ジャニーズJr.・佐藤龍我の魅力を巧みに引き出した、『ゼロ』のオタク的パーフェクトさ


 加藤シゲアキ主演ドラマ『ゼロ 一攫千金ゲーム』(日本テレビ系)が9月15日に最終回を迎えた。

視聴率・評判ともに、正直、芳しいとはいえなかった同作品において、大きな収穫となったのは、天才的頭脳を持つ謎の中学生・標を演じたジャニーズJr.「東京B少年」の佐藤龍我の発掘だろう。

この役を決めるためのオーディションとなったドラマ『Jr.選抜! 標への道』(同)の時点では、経験値はもちろん、演技力で佐藤に勝るJr.が何人もいた。だが、いざ『ゼロ』が始まってみると、なぜ彼が選ばれたのかがよくわかった。

セリフはごくわずか。だが、数多いる出演者たちの中で、遠目に見ても明らかに浮き立つ異質な存在感がある。これは、経験値や演技力では補えないものだ。

1つには、冗談のようなスタイルの良さがある。ワイシャツをスラックスにインした姿を見ると、半分以上が足だ。その上には、コンパクトすぎる胴体と小さすぎる顔があり、その驚異的身体バランスのため、ただ立っているだけで群集の中で浮きまくっている。

真っ白な肌と、切れ長の冷たい目、瞬きの少なさ・無駄な動きのなさからくる落ち着きが「天才少年」感を漂わせる。しかも、このドラマ、どういうわけか佐藤龍我の魅力を引き出すこと1点にのみ、あざといほどの巧みさを発揮していたのだ。

まずは標が幾度も食べていたメロンパン。「体育座りでのモグモグ姿を、斜め後方から映す」なんて、いかにもあざといが、まんまとハマる人が続出。マスクを被せられた顔をアップにしたり、キレイな手をアップで見せるのも一興だった。

さらに、拘束され、水槽に沈められるという水攻め→頭上からのアングルで映し出すという、「オタクの需要わかってる」感。対戦チームを組むため指名した相手に、「一番バカそうだったから(選んだ)」と答えるドSぶりで視聴者を沸かせたかと思いきや、実は、信用できる大人だと思って指名したことが発覚するという、ほんわかエピソードまである。

その天才的頭脳に心酔した者を多数従え、年長者たちから「標様」と呼ばれながら歩く「帝王感」も痛快だった。ジャニーズのドラマデビューとしては、Hey!Say!JUMP・山田涼介の『探偵学園Q』(同)の天才中学生・天草流以来のオイシイ役だったのではないだろうか。

さらに、このクールな標役が気になった視聴者が佐藤の情報を調べたとして、出てくるのはYouTube「ジャニーズJr.チャンネル」で、東京B少年のメンバーたちと一緒にトランポリンをしたり、ゲームをしたり、罰ゲームをしたりしながら、終始笑顔でキャッキャとはしゃぐ無邪気な姿である。クールで笑顔を見せない天才中学生と、仲間たちから「赤ちゃん」呼ばわりされるニコニコぶりとのギャップ。ここまでの流れが実に巧妙に仕掛けられた罠のように思えてならない。

とはいえ、ドラマではラスト2話で退場したため、最終回は最後にちょっと出るだけだろうと高をくくっていたが、まさかの最後の最後、エンディングに最凶の罠が仕掛けられていた。

最後に登場したのは、「普通の中学生」としての標である。自室で眺めている模試の結果は、全科目1位。勉強机の前で、ジャージ姿でメロンパンをモグモグする傍らには、分厚い事典や全集などが整然と並べられた本棚が。しかも、足元を見ると、足が長すぎるためにジャージの丈がまったく足りていないのが、いかにも無防備だ。

そこから、お母さんと向き合っての夕食風景。お母さんが美人でもなくゴージャスでもなく、“普通のおかん”であること、冷蔵庫にメモが貼られているような、ごく普通の庶民家庭であることも、実に良い。しかも、「またご飯前に菓子パン食べたでしょ? あ、(青椒肉絲の)ピーマン、残さな~い! ねえ、勉強できてもさあ、そういうことちゃんとしなきゃダメじゃない、人として」「箸の持ち方~!」とお母さんに次々に注意され、「はい」と素直に返事をしつつ、やっぱりピーマンは食べていないというオチに至るまで、全てがパーフェクト。

ここまで見て、なぜ標パートだけがオタクを刺激する要素満載で、練りに練られた緻密さで構成されていたのか、あらためて不思議だ。ドラマ制作サイドにオタクがいたのか、それとも佐藤龍我プロジェクトが秘密裏に進行しているのか? 謎が解けるどころか、深まるばかりだ。
(田幸和歌子)

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