アメリカ中間選挙の読み方


11月6日、米国で中間選挙が行われます。現在、政権に加えて、議会の上院と下院のいずれもが共和党によってコントロールされていますが、民主党が上院や下院で過半数の議席を獲得する可能性があります。

中間選挙の見通しと、その結果に対して金融市場はどう反応するかを考察します。

○下院の全議席と上院の3分の1が改選

米国で11月6日に中間選挙の投開票がある。中間選挙は、大統領選挙の中間年に行われ、任期2年の下院の全議席と、同6年の上院の3分の1の議席が改選される。

現在、下院435議席の内訳は、共和党235議席、民主党193議席、空席7となっており、共和党が過半数を握っている。上院100議席の内訳は、共和党51議席、民主党49議席(民主党寄りの独立系2人を含む)で、僅差ながらこちらも共和党が過半数を握っている。

つまり、共和党による政権と議会の一党支配が実現している。
○経験則では政権党が不利

中間選挙の経験則では、大統領が所属する政権党が議席を減らす傾向がみられる。1980年以降、9回の中間選挙において、政権党が下院で議席を増やしたのが2回、減らしたのが7回。

政権党が上院で議席を増やしたのが1回、減らしたのが6回だった(他2回は増減なし)。

今回も過去の経験則が当てはまりそうだ。最近のほぼ全ての世論調査で、民主党の支持率が共和党の支持率を上回っており、2ケタ近い差をつけているものもある。足もとの良好な景気や労働市場は、政権党である共和党の追い風になっていない。

中間選挙がトランプ大統領に対する信任投票の様相を呈しているからだ。トランプ大統領にはコアな支持層が存在する一方で、それ以外の有権者は共和党支持であっても大統領に愛想を尽かしているかもしれない。

その結果、下院では民主党が25以上議席を増やして過半数を取る可能性が高まっているようだ。一方、上院はどちらの党が過半数を取るかは予測が難しい。

改選35議席は、民主党25(独立系2を含む)、共和党8であり、守るべき議席が多い民主党が圧倒的に不利だ。それでも、民主党が現行に2議席を上乗せして過半数に達するシナリオは非現実的ではなくなっているようだ。

なお、上院の票決が50対50に分かれた場合、上院議長を兼ねる副大統領が最終投票権を持つため、共和党が主導権を握る。
○分断された政府

民主党が上院か下院、あるいは両院で過半数を確保すれば、政権と議会が別々の党によりコントロールされる状況が生まれる。そうした「分断された政府」の下では、政治が膠着して様々な政策は日の目を見ないかもしれない。

トランプ大統領が提唱する過激な政策は立法化が困難になる(ただし、関税など大統領権限で行えるものも多い)。

一方で、民主党主導で議会が政策を立法化しても、大統領が拒否権を発動すれば、議会がそれを覆すのは不可能に近い(上院と下院でそれぞれ3分の2以上の賛成が必要なため)。
○トランプ大統領はレームダック化するか

中間選挙で民主党が躍進し、その原因がトランプ大統領の不人気ぶりに求められる場合、トランプ大統領は政権運営スタイルを軌道修正できるだろうか。

1994年の中間選挙では、クリントン大統領の民主党が大幅に議席を減らした。93年に就任したクリントン大統領は、選挙公約以上のリベラル路線を追求、選挙で選ばれたわけでもないヒラリー夫人を公的保険改革の責任者に任命するなど、傲慢ぶりが目立ったからだ。

中間選挙の大敗を受けて、クリントン大統領は中道路線へと舵を切り直し、その後の政権運営が評価されたことで4年後に再選を果たした。

仮に、トランプ大統領が修正能力を欠くならば(その可能性は高そうだ)、一段と求心力を失い、就任後わずか2年足らずでレームダック化(任期途中で政治的影響力を失うこと)しかねない。

2020年の大統領選挙に向けてトランプ大統領の再選が難しいとの見方が強まれば、19年中にも共和党内から対抗馬が名乗り出る可能性もあるだろう。

なお、民主党が下院で過半数を獲得すれば、民主党だけで大統領弾劾の手続きを開始することが可能となる。ただし、弾劾裁判で有罪にするためには、上院で3分の2以上の票が必要であり、その可能性はほぼゼロだろう。
○金融市場はどう反応するか?

中間選挙で民主党が躍進するならば、金融市場はどう反応するだろうか。トランプ大統領の暴走にある程度の歯止めがかかるとの連想から、外交や通商の面で諸外国との関係が改善すると期待できそうだ。

ある程度政治が安定すれば、投資家はリスクオン(リスク選好)を強めるだろう。株式や債券、為替市場は、各国の景気や企業業績、金融政策といった経済ファンダメンタルズを反映し易い地合いとなりそうだ。

米国の経済政策の組み合わせ、いわゆるポリシーミックスの観点からは、トランプ減税に代表される景気刺激的な財政政策は見直され、そのため金融政策には緩和的なバイアスがかかりやすくなる。その面からは、株安かつ債券高(金利低下)要因であり、米ドル安要因となる可能性がある。

2017年1月のトランプ大統領就任以降の金融市場の動きは大まかに、株高、債券安(金利上昇)、米ドル安(ただし、対円では上昇)だった。したがって、トランプ政権がレームダック化して真逆の動きになるならば、株安、債券高(金利低下)、米ドル高(対円では下落)になるはずだ。

一方、中間選挙で共和党が意外に健闘して、議会の両院の主導権を維持したらどうなるか。「現状維持」ということになるが、中間選挙の結果に気を良くしたトランプ大統領がますます暴走するようなら、金融市場はかなり荒れやすい展開になるかもしれない。

もちろん、金融市場は米国の政治だけに反応するわけではない。むしろ、通常であれば政治は脇役だ。したがって、上記の見方はあくまで「頭の体操」とご理解いただきたい。

○執筆者プロフィール : 西田 明弘(にしだ あきひろ)

マネースクエア 市場調査部 チーフエコノミスト。1984年、日興リサーチセンターに入社。米ブルッキングス研究所客員研究員などを経て、三菱UFJモルガン・スタンレー証券入社。チーフエコノミスト、シニア債券ストラテジストとして活躍。
2012年、マネースクウェア・ジャパン(現マネースクエア)入社。現在、マネースクエアのWEBサイトで「市場調査部レポート」「スポットコメント」「今月の特集」など多数のレポートを配信する他、動画サイト「M2TV」でマーケットを解説。

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