80年代の化粧品広告で一世を風靡したアノ美女に会いにいく

Excite Bit コネタ

2018/10/3 12:00



80年代、化粧品メーカー「ノエビア」の広告で一世を風靡した鶴田一郎氏のイラストレーション。バブル期にメディアや街を彩ったスタイリッシュな女性像に、あー、この顔!と懐かしく思う人も多いのでは? 黒髪に切れ長な目元のクールビューティーは、ヴィヴィッドな色彩とともに、いまなお洗練された大人の女性への憧れをかきたててくれる。京都にこの鶴田式美女が一堂に会するギャラリーがあるらしい……ということで行ってきた。




西本願寺近くのビル2階にあり、参拝帰りにも寄りやすい立地。階段を登っていくと、鶴田氏の絵から抜け出したような女性(奥様)が対応してくださった。




ギャラリーに一歩足を踏み入れると、妖艶な美女たちが「ようこそ」とずらり。
奥様によれば、ギャラリーのオープンは2013年9月。鶴田氏は30年以上、東京でマスメディアなどを中心に活躍した後、10年ほど故郷の九州で活動していたが、還暦を迎えるにあたって「歴史と伝統のある街でもう一度、新たなチャレンジを」と一念発起。
着物のデザインを手がけたり、懇意にしているギャラリーがあったりと、昔から縁があった京都へ生活の拠点ごと移したのだそう。現在も商業イラストレーションの仕事は続けているが、メインの活動は作家、アーティストとしての個展となっているという。京都に拠点を移してからは、哲学の道近くにある「安楽寺」で個展をするなど、さまざまな出会いが生まれているそうだ。

鏡でデッサンの狂いや手の角度を確認しながら描く






ギャラリー奥にアトリエがあり、見学させていただいた。こちらがダンディーな鶴田氏。少女時代から憧れていた絵の作者に、実際にお会いしてお話ししているのが不思議な気がした。
作業台の正面に鏡があるのは、下絵を映して狂いがないかを確認したり、手を描くときに自分の手を映して参考にしたりするからだそうだ。画材はアクリル絵具を用い、まず下絵を描いてから、拡大コピーしたものをキャンバスに写していく。なめらかに仕上げるため地塗りを10回以上繰り返しているそうで、至近距離で見ても筆の跡をまったく残さない美しい画肌に感動!




来年、ニューヨークで個展を開催する予定で、そこで展示する大作や貴重な下絵も。アメリカでは家そのものが大きいので、大きい絵が好まれるのだそうだ。アメリカで一定の評価を得ることで、これまで支えてくれたファンに恩返しをしたい、という気持ちもあるそう。
国内でも、「初めてアート作品を自分で購入したのは鶴田さんの美人画でした」というコレクターも多いとか! 男性ファンにとっては、高嶺の花的な女性をうっとりと見つめる気持ちなのかもしれない。


バブル期に生まれた、凛とした強い女性像


こちらは、山口百恵さんのLPジャケット。おなじみの美人画とはまったく違うタッチでびっくり。こんな感じの作品も描いていらしたんですね! ほか、谷村新司さんのジャケットなども手がけたことがあるそうだ。
「昔から女性を描くのは好きだったのですが、若い頃はスーパーリアリズムなど、さまざまなスタイルを模索していました。80年代には写実的なタッチで、SF専門誌で近未来の風景を描いたりもしていましたね。ただ、“SFの鶴田”というふうに認知されると、似通った仕事しか来なくなってしまって。そんな折に、ノエビアの広告に大抜てきされたことが、一つの転機となりました」(鶴田氏、以下同)

当時は知る人ぞ知る無名の存在だった鶴田氏を起用したのは、1964年東京オリンピックのアートワーク(五輪に日の丸をあしらった力強いデザイン)などで知られる故・亀倉雄策氏だった。1988年から98年頃まではノエビアのTVCMが放映されたこともあり、まさに“時代の顔”として鶴田式美女は人々の記憶に強く刻まれることに。ちなみに、現在もノエビアとのおつきあいは続いており、カレンダーを毎年、手がけているそう。


どことなく東洋的な切れ長な瞳の女性が居並ぶなか、二重まぶたで比較的、大きな瞳の女性像に挑戦した作品もあった。
「ノエビアで描いた女性像は、これこそが“僕の顔”と思えたもの。当時はバブルで女性の時代ともいわれ、凛とした強い女性像が求められていたので、こういうスタイルが自然と生まれたんですね」
その後、時代とともに求められる女性像も少しずつ変わっていき、たとえば癒しといった新たな要素を取り入れながら、少しずつ進化しているそうだ。

仏画や琳派を自分なりに昇華した新境地へ




ギャラリーの中にあった中で印象的だったのが、金や緋を効果的に使った、仏画や琳派を思わせるテイストの作品。これまでの都会的で、どこかパリのアールデコを思わせる世界観とは一転した、ハスの花を手にした観音像のような作品もあり思わず目が釘付けになってしまった。
「女性の美しさ、というものを長年追求していると、最終的には自分のなかにある女神(ミューズ)のイメージに行き着くのではないかと思っています。人として、女性に寄り添ってもらいたいという気持ちが根底にあるんですね。そして、歴史や伝統をただ模倣するのではなく、彼らの作品にあるエッセンスを自分なりに昇華したい。花鳥風月と女性を組み合わせた屏風ですとか、ふすま絵など、おもしろいものができそうな気がします」




なお、ギャラリーに飾ってある作品は基本的に販売可能で、原画のほか、ジークレー版画なども。ポストカードやカレンダー、メモパッドといった気軽に買えるグッズもあるので、京都旅の記念に求めるのもおすすめ。
余談だが、2019年卓上カレンダーの表紙になっている「銀の月」(モンサンミッシェルのような古城を背景に、横たわる謎めいた女性が描かれた幻想的な作品)は、この日、観た中で個人的に最も心惹かれてしまった……。

とそんなわけで、一見無表情に見える奥に、秘めた情熱や意思、ドラマティックな物語を感じさせてくれた鶴田式美女。それにしても、絵を拝見してあらためて思ったのが、80年代にはずいぶん大人っぽい女性像が好まれていたのだなあ、ということ。思えば肩パッドの入ったスーツやボディコンシャスなど、バブル期の女性たちのファッションは、たしかに自信と強さを感じさせるものが多かった。実年齢以上に背伸びし、成熟を求めていたのではないだろうか。
この、イラストレーションにおける日本人の好みの変遷について、現代で人気のテイストまで含めて、一度じっくり考察してみたい……と思いつつ、鶴田一郎ギャラリーを後にした私でした。
(野崎 泉)

ICHIRO TSURUTA GALLERY
京都市下京区西側町483 
月~金(平日)のみ、午前11時~午後5時までオープン(土日、営業時間外の来場を希望される方は、電話かメールで予約を)
TEL:075-353-5355
E-Mail:info@tsuruta-bijinga.com

当記事はExcite Bit コネタの提供記事です。

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