音を立てたら即死の世界で妊娠…監督「エヴリンの妊娠は希望の象徴」

クランクイン!

2018/10/5 17:00

 低予算ながら全米で大ヒットし、現在日本でも公開中のホラー映画『クワイエット・プレイス』。主演は女優のエミリー・ブラントが務め、実生活で彼女の夫であるジョン・クラシンスキーは、本作で監督・脚本・出演の三役をこなした。そんな本作の中心人物であるジョンに、作品のポイントや撮影時のエピソードを聞いた。

【写真】監督、脚本、出演こなしたジョン・クラシンスキー『クワイエット・プレイス』メイキング風景&場面写真

本作は、音に反応し人間を襲う“何か”によって、人類が滅亡の危機に瀕している荒廃した世界を舞台に、生き残りをかける家族の姿を描いたサバイバルホラー。互いにハリウッドで活躍しながら本作が初の共演となったジョンとエミリーは、劇中でも夫婦役を演じている。

本作の大きなポイントのひとつは、音を立てれば殺されるという極限の状況の中、妻・エヴリン(エミリー)が妊婦であるという点だ。このアイデアについて、ジョンは「エヴリンが妊娠しているということは、この作品においてすごく好きな点です」と一言。続けて「このことはエンターテインメントとしての緊張感を高める効果以上に、エヴリンの人間性と人生観を反映しているからです」と話す。

「夫のリー(ジョン)はある意味、あきらめています。喜びを認識したり感じたりすることができなくなり、家族が生き延びることしか考えていない。一方で、エヴリンは生き残るだけでは満足しません。世界は美しいと感じる心を持ち続けている。だから周囲をできる限り温かみのあるように飾り付けたりします」。

さらに、妊娠が発覚した際のエヴリンの反応を「恐れるのではなく喜ぶんです」と明かすジョン。「エヴリンは希望の象徴なのです」と語り、荒廃した世界における“未来”を感じさせる存在であることを示唆した。

本作には“音を立ててはいけない”という絶対のルールがある。そのため、映画の前半はほとんど“音がない”状態で物語が展開する。その点について、ジョンは大きな不安を抱えていたという。「一番不安だった部分でもあります。綱渡りのようでした。上手く行けばすごいものになると確信していましたが、上手く行かなければ…大失敗だと」。この異例の物語を映像として実現するにあたっては、現場で培われた部分が大きかったという。

「特にキャストとのシーン撮影は面白かった。果たして観客に飽きられる限界はどこなのか。せりふがなくても感情は同じように伝わるのか。キャスト全員がそろった撮影初日のことを鮮明に覚えています。カメラが回り始めると、僕の妻だけでなく、とてつもなく力のある子役たちの、ちょっとした目線や小さな仕草で、ものすごく伝わってくる。せりふがないことの威力に圧倒されました。実際に目の当たりにしたことで、作品の可能性に気づかされて…あとは突っ走るのみでした」。

そうしてジョンが確信を持って撮りあげた『クワイエット・プレイス』は、全米で大ヒット。2018年度のオリジナル作品No.1ヒットを記録している。実は、ジョンにとってホラーというジャンルの作品を監督するのは今回が初である。参考にした作品があるか聞いてみると、次のように答えてくれた。「ヒッチコックの手法はつぶさに研究しました。でも、個人的にはコーエン兄弟やポール・トーマス・アンダーソン監督の作品の方が感じるものがあります。『ノーカントリー』や『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』の演出に触発されました。大金を発見したり、油井(ゆせい)を掘ったり…一言も発せずに展開していきます。重要なシーンで沈黙がすごく活きているんです」。

大ヒットをうけて、第2弾の製作も決定した『クワイエット・プレイス』。ジョンが引き続き監督を務めるかどうかにも注目が集まるが、まずは、本作でジョンが見せた手腕を堪能してほしい。(文・川辺想子)

『クワイエット・プレイス』は公開中。

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