール: 佐藤章子

一級建築士・ファイナンシャルプランナー(CFP(R)・一級FP技能士)。建設会社や住宅メーカーで設計・商品開発・不動産活用などに従事。2001年に住まいと暮らしのコンサルタント事務所を開業。技術面・経済面双方から住まいづくりをアドバイス。

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