創薬を加速。ノーベル化学賞は生物の進化の力で新物質を作り出した研究者3人に

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Image: Ragnar Singsaas (Getty Images)
オスロでのノーベル賞授賞式にて撮影されたノーベルの印影。2015年オスロ 

2018年のノーベル化学賞受賞者が発表されました。

今回は米国と英国出身の3人の生化学者の共同受賞です。安全で環境にやさしい化学物質や創薬に役立つ分子を作り出す新しい方法を研究・開発した功績を称えるものです。

カリフォルニア工科大学で化学工学を研究するフランシス・アーノルド博士、ミズーリ大学コロンビア校の教授ジョージ・スミス博士、英国のイギリス政府の医学研究局(Medical Research Council: MRC)MRC分子生物学研究所所属、遺伝子工学・たんぱく工学のグレゴリー・ウィンター博士の3人による共同受賞となります。中でもアーノルド氏はノーベル化学賞を受賞した歴代5人目の女性となりました。賞金900万スウェーデンクローナ(約1億1500万円)はこの3人で山分けする形に。

スウェーデン王立科学アカデミーはノーベル化学賞を授与する声明で「今年のノーベル化学賞受賞者3人は、いずれも生物進化のパワーからインスピレーションを得て、人類の化学的問題を解決するタンパク質の開発に、「遺伝的変化と遺伝的選択」という共通の原則を使用した研究を行った功績が認められたものです」と述べています。

アーノルド氏の受賞理由は、酵素についての先駆的研究です。生化学反応を加速させる触媒として機能するたんぱく質を発見した功績によります。 1993年、アーノルド氏は酵素の進化を人が導くことができることを、人類で初めて証明しました。アーノルド氏は、特定の酵素の遺伝暗号にランダムな突然変異を発生させ、酵素の新たなバリエーションを作りだし、乳タンパク質の分解など、最も望ましい効果をもたらした変異を選択することに成功しました。 これは「酵素の指向性進化」と呼ばれるもので、この研究はより環境に優しい化学物質と再生可能な燃料を作り出すために、アーノルド氏をはじめ、他の研究者によっても研究がすすめられており、実際に使用されてもいます。

スミス氏とウィンター氏については、バクテリアに感染して増殖するタイプのウィルスである「バクテリオファージ」を研究し、新しい手法であるファージディスプレイ法を開発しました。

1985年、スミス氏は新しいタンパク質の進化を操作するためにファージを使用できることを研究で示しました。これは「ファージディスプレイ法」と呼ばれるもので、ウィンター氏はファージディスプレイを使用して、薬物として作用する可能性のある新しいタイプの抗体を進化させました。これらの薬剤(2000年代初めに承認済み)は現在、進行性がんと自己免疫疾患の治療および毒素の抑制に日常的に使用されています。

スウェーデン王立科学アカデミーによれば、この「指向性進化法」は、さまざまな分野に応用できることが期待されており、現在実際に活用されている事例は、そのほんの幕開けにしかすぎないとのこと。「"指向性進化による革新"はまだ始まったばかりです。この革新的研究によってもたらされる未来は、人類にとって明るく 光り輝くものであります」と希望に満ちたコメントを残しています。

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