モー娘。舞台「ファラオの墓」歌唱指導・新良エツ子が推す革命を起こす可能性を秘めたメンバーとは?

ザテレビジョン

2018/9/14 11:00

ハロー!プロジェクト(ハロプロ)の多くの舞台で歌唱指導に携わる新良エツ子へのインタビュー後編。

【舞台歌唱指導・新良エツ子、モーニング娘。との出会いで知った“歌・ダンス+ルックス”を持つアイドルのポテンシャル より続く】

アイドルの舞台は色眼鏡で見られがちだが、彼女たちの芝居・歌唱に対する姿勢に妥協はない。舞台に立ったことを機に演技の道に進んだメンバーもおり、女優・真野恵里菜がハロプロ出身なのは広く知られているところだ。スマイレージ(現アンジュルム)の田村芽実もハロプロ卒業後、「minako-太陽になった歌姫」(2017年)で主演・本田美奈子. 役を掴み、演劇・歌劇への道を進んでいる。

インタビュー後編では、アイドルへのミュージカル歌唱指導の方針、特に印象深いメンバーの芝居・音楽へのセンスを聞くことができた。

■ 自分の鼓動を感じることを大切に

――ハロプロに限らず、新良さんはアイドルによるミュージカルに対して、どのような方針で歌唱指導をされていますか?

ポップスを教えるのとは違って、役に合った指導をするというところでしょうか。この役はそんな風には歌わないとか、芝居が上手く流れるようにするのが大事で、一番は役の個性を見てですね。歌と芝居で、彼女たちのアイドル性が役に生きるようにというのが私の方針です。

――役ではなく、その子の個性に合わせることはしないんですか?

個性というより、できないことはやらせないというのはあります。もちろん、できそうな子には教えますが、この子はこれ以上トップが出ないと思ったら歌割を変えて、場合によっては聴き苦しくならないように、メロディの調整をお願いすることもあります。

あとは、自分の鼓動を感じることを大切にさせています。BPM(Beats Per Minute)と言って曲の速度を表す単位があって、BPM200だったらすごく速くて、60だったら緩やかな曲調になります。BPMに合わせられるかどうかって、その子の生きているリズムだと思うんです。おっとりした子は速いBPMの時には遅れても、60の曲ではすごく綺麗に合わせられる。逆にいつもセカセカした子は遅い曲だと手持ち無沙汰で上手くできない、みたいな。

それを、私は心臓の鼓動だと表現して教えています。自分の脈拍や鼓動を曲のBPMに合わせなさいという教え方ですね。自分の生きているテンポを曲に合わせなさい、自分の鼓動までコントロールして歌えるようにしなさい、と。実際、そんなことはできませんけど、喉ではなく、心で意識することで全く変わってくるものなんです。

――ミュージカルのリズムは普段の歌と違いますから、新良さんにとっても指導の苦労は多いと思います。

三拍子が一番大変ですね。例えばハロプロの曲は全部と言っていいくらい8カウントなので、ミュージカルの三拍子に苦労するんですよ。今までだと「我らジャンヌ」(Berryz工房主演・2013年)が一番大変だったかな。みんな小さい頃からハロプロに入って、ずうっとつんく♂さんの16ビートを刻んできたわけじゃないですか。生まれて初めて取る三拍子、みたいな感じでした。

でも、他のアイドルたちもなぜか三拍子は苦手なんですよね。「花のワルツ」が三拍子なんですけど、聞くと「知らない」と言うんです。現代音楽のカリキュラムには三拍子がないのかなって思うくらいです。

そう言えば、「リリウム」(「LILIUM-リリウム 少女純潔歌劇-」モーニング娘。鞘師里保&スマイレージ和田彩花主演・2014年)に変わった拍子の曲があって大変でした。「或る庭師の物語」がそうで、改めて聴いてもらえれば分かると思うんですが、「これ、どうやって取るの?」というような、上手い人でも難しい曲だったんですよね。演出家の末満(健一)さんがそういう四拍子から三拍子、二拍子、五拍子みたいな変拍子の曲が好きなので。

でも、舞台を続けていくならそういう曲にぶつかることもあるだろうし、外の舞台に出ていった時、「何拍でも取れます」となっていると強いです。10代のうちにできるようになっておくのが理想です。

■ 演劇界を活性化させたアイドルはこれからが責任重大

――役者でもある新良さんから見て、アイドルの演劇や歌劇はどういうところに魅力があると思いますか?

意外性が一番ですね。本業の方たちは舞台をやるのが当たり前じゃないですか。でも、アイドルは活動の1つとして舞台に出ているわけです。普段のコンサートでは見られない意外性、キャラクターの顔があって、私はイベントっぽくも見ています。

でも、指導者としてそれをお遊戯会にしてはならないと思ってますし、アイドルの側も、ハロプロの子たちだけでなく、乃木坂46やAKBグループの子も、みんな真剣に取り組んでいます。何なら本業の人たちよりも良いスキルを持っている子もいますからね。教えていて、そういう子が出てくる意外性というのは面白いです。

――アイドルであることの武器はどこにあると思いますか?

