伊藤銀次と語る著名ミュージシャン逸話にスージー鈴木「楽しいなあ」

ザテレビジョン

2018/10/5 14:37

■ 銀次×スージーのトークは野球話からスタート

9月24日、東京・代官山 WGTで「Talk & Live Re:spect vol.2―人間交差点 ♪ 伊藤銀次」と題するトーク&ライブイベントが行われた。

1980年代の音楽エンタメに特化したオリジナルコラムを毎日配信するコミュニケーションメディア「Re:minder(リマインダー)」と、BS12 トゥエルビの音楽番組「ザ・カセットテープ・ミュージック」がコラボレーションするイベント「Re:spect(リスペクト)」の第2弾。

イベントは、ミュージシャン・アレンジャー・プロデューサーの伊藤銀次が音楽界に残してきた功績を、「ザ・カセットテープ・ミュージック」で活躍する音楽評論家・スージー鈴木のMCでたどる形式で進行。大滝詠一、山下達郎、佐野元春、沢田研二、ウルフルズなど、伊藤銀次が関わった偉大なるアーティストの逸話の真相が次々と明かされた。

冒頭、FEN(在日米軍向けラジオ放送。現AFN)やザ・フォーク・クルセイダーズの話から始まり、音楽トークに突き進むと思いきや、大の野球好き・スージー鈴木のひと振りから、南海ホークスの話に。

「大阪出身だから阪神ファンと思われがちなんだけど、阪神タイガースが好きだったことはないんですよね。阪神は兵庫県の球団ですから。大阪は南海か近鉄かで、僕は南海。小学生のころは南海ホークスがすごく強くて。野武士のような、好き勝手にプレーしている選手がいっぱいいてね。大沢啓二、杉浦忠…。野村(克也)さんのことはずっと追い掛けていて、テスト生で入って三冠王にまでなった。野村さんがクビになった時に、南海はバカな球団だなあと思ったものです」(伊藤)などと熱弁し、果ては大滝詠一=野村克也説にまで話は発展した。

■ スージー鈴木による伊藤銀次8つの「事件簿」

スージー鈴木は、トークを進めるにあたり、その豊富な音楽知識の中から厳選した「事件簿」を8つ用意。大滝詠一関連の逸話を中心に、最も近いところにいたであろう伊藤銀次に、事の真相を尋ねていった。その「事件簿」とは以下のようなもの。

1)「大滝詠一・南海ホークス発言」事件、2)「高円寺ムーヴィンのBGM」事件、3)「山下達郎、大滝詠一に反抗」事件、4)「告井延隆ラーメン破門」事件、5)「大滝詠一に『日本の喜劇人』を薦める」事件、6)「次は僕が歌うよ」事件、7)「キーが1音高かった」事件、8)「銀次、そのジェイ・グレイドンみたいなギターは僕の仲間じゃないんだ」事件。

2)は、東京・高円寺のロック喫茶「ムーヴィン」で、伊藤が、アマチュアバンド時代の山下達郎の自主制作盤『ADD SOME MUSIC TO YOUR DAY』を耳にしたことから二人の、ひいては大滝詠一と山下達郎の出会いにつながったという事件。

その盤を聴いた伊藤は「ビーチ・ボーイズをやろうとしているのは間違いない。(山下達郎の)リードボーカルが始まると、『スゴイ!』『ビーチ・ボーイズよりもビーチ・ボーイズだな』と思った。パッと聴いただけで、歌い方のセンスはズバ抜けてるなと思ってビックリした。さっそくジャケットの裏面にあった電話番号に『アルバムが欲しいんですけど』って電話した」という。

「このアルバムのことを大滝さんに話したら、『連れてきなさい』という話になって。大滝さんはアルバムへのコーラス参加を山下くんのグループに依頼しようとした。山下くんは『コーラスグループと誤解してもらっては困る』みたいなことを早口で話して。隣で僕が凍り付くほど生意気だったけど、大滝さんは帰った後に『イイね! 生意気なのイイね!』って。『若獅子』っていうあだ名をつけた」(事件簿3))という思い出にも言及した。

■ スージーいわく、本日のハイライト・ラーメン事件

事件簿4)「告井延隆ラーメン破門」事件は、「これを聞くためにここに来たと言っても過言ではない」(スージー鈴木)という逸話。

「センチメンタル・シティ・ロマンスで活躍した告井延隆さんが、スタジオで大滝さんが作ったラーメンを『まずい』と言ってしまって、破門されたという話がある。それがなければナイアガラ・トライアングルというのは、山下達郎ではなく、大滝詠一・伊藤銀次・告井延隆だったかもしれないという話。これは事実ですか?」とスージーが問うと、「そうですね」と伊藤はあっさり認めた。

「大滝さんから呼び出しがあって行ったら、カンカンに怒ってて。『もう告井は出入り禁止だ』って。それを言い渡せって言われたんだけど、結局言わなかったんですよ。30~40年たってから告井くんに話したら、けんもほろろでね」と伊藤は真相を告白した。

このほか、伊藤がプロデュースを手掛けたウルフルズ、トータス松本にまつわる話や、沢田研二のレコーディング秘話、佐野元春と沢田研二の関係性など、多岐にわたる「証言」を惜しげもなく披露。

沢田&佐野のエピソードでは「沢田さんは佐野くんを知った時に、『同志』と感じたのではないか」「佐野くんは曲を作るにあたって、沢田研二のすべての楽曲を聴いて、『(沢田研二とは)王子だよ』と表現していた」といった貴重なエピソードを公開した。

トーク終了後は、伊藤銀次のギター1本によるミニライブも開催。「笑っていいとも!」(1982-2014年、フジテレビ系)のテーマソング「ウキウキWatching」や「BABY BLUE」を披露して終演となった。

■ 終演後のインタビューでも銀次節炸裂

イベント後、短いインタビューに応じてくれた二人。伊藤銀次はここでもまた別の大滝詠一のエピソードを披露してくれた。

――予定を超える長時間のトークショーでした。トークイベントもしばしば開催されているのですか?

