SHOGUNの『ROTATION』は、70年代の邦楽シーンを支えた名うてのスタジオミュージシャンたちが作り上げた濃厚な作品

OKMusic

2018/10/3 18:00

『SHOGUN40 & 芳野藤丸45アニバーサリー』が9月30日(日)に東京・恵比寿ザ・ガーデンホールで行なわれた。これは文字通り、芳野藤丸がプロのギタリストとして活動を開始して45周年、そして氏のバンド、SHOGUNの結成40周年を記念して開催されたものだが、当方もこれをお祝して、今週はSHOGUNの名盤を紹介する。

西城秀樹が惚れたギタリスト、芳野藤丸

星野仙一、西部邁、高畑勲、衣笠祥雄、桂歌丸、浅利慶太、さくらももこ、樹木希林。今年は各界の大物の訃報が相次いだ。ひとつの時代が終わるというのはこういうことなのだなと、どうも平成の終焉と結び付けて考えてしまうところである。音楽界ではECDや森田童子はもちろんのこと、若きミュージシャン、パフォーマーの突然の死去も忘れ難い出来事だが、時代の節目が訪れた感覚が強いのは西城秀樹の逝去ではなかろうか。日本のソロ歌手として初めてスタジアムでワンマンコンサートを行なったのが秀樹で(1974年)、日本武道館公演を行なったのも秀樹(1975年)。ある世代のリスナーにとっては、音楽番組『ザ・ベストテン』で唯一の満点を獲得した「YOUNG MAN (Y.M.C.A.)」(1979年)も強烈な印象を残しているに違いない。

また、テレビにロックバンドが出ることなどほとんどなかった時代、ソロとして世に出た歌手として自らのバンドを率いたのも秀樹が最初と言ってよく、これは氏の偉大な功績と言える(沢田研二も萩原健一も井上堯之バンドと共にパフォーマンスしていたが、もともと両名ともにバンド、PYGのメンバーであり、そのスタイルは西城秀樹に影響を与えたのだろうが、経緯は異なると思う)。1974年から1979年にかけて西城秀樹が時代の寵児として邦楽シーンを席巻していた頃、テレビの歌番組やコンサートでバックバンドを務めたのが藤丸BAND、そのリーダーが芳野藤丸(Gu)である。

秀樹と芳野との出会いは1974年。日本武道館でのRod Stewart/Facesの初来日公演に遡る。そのオープニングアクトを務めていたのがジョー山中バンドで、そこでギターを弾いていた芳野を秀樹が見初めた。その後、街で偶然に芳野に出会った秀樹のほうから“あそこで弾いていたよね? 僕のバンドでやってくれませんか?”と声をかけたというから余程印象に残っていたのだろう。当初、芳野は“俺はロックしかやらない”と息巻いていたようなところもあったらしいが、秀樹とともにやるようになってからは振り付きでギターを弾くようにもなったというから、余程、彼らの息は合っていたようだ。秀樹がコンサートでカバーした洋楽ロックの中には芳野が勧めたものも少なくなかったという。

前置きが長くなった。その芳野藤丸が1978年に結成したバンドがOne Line Band、のちのSHOGUNである。そもそも名うてのスタジオミュージシャンであった芳野は秀樹との活動の他、さまざまな仕事を手掛けており、そんな中、スタジオでいつも顔を合わせる同じスタジオミュージシャンたちと自然な流れでバンドを組むことになったという。これによって西城秀樹の元からは離れることになったが、秀樹は快く送り出したそうだ。

■松田優作も認めた 名うてのミュージシャンたち

One Line Bandはアルバム『Yellow Magic』を発表後、音楽プロデューサーに見出されて、1979年にTVドラマ『俺たちは天使だ!』の音楽担当として抜擢される。これを機にバンド名をSHOGUNと変更。そのドラマ主題歌「男達のメロディー」が大ヒットを記録したことで、その半年後、今度は松田優作主演のTVドラマ『探偵物語』でも音楽を担当することになる。ともに日本テレビのドラマということで制作サイドからしてみれば、この流れもまた自然なことであったのだろう。その『探偵物語』の主題歌である「Bad City」「Lonely Man」を収録したアルバムが『ROTATION』である。SHOGUNを代表する作品と言えば本作になるだろう。

