「新潮45」でLGBT攻撃して痴漢を擁護した小川榮太郎と、安倍首相の一体化した濃密すぎる関係

リテラ

2018/9/21 15:15


 19日の記事でお伝えしたが、自民党・杉田水脈衆院議員の“LGBTは生産性がない”発言を「新潮45」(新潮社)10月号で擁護した、自称文芸評論家・小川榮太郎氏の文章が大きな批判を浴びている。

小川氏は同性愛を〈性的嗜好〉だといって〈あからさまに語るのは、端的に言って迷惑〉と非難。〈サドとマゾとお尻フェチ(Ass fetish)と痴漢(groper)を指す〉とする小川氏の造語「SMAG」と同様として、〈LGBTも私のような伝統保守主義者から言わせれば充分ふざけた概念〉と罵倒したうえで、このように続けた。

〈満員電車に乗った時に女の匂いを嗅いだら手が自動的に動いてしまう、そういう痴漢症候群の男の困苦こそ極めて根深かろう。再犯を重ねるのはそれが制御不可能な脳由来の症状だという事を意味する。彼らの触る権利を社会は保証すべきではないのか。触られる女のショックを思えというのか。それならLGBT様が論壇の大通りを歩いている風景は私には死ぬほどショックだ、精神的苦痛の巨額の賠償金を払ってから口を利いてくれと言っておく。〉

ここまで醜悪かつ破綻した文章は、なかなかお目にかかれるものではない。その誤りについて詳しくは本サイトの記事(https://lite-ra.com/2018/09/post-4264.html)をご覧いただきたいところだが、この件で小川榮太郎という人物を初めて知ったという読者が、ひょっとしたらいる可能性もある。

だとしたら、本サイトとしては、この小川氏がもともといかなる人間であるかをあらためて紹介しておく必要があるだろう。なぜならば、このLGBTヘイトにヘイトを塗り重ねた悪辣な文章は、単なるネット右翼的な放言ではなく、安倍首相と“一体化”している存在が狙って世に送り出したものに他ならないからだ。

●「新潮45」で杉田水脈擁護・LGBT差別の小川榮太郎は、安倍晋三礼賛本でデビュー

小川氏は、2012年9月、安倍晋三と石破茂が争った同年の自民党総裁選の直前に、『約束の日 安倍晋三試論』(幻冬舎)という本でデビューした。その内容は、第一次安倍政権を振り返りながらひたすら安倍晋三の“功績”や”人柄”を讃えるというもので、ひらたくいえば“ヨイショ本”だ。同書は発売されるやいなやベストセラーとなり、安倍の首相再登板の原動力のひとつとなったとされる。

しかし、この『約束の日』は、無名の文筆家が安倍のことを好きすぎるあまり出版したというようなイノセントなものでは決してない。実は、同書は最初から安倍晋三を再び総理大臣にしようという運動のなかで産み落とされたものだった。

そもそも小川氏は、“安倍首相のブレーン”のひとりといわれる長谷川三千子・埼玉大学名誉教授の弟子にあたり、大学院修了後は塾講師などをして細々と生計を立てるかたわら、自民下野時には安倍再登板のための草の根運動をしていた。それが安倍首相の側近である下村博文・元文科相の目に留まり、評論家の三宅久之氏(故人)が中心となって始動していた「安倍晋三再生プロジェクト」なる秘密会に参加する。このことは小川氏が自著などで明かしているとおりだ。

この「安倍晋三再生プロジェクト」は、のちに「安倍晋三総理大臣を求める民間人有志の会」として発展し、小川氏はその事務局的役割を担うことになる。その過程で安倍に近い右派文化人たちが計画していたのが「ノンフィクション作家が、安倍さんが1年間やったことを書く」という本の出版だった(朝日新聞15年10月2日付朝刊)。

●小川榮太郎は『NEWS23』岸井成格攻撃を煽動、降板に追い込んだことも

しかし、当時の安倍は第一次政権の投げ出しで下野のきっかけをつくり、評判は地に堕ちていた。ルポルタージュを書いてくれる高名なノンフィクション作家などいるはずもない。そこで白羽の矢が立ったのがまったく無名の小川氏だった。そうして、小川氏が三宅氏の指導を受けながら書き上げたのが、例の『約束の日』だったというわけだ。

そして前述の通り、『約束の日』は2012年の自民党総裁選の直前、安倍応援団の一員である見城徹社長率いる幻冬舎から出版され、無名の書き手によるものとしては異例のベストセラーを記録するのだが、その背景にもやはり安倍陣営の仕掛けがあった。というのも、安倍氏の資金管理団体である「晋和会」が同書を総額700万円分以上も大量購入していたのだ。当時、一部の書店では売り切れになるなどし、そのことが全国的なPRにつながった。

つまり、小川氏は安倍晋三を首相にするための運動のなかでデビューし、さらに安倍側に書籍を買ってもらったという、あまりにもズブズブな「文芸評論家」なのだ。

こうして右派論壇に躍り出た小川氏は、その後も「WiLL」(ワック)などの極右雑誌で執筆活動を続けて安倍関連本を出版していくのだが、そのなかで2015年、小川氏が事務局長として組織したのが「放送法遵守を求める視聴者の会」なる団体だった。

「視聴者の会」は、表向きはテレビ報道をチェックするという名目の民間団体だが、その主たるメンバーは日本会議の関連人物や安倍首相を応援している極右文化人ばかり。実際、安倍政権の政策を批判した番組やキャスターをあげつらって、全国紙一面広告を打つなどのバッシングを展開し、当時『NEWS23』(TBS)で安保法制を舌鋒鋭く批判していた岸井成格氏(故人)の番組アンカー降板のきっかけをつくるなど、安倍首相にとっての“成果”をあげた。

