鴻上尚史、『タモリ倶楽部』に出たいのに出られない理由

日刊SPA!

2018/10/6 15:50



― 連載「ドン・キホーテのピアス」<文/鴻上尚史> ―

◆久しぶりに『タモリ倶楽部』に出演したときのこと

仕事で松山に出張した飛行機の中で、美人のフライトアテンダントさんから「タモリ倶楽部、毎回、楽しみにしています」と話しかけられました。

『不死身の特攻兵』でも、芝居のタイトルでもなく、『タモリ倶楽部』と言われて、お尻がこそばゆくなりました。

『タモリ倶楽部』のエロ担当とウィキペディアの鴻上尚史の項には書かれていますが、じつは、思われているほど出演していません。

細かい事情を語れば、13年間司会を担当している『cool japan』と収録が同じ土曜日で、何度も出演依頼がかぶりました。

タモリさんにとっての『タモリ倶楽部』が、僕にとっては『cool japan』なので、まさか、「ちょっと、タモリ倶楽部に出て来るので収録を休みます」なんて言えるはずもなく、何度も「おお! エロの特集じゃないか! 俺が出ないで誰が出るんだ!」と悶絶しました、が、無理なものは無理でした。

今回、久しぶりに出演させてもらいましたが、テーマはエロではなく、「今夜解決!! クリーニング業界に『舎』が多い理由」というものでした。

全国的には、これから放送される場所もあるので、「舎」が多い理由は書きませんが、(あっと言う間に解明されてしまうのですが)その後、時間がどーんと余り、しょうがないので「クリーニング屋あるある」に企画を変えたものがとても面白かったです。

都内の個人経営のクリーニング屋さんが5人ほど集まっていろいろと教えてくれました。

あるクリーニング屋さんは、「テレビドラマに出てくるクリーニング屋で働く人はみんな貧乏。クリーニング屋が貧乏人の記号になっている」と憤慨していました。

思わず笑いました。

『ひとつ屋根の下』もそうでしたし、最近の映画『万引き家族』の安藤サクラさんも、クリーニング屋さんで働きました。なんでしょうねえ。あきらかに作家側のイメージの貧困でしょうかね。

◆些細なことを面白がる知的な遊び心

それから、「どのクリーニング屋さんにも、引き取り手が何十年も来ない洋服がある」というのもじつに想像力を刺激されました。

実物を見せてもらったのですが、ものすごくオシャレなジャケットやカラフルなシャツなんかが、ずっと引き取られないまま、倉庫に眠っているのです。どうにも、捨てるわけにはいかないのだそうです。

いつも御用聞きに行って、箱一杯にクリーニングを頼んだ家の人は、ある時、訪ねたら誰もいなくなっていたと、クリーニング屋さんは語りました。

箱から出して広げてみれば、昭和の香りのするカラフルな洋服で、それなりの値段のものに見えました。

何があったんだろう、夜逃げなんだろうか、いつか引き取りに来るんだろうか、と考え出すといくらでも想像が膨らみます。

別の二代目のクリーニング屋さんは「血がついた洋服を預かったら、警察に届けるように」と、父親から言われたそうです。

「なるほど、事件かもしれないですからね」と、タモリさんと共にうなづいたんですが、よく考えると、「いや、人殺して、返り血を浴びたから、これをクリーニングしてくれ、なんて殺人者はいるのか」という疑問が浮かびました。

本当はよく考えなくても浮かばないとダメなんでしょうね。

で、「いや、どうしてもお気に入りの一着だったからとか、思い出の洋服だったとか、父親の形見の洋服だったからとか、そういう場合なら、殺人者もクリーニング屋に出すかもしれない」と、強引な解釈で盛り上がりました。

「で、今までそういう血まみれの服はあったんですか?」と聞けば、「いえ、事件性を感じるものはありませんでした」と、その二代目のご主人は、じつに残念そうに答えました。

あきらかに鼻血とかケガだと分かる場合はあって、それはちゃんと落とせるんだそうです。

些細なことを面白がるためには、知的な遊び心が必要で、同時にうんとくだらないことを楽しむ『タモリ倶楽部』のような番組は本当に少なくなったなあと思っています。

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