「Bad City」「Lonely Man」以外の収録曲も劇中で使用されたことから、『探偵物語』のサウンドトラック的な意味合いも持つ『ROTATION』だが、意外なことに、「Bad City」にしても「Lonely Man」にしても、ドラマをイメージして作られたものではないという。制作サイドから“こういうドラマがあるので都会的な曲を”というオーダーで作ったということだが(「男達のメロディー」を制作した際にプロデューサーから“もう1、2曲作ってみないか”と言われた楽曲という説もある)、「Lonely Man」の作曲者の芳野も、「BAD CITY」作曲者のケーシー・ランキン(Gu)も事前にドラマを観ることもなかったし、メンバーの中には松田優作の名前を知らない人もいたそうだから、もはや驚きである。

驚きではあるが、それも今考えれば…という話。その頃の芳野はスタジオミュージシャンとして数千もの曲に参加していたというから、それが当時アクションスターとして飛ぶ鳥を落とす勢いだった優作の作品だとしても、あまたある仕事のひとつとしてしか考えられなかったのは不思議でも何でもなかろう。それよりも、それを優作が自ら主演のドラマとして起用した事実のほうが今となっては興味深い。

優作が妥協を許さない俳優であったのは有名で、自身のアクションシーンにスタントマンを使わなかったとか、演出面では徹底して演出家へ食いついたとか、その手のエピソードは数多い。また、1970年代半ばに歌手としてもデビューしていたのだから、音楽への造詣が深かったことも間違いない。そんな優作が、少なくとも自身が主演するドラマの主題歌を適当に選ぶはずもなく、「Bad City」も「Lonely Man」も優作が気に入ってこその起用だったのだろう。仮に芳野にとってはあまたある曲のひとつだったとしても、優作にとっては唯一無二だったのではなかろうか。のちに人を介して優作とSHOGUNのメンバーは対面したそうだが、間に入った人が驚くほどに優作が低姿勢だったと芳野は述懐している。優作なりの敬意だったと邪推する。その後、芳野は優作のアルバムで曲を提供している。

■どこを切ってもカッコいい楽曲群

松田優作が認めたのも分かるほど…などと言うと、芳野、優作両名に対しておこがましい物言いだろうから、“すみません”と先に謝っておくが、M6「Bad City」、M9「Lonely Man」はもちろんのこと、『ROTATION』収録曲はどれもこれもクオリティーが高い。劇伴として使用されたのも納得の内容である。全編歌ものであるが、イントロも間奏もアウトロもまったく取って付けた感じがしないのだ。どの楽器もメロディアスに鳴りつつ、歌もしっかりしている。どこを切ってもキャッチー──そんな感じである。

M1「As Easy As You Make It」を例にとろう。キレのいいブラスが印象的なファンキーなナンバー。イントロはホーンセクションだけでも十分に軽快なのだが、下支えしているリズム隊、とりわけスラッピングベースが踊るようなポップなフレーズを聴かせる。ド頭から所謂オフヴォーカルではなく、楽器だけで成立するインスト曲のような印象だ。歌は全体を通してメロディアスで叙情性もあり、展開はドラマチックと言ってもいいほど。それをドゥーワップ的であったり、ユニゾンであったり、多彩なコーラスワークで抑揚を強調している。それでいて、そこにブラスが若干食い気味に絡むので、余計にグイグイくる感じ。間奏ではややセクシーなギタープレイが聴ける上に、アウトロではドゥーワップグループのアドリブっぽいテイクが聴けたりと、こうして書き出すと改めて随分と豪華なアレンジであることが分かる。もう一度書くが、M1「As Easy As You Make It」だけが特別ではなく、全編こんな感じなのである。

