木下ほうか「でも、やめようとは思わない。好きですから」天職で楽しみ、苦しむ人間力

日刊大衆

2018/10/5 17:00


 今、『チア☆ダン』という連続テレビドラマに出させてもらってるんですが、若い人たちのエネルギーというのは美しいですね。高校のチアダンス部をテーマにしたストーリーだから、踊るシーンがたくさんあるわけですが、チアダンス部員役の子たちは出番がないときもずっと練習してる。彼女たちの無垢な姿を見ていると、胸がジーンとしますね。ああ、僕は汚れた大人になっちゃったな、と。

僕の役どころは学校の教頭であるとともに、佐久間由衣ちゃんのお父さん。全国から「そんなにビジュアルが違う父娘はおらんやろ!」という声が聞こえそうですが、そこはまぁ、お母さんが美人やったということで(笑)。僕自身は結婚していないから、娘というのがよく分からない部分もあるけれど、みんなで踊っているシーンも由衣ちゃんばっかり目で追ってしまうんですね。これが父親というものなのかと、疑似体験させてもらってます。

僕の高校時代は……中途半端な大阪のヤンキーでした。パンチパーマかけて暴走族のまねごとをして、でも定期テストの前にはちょこちょこっと勉強もしてしまう。父親が建築事務所をやっていたけど、継ぐとなったら難しい国家試験を通らなくちゃいけないから無理。かといって他にやりたいこともない。本当の不良になる勇気もない。何もない……というのが、当時の僕でした。

転機になったのは、新聞で見つけたオーディション告知。大阪で不良映画を撮るっていうんですよ(『ガキ帝国』井筒和幸監督)。芸能界に憧れる気持ちがあって、軽い気持ちで応募したら受かってしまった。撮影現場がうれしくて、自分の出番がない日も現場に通ってました。

■撮り終えても「もっとやれたんじゃないか」と後悔する

 何もなかった僕が、初めて「これや」と思ったのが、役者という仕事だったんです。以来、長いことやってきましたが、最近つくづく「好きだから、ずっとやってるんやな」と思いますね。

一番好きなのは、新しい作品の台本を受け取る瞬間。「こんな役をやれるんや!」とワクワクします。その次が、完成した作品を観るとき。共演者やスタッフと飲みに行って、しゃべるのも大好きですね。でも、撮影そのものが楽しいかと聞かれたら、けっして楽しくはない。

だって、台詞を覚えたり、『チア☆ダン』でいえば方言を身につけたり、10月から始まる『下町ロケット』みたいな作品だと専門用語も覚えなくちゃいけないわけですよ。事前準備はしんどいことだらけ。本番になったらなったで、ものすごく緊張するし、必死で覚えた台詞が出てこないこともある。撮り終えても「もっとやれたんじゃないか」と後悔する。全然楽しくない。

でも、やめようとは思わない。好きだから。理想的なのは、台本をもらって、ふと気づいたら撮影が終わってる。試写を観て、打ち上げ。または、台詞がひとつもない主役。無茶苦茶ですよね、言ってることが(笑)。こんなしょうもないことを言っていられるのは、ありがたいことにたくさんの仕事をいただけているからです。

若い頃は台詞がひとつでも多いとうれしかった。売れている仲間と飲みに行って、そいつだけが写真やサインをねだられると悔しかった。

それが今は、毎クールドラマに出演させてもらっているうえに、イヤミ課長という名物キャラまでできてしまった(バラエティ番組『痛快TVスカッとジャパン』で木下が演じる人気シリーズ)ので、子どもや女子高生が「キャーッ」って寄ってきてくれるんですよ。

中途半端な大阪のヤンキーには、十分すぎる人生だと思っています。これから? よく聞かれるけど野心はないですよ。来たものをやる、それだけ。強いて言えば、純愛ものでのラブシーンですかね、絶対に来ないけど(笑)。

木下ほうか(きのした・ほうか)
1964年1月24日、大阪府出身。1981年映画『ガキ帝国』で俳優デビュー。以来、数多くの映画、テレビドラマに名バイプレーヤーとして出演。主な出演作は映画『かぞくいろ』、『空飛ぶタイヤ』、ドラマ『下町ロケット』(TBS)『幸色のワンルーム』(朝日放送)など多数。2014年にスタートしたバラエティ番組『痛快TVスカッとジャパン』では、部下に嫌みを言う「イヤミ課長」こと〝馬場智明役を演じ、番組の顔というべき大人気キャラクターになっている。

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