それはもちろん、ダンスも歌もできて、プラス可愛いというところです。演劇の世界だってダンス、歌のスキルは絶対にほしいところなんですが、歌えない踊れないという役者は案外多いんですよね。ストレートな芝居に特化している人ほどそうなりがちで。私は小さい頃からダンス、バレエを学んできたせいもあって、どうして芝居だけで劇を作ろうと考えるのか、疑問に思うところがあるんです。人前に立つエンターテイナーとして色々なことができて当たり前だと思っています。

それを考えるとアイドルの子は日々色々なことを経験して、歌もダンスも大変な数を覚えて、練習量やバイタリティは本業の役者に負けないものです。だから、アイドルだからと彼女たちの劇が甘く見られている部分があるのは嫌ですね。最近は本業の人たちも認めていて、バカにするような人はそんなにいなくなったと思いますが、お客さんの方にまだそういう目が残っている気もします。「アイドルだから仕方がないね」「アイドルなのに頑張ってるね」って。

――2.5次元舞台が増え、アイドルが進出したことで、舞台作品の数は飛躍的に増えています。その功績は大きいと思います。

そこは間違いなく。アイドルは元々自分たちのファンを持っているので、そういう彼女たちが演劇に来てくれたことで、今まで興味がなかった人たちに劇の面白さを知ってもらえる機会を作れるようになったのは感謝しかないですね。

――責任重大でもありますよね。見に来てくれた方に、舞台は楽しいと思ってもらわないと。

だからこそ、歌唱指導の重みを実感するんです。歌えるようにできなかったらそれは私の責任で、「これでいいか」では済まないと思ってますし、その劇における音楽プロデューサーくらいの気持ちで臨んでいます。

この歌い方だとこの子が映えない、このメロディだとこの子が生かせないとか、歌を通して役者として立たせることを常に考えています。それが私の歌唱指導で、アイドルに対しての時はそれが特に強いですね。これってハロプロへの指導を通して私が学んだことでもあって、それを他の現場に持ち込んでいる部分もあるんです。こういう関わりを作っていただけたことに、とても感謝しています。

■ ミュージカルに推したいアイドルは?

――新良さんは田中れいなさん主演のミュージカル「悪ノ娘」(2017年)も歌唱指導されています。「ステーシーズ」から5年ぶりでしたが、歌の印象に変化はありましたか?

れいなちゃんは「ステーシーズ」の時にもう出来上がっていたので、良い意味で変わらないですね。私はLoVendoЯになってからもずっと見てきているので、その印象で言うなら声がとても強くなったのは間違いないです。オケの良い環境で歌ってきたモーニング娘。の時と違って、バンドは自分の声を楽器に負けないように張らないといけないですから。そこはミュージカルにプラスになっている部分だと思います。

あと、れいなちゃんと言ったら仮歌ですね。彼女はまず、私の仮歌を完コピしてから稽古に来るんですよ。なかなかいないくらい、すごく良い耳をしてます。音を捉えて、歌いこなす技術も高いです。

――教えることがない感じですか?

ポップスだったら後は自分で自分の色を付けていけばいいんですが、ミュージカルだとそこから調整はしていきます。私とれいなちゃんでは声質が違うし、芝居を付けて通した時、そこで綺麗に歌われても…というシーンもありますから。「1つブレスを入れようか」「そこは音を変えようか」とか。その場の調整にもすぐに対応できる能力があって、そういうところはれいなちゃんとまーちゃん(佐藤優樹)はそっくりだなと思います。音感に対するセンスですよね。れいなちゃんと同じで、まーちゃんも絶対にリズムと音程は狂わないし、小田(さくら)とはまた別の歌の上手さですね。

――田中さんは技術も含めてですが、佐藤さんは音への感覚が歌唱の高さに繋がっていると感じます。

まーちゃんは音楽に対する感性がとても高いんですよ。面白いのが、曲ができると絶対、曲への感想を言いにくることで。「まーはどういう声で歌ったら一番この曲に合うんですか?」とかも聞いてきます。芝居よりも音のことを考えているのが独特ですね。小田はどちらかというと役を考えて歌っていると思うし、石田(亜佑美)は絶対に芝居のことだけを考えていると思います。バラバラすぎて面白いですね、モーニング娘。は。

――田村芽実さんのように、今後、本格的にミュージカルを目指す子も出てくるかもしれません。今まで指導してきた中で、ミュージカルに進んでも遜色ないと思うアイドルはいますか?

ここもモーニング娘。になってしまいますが、小田ですね。小田は絶対に大丈夫だと思います。でも、期待値で言ったら石田になるんですよね。芝居も入れての総合力がとても高いので、もし石田がミュージカルに進んだら革命が起こりそうな気がします。「あの子、歌がものすごく上手いわけじゃないのに、何!?」って。スネフェルはハマり役だったというのもありますけど、それ以上に私は驚きましたからね。

これから伸びる子もいると思いますが、今、ミュージカルに進んで見劣りしないのはその2人ですね。

9月28日(金)からは東京・全労済ホール/スペース・ゼロにてJuice=Juice主演舞台、演劇女子部「タイムリピート~永遠に君を想う~」の上演が開始する。新良はこちらの歌唱指導にも就いている。Juice=Juiceはハロプロの中でも屈指の歌唱力を持つグループだけに、どのような舞台になるのか楽しみなところだ。

新良エツ子……歌手・作詞家・歌唱指導。多くの歌声の使い分けを得意とし、舞台、ミュージカル、映像、様々なジャンルで活躍。幼少期よりクラシックバレエ・ピアノ・声楽なども学び、芸術への造詣が深く、ミュージカルやアイドルへの指導に定評がある。ハロー!プロジェクトの他、乃木坂46版ミュージカル「美少女戦士セーラームーン」(作詞)、生駒里奈主演舞台「魔法先生ネギま!~おこちゃま先生は修行中~」(歌唱指導)など多くの作品に携わる。(ザテレビジョン・取材・文:鈴木康道)

https://news.walkerplus.com/article/161793/

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