また、基本的にロックはロックなのだが、楽曲毎にさまざまな音楽要素を取り込んでいる。ソウル、ファンクはデフォルトくらいの勢いで注入されているが、他にもM4「Yesterday, Today And Tomorrow」はゴスペル、M6「Bad City(Album Version)」はブルース、M7「The Tourist」はジャズと、ブラックミュージックの取り込みには余念がないと感じるほとだ。それだけじゃない。イントロからガムラン風の音色が聴けるM3「Sailor-Sailor」はアジアンエスニックな雰囲気。それでいて、カントリー風なパートがあったり、サビはやはりソウルフルであったり、ポップで楽し気な感じは南国っぽくもあったり、とことん無国籍でファンタジックだ。M8「I Should Have Known Better」はストリングス入り。とは言っても、弦楽四重奏的であって、ちょっとサイケな感じだが、あまり重くない。その微妙なバランスがいい。その後、派手に展開していく様子は、パーカッシブなリズムも含めてプログレを感じさせるところ。Cメロ(大サビ)はメロディアスで、間奏のギターは疾走感あるし、これも実にカッコ良いナンバーである。

歌詞は全編英語(M7「The Tourist」に《sayonara》とあるが、《さよなら》でも《サヨナラ》でもないので、これは英語だろう)。これもSHOGUNの特徴であり、当時そこに惹かれたリスナーも少なくなかったのではないかと推測する。刹那的というか、投げやりというか、無頼な印象のある「男達のメロディー」のリリックも全体として悪くはないが、案外耳に残るのはBメロの英語部分ではなかろうか。個人的な話で恐縮だが、「Bad City」「Lonely Man」を聴いた時、英語をよくも知らない少年のくせして“やっぱ、こっちだよな”と思った記憶がある。これは間違いなく、SHOGUN登場の前年、1978年にゴダイゴが「ガンダーラ」「モンキー・マジック」をヒットさせていた影響であっただろう。

SHOGUNの歌詞が英語であったのは、そのほとんどを英語がネイティブのケーシー・ランキンが手掛けていたから…という、ごく当たり前の話なのだが、後年、芳野も[ゴダイゴなどの英語の歌がヒットしていたことを意識した]と語っていたそうである(M2「Imagination」のキーボードは明らかにプログレの影響だろうが、そんな芳野の話を聞くと余計にゴダイゴを連想してしまうのは筆者だけだろうか)。[アルバム『SHŌGUN』のライナーノーツでは日本人の中に英語や洋風のライフスタイルが定着していったことを意識した可能性が指摘されている]そうであるが、それもあながち間違った見解でもなかろう([]はWikipediaから引用)。

ただ、日本の音楽シーンでは1990年代半ばですら英語で歌うことの是非が語られていたので、それを遡ること10数年前に英語を操っていたSHOGUNの姿勢は今も堂々と映る。バンドはその後、いろいろあってわずか2年足らずで活動を停止。1997年に再結成するも長続きせず、2001年には芳野、大谷和夫(Key)、ミッチー長岡(Ba)の3人編成で活動再開するも、2008年に大谷が、2009年にはケーシーが死去し、オリジナルメンバーでの復活は不可能になった。しかしながら、秀樹、優作という昭和の大スターが認めた芳野藤丸、そして、氏が率いたバンド、SHOGUNの功績は、当時作られた傑作アルバムとともに邦楽シーンに克明に刻まれている。

TEXT:帆苅智之

アルバム『ROTATION』

1979年発表作品

\n<収録曲>
1.As Easy As You Make It
2.Imagination
3.Sailor-Sailor
4.Yesterday, Today And Tomorrow
5.Margarita
6.Bad City(Album Version)
7.The Tourist
8.I Should Have Known Better
9.Lonely Man(Album Version)

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