伊藤:武蔵小山のアゲインというところでね。フォークロックについて語ることを12回くらいやったことがありますよ。「銀次の部屋」といって、ゲストを迎えるものもやりました。いつも音楽ライブでもトークが多いんで、全体で3時間くらいになっちゃう(笑)。

マネージャーからもトークイベントはトークイベントで別にやった方がいいんじゃないかって言われてるくらいで。うっかりしてるとしゃべりすぎちゃう。一つのことを語ると、芋づる式にいろんなことが出てくるんですよ。これもしゃべっとかないといけないなと思ってしまう」

――エピソードの記憶がすごく鮮明だなと思いましたが。

伊藤:何回か話しているうちに濃くなっている部分もありますね。講談みたいなもんじゃないですか。いろんなところで話していると話し方も慣れてくる。ナイアガラのメンバーはみんなおしゃべりなんですよ(笑)。大滝さんも、山下くんも。それから佐野くんなんかも。

――スージーさん、最も印象的だったのはどのお話ですか?

スージー:やっぱり、今日の山はラーメン事件でしょ。ラーメン事件はいろんな本に書かれているけれど、最終的に告井延隆に伝わっていなかったというのが発見でしたね。

伊藤:だって言えるわけないじゃないですか。出入り禁止とか言っても、弟子とかでもないんだから、別に来なくてもいいでしょ。来なくてもいい人を出入り禁止にするってどういうことなんだろうって思うよね。

スージー:これが一番の発見でした。今日来てよかったと思う。

伊藤:そういう、大滝さんの明るい理不尽な感じって、面白いよね。あと、ロネッツ事件とか。

スージー:ほう、それはどんな話で?

■ 実は伊藤銀次も破門されていた・ロネッツ事件

伊藤:大滝さんとよく中古レコード屋に行っていたんですよ。いちおうの縄張りを決めてあって、1964年より後は僕の陣地。64より前は大滝さん。「64年より前のものを見つけたら、何でもいいから買ってくれ。ダブってもいいから」って大滝さんに言われてた。「その代わり銀次の好きそうな64年以降は買っておくから」って、取り決めをしてあった。

ある時、水道橋で、ロネッツのコンパクト版の4曲入り、日本のみの編集のものを見つけて。ビー・マイ・ベイビー」とか、クリスマス頃だったから、「ママがサンタにキッスした」とかが入っていた。

それを持って帰って家で聴いてみたらすごく良かった。でも、ギリギリ64年なんで縄張り的には大滝さんのものなんですよね。

その日、僕がレコード買いに行ってるのを知ってた大滝さんが遊びに来た。こんなのがあったんですよって見せたら、すぐ財布を出して「いくらだった?」って、これは俺のだよな、みたいに言う。悪いけどこれは自分のものにしたいって言ったら、大滝さん怒ってね(笑)。縄張り的に言ったら俺のだろ?って。

そうしたら「分かった。ちょっと待ってろ」と家まで帰って、前から僕が欲しいって言ってたビリー・J・クレイマーとダコタスのアルバムを持って来てくれて、「これと交換しよう」って。

でね、僕もまたずるいのは、これはまだ買えるような気がしたんですよ。

スージー:あっはっはっは(笑)。

伊藤:探せばあるような気がしたから、「いや、やっぱりこれは持っていたいんで…」と拒んだら、大滝さんカンカンに怒って。そして、僕も破門になったんですよ。

スージー:いろんな人を破門してるんですね。

伊藤:しばらく大滝さん家に来なかったですよ。実はこれには後日談もあるんです。大滝さんはクレイジーキャッツのレコードをすべて集めていたんですよ。その中で大滝さんが持ってないのを見つけたから、「ありました」と送りましたよ。ロネッツのお返しに。

スージー:それはいい話ですね。

■ 大滝詠一の話は楽しい

「Re:spect」本編でもインタビューでも炸裂した“トーク版伊藤銀次節”。長いキャリアの中で蓄積された実体験に裏付けられたエピソードは、興趣が尽きない内容ものだった。

インタビュー後、スージー鈴木は「楽しいなあ、楽しいなあ。大滝詠一話はなんでこんなに楽しいんだろう」と声に出していた。

珠玉の演奏とともに、軽妙なトークを生で体験できる伊藤銀次のライブは、10月14日(日)「伊藤銀次のI Stand Alone 2018 in 東京」(会場:東京・西荻窪Live Spot Terra)、11月1日(木)「 Sony Music Direct Presents『otonanoライブ』」(出演:伊藤銀次、大貫妙子、カズン、楠瀬誠志郎 会場:関内ホール・大ホール)、12月24日(月)「伊藤銀次のWINTER WONDER MEETING 2018」(ゲスト:杉真理、桑田靖子 会場:東京・吉祥寺STAR PINE'S CAFE)と、予定されている。(ザテレビジョン)

https://news.walkerplus.com/article/164664/

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