ちなみに、昨年、加計学園問題で安倍政権が窮地に立たされたときも、同会は全国紙に一面意見広告を出稿。加戸守行・前愛媛県知事や原英史・国家戦略特区ワーキンググループ委員など、安倍首相を擁護する与党側参考人の発言をもっと取り上げろとクレームをつけていた。

●小川榮太郎の「モリカケは捏造」なるトンデモ擁護本を書き、自民党が大量購入

現在、小川氏は「視聴者の会」の事務局長から降りているが、かえって雑誌や書籍などでの安倍応援活動は勢いを増し、野党・政敵・リベラルメディア叩きの急先鋒となっている。

なかでもいろんな意味で注目を浴びたのが、昨年10月、極右雑誌「月刊Hanada」の飛鳥新社から出した『徹底検証「森友・加計事件」――朝日新聞による戦後最大級の報道犯罪』だろう。「徹底検証」などと銘打っているものの、内容は御察しのとおりで、森友問題や加計問題でスクープを連発していた朝日新聞を標的に〈「冤罪事件」を計画し、実行した「主犯」〉〈「安倍叩き」のみを目的として、疑惑を「創作」した〉と攻撃するものだが、記述の具体的な根拠はほとんどなく、小川氏の妄想的分析が書きなぐられているだけ。

たとえば例の「官邸の最高レベルが言っていること」と記された内部文書を朝日とNHKが連続してスクープしたことについて〈ある人物が朝日新聞とNHKの人間と一堂に会し、相談の結果、NHKが文書Aを夜のニュースで、朝日新聞が翌朝文書群Bを報道することを共謀したとみる他ない〉なる荒唐無稽な陰謀論を展開した。結果、朝日は同書の虚偽を指摘したうえで小川氏と版元に謝罪と訂正、損害賠償を求めたのだが、小川氏は拒否し、名誉毀損等で飛鳥新社とともに提訴されている。

しかし、問題なのは、その陰謀論をフル回転させて安倍政権を擁護する内容だけではない。同書が書店に並びはじめたのは昨年の10月16日ごろで、同月22日の衆院選投開票日の直前。選挙期間中には電車などで同書の中吊り広告が打たれ、選挙運動が禁止されている投開票日も少なくとも毎日新聞と日本経済新聞の朝刊に広告を出稿、「安倍総理は『白さも白し富士の白雪』だ!!」「“スクープ”はこうしてねつ造された」などの文言が躍った。

さらには、やっぱり安倍自民党が同書を大量購入し、所属議員や支部などに書面付きで送っていたことも判明している。これは「フライデー」(講談社)が報じたものだが、実際、本サイトも「月刊Hanada」の花田紀凱編集長に電話で直撃。花田編集長も「5000部に近い数字」を自民党が購入したことを認めた。

『約束の日』とまったく同じやり口だ。ようするに、小川榮太郎という自称文芸評論家は、最初から安倍晋三を支援する運動のなかで右派論壇に出てきて、安倍首相を礼賛し、安倍政権へ批判的なメディアに圧力をかけながら、スキャンダルを打ち消す世論をつくろうとし、ましてや安倍側から著書を購入してもらうという極めてベタベタな関係。安倍応援団のなかでも“御用のなかの御用”であり、安倍首相と“運命共同体”であると言っても過言ではないのである。

●小川榮太郎と杉田水脈のグロテスクな差別性こそ、安倍政権の本質

こうやって振り返ってみれば、もうおわかりだろう。今回、小川氏が「新潮45」に寄稿したトンデモな文章も、結局のところ、杉田議員の“LGBTは生産性がない”発言でダメージを受けた安倍政権を擁護する目的以外には考えられない。実際、小川氏自身がこの寄稿文のなかで〈LGBTという概念について私は詳細を知らないし、馬鹿らしくて詳細など知るつもりもないが、性の平等化を盾にとったポストマルクス主義の変種に違いあるまい〉などと書き散らしている。「ポストマルクス主義の変種」なる主張はともかく、読んでのとおり、ハナからLGBTをめぐる諸問題に関心などないのだ。

〈人権真理教の諸君に三度言っておく、あなたがたはそこまで「権力」が好きなのですか、少しは「人生」そのものの味わいに戻ったらいかがですか、と。〉

小川氏は例の文章をこう締めくくっているが、ひたすら安倍晋三という「権力」の走狗となることで生き永らえている自称文芸評論家に言われたくはない。

もっとも、小川氏だけの話ではないだろう。今回、「新潮45」の「特別企画 そんなにおかしいか『杉田水脈』論文」に原稿を寄せた面々のほとんどが、安倍応援団やネトウヨ文化人であり、そもそも、問題の発端である杉田水脈氏自身、安倍首相が「素晴らしい」と絶賛して先の衆院選で党公認を与えた極右政治家。17日の『NEWS23』でも「まだ若いですから、そういったことをしっかり注意しながら仕事していってもらいたい」と言って杉田議員を擁護した。

安倍首相は「多様性が尊重される社会をつくっていく、目指していくことは当然だ。これは政府・与党の方針でもある」などと釈明しているが、その言葉は空疎である。杉田氏や小川氏が「新潮45」で開陳したグロテスクさこそ、安倍政権の本質であることを忘れてはならない。
(編集部)

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