大東駿介“セミフィクション”作品で考えた「言葉の力」<ひまわり対談・後編>

ザテレビジョン

2018/9/14 08:15

大東駿介が主演を務める映画「YOU達HAPPY 映画版 ひまわり」が、9月1日から全国で順次公開中。

「映画版 未来日記」(2000年)で話題を呼んだ杉本達監督がメガホンを取り、過疎化と向き合う栃木・那須烏山の人たちが“町おこし”や存続が危ぶまれている「山あげ祭」を守るために奔走するドキュメントに、俳優たちの演技によるフィクションを融合させた、新しい手法の“セミフィクション”作品となっている。

地元の高校生、佐藤佑香さん、青木由比さんが町の未来のために本気で取り組む姿を追い、この二人のひと夏の成長物語も作品の見どころの一つ。コミュニティFM運営のために東京からやってきた大学生・大海夏生を演じる大東が、ドキュメントと芝居のはざまで、作品のかじ取り役をしながら女子高校生2人をサポートしていく。

大東、倉野尾成美(AKB48・チーム8/チームK兼任)の二人へのインタビュー後編では、引き続き“セミフィクション”作品の撮影の向き合い方などを語ってもらった。

【前編から続く】

■ うそのない言葉とのバランス

――演じる役について意識したことはありますか?

大東:本を読んだ時点ではかなり意識して、作り込んでいくと彼女たちの素直な、うそのない正直な言葉と正直な目を前にすると、バランスが取れなくなっちゃうんですよね。僕たちの言葉がまるで届かなくなるんですよ。

紙に書いていることはうそっぱちではないんだけど、紙に書いてあることを自分が言うというのは、本の代弁者としてなので、“また聞き”みたいなことになってしまうんですけど、それと彼女たちの心から出た言葉というのは“同じ力”じゃないんですよね。

だから、僕は彼女たちには本当にその場で自分が思っている本当のことをなるべく言いたいなって思って、あまりせりふに縛られないように、でもこの本が何を伝えたいのかということ、この場面で何を伝えたくて、彼女たちのどういうことを引き出したいんだということだけを意識しました。

■ 大東駿介が大先輩に言った「台本通りにやらない」

――一方で、西岡徳馬さんと二人だけのシーンは空気が違いましたね。

大東:めちゃくちゃハードルが高かったですよ(笑)。

倉野尾:ふふふ(笑)。

大東:まず、西岡さんに「僕は、台本を渡されていない役者じゃない人たちと、お芝居か何かもわからないことをしています。コミュニケーションを取っています。だから、申し訳ないですが、僕は台本通りにやらないです」っていうことを説明しました。「何を言うかわからないので、構えないでください」と。大先輩に「何を言ってんねん!」って感じですよね。

実際に冒頭から(台本と)全然違うことを話し始めました(笑)。でも、そうしないと駄目なんですよね。そこだけ芝居みたいになっても恥ずかしいと思ったんですよ。役者だけのシーンが芝居染みているというのは、バランスが悪いなって思ったので。

まさに、さっきも言った彼女たちと話すには、自分の本当の気持ちが必要、町を知る必要があるってことと同じで、徳馬さんと話すには、その町の魅力を知っている自分だから話せる言葉を持っていくということにしました。

全てがうまく運んだ気がしましたね。(劇中で)徳馬さんに言ったことは、本当に自分の思ったことだし、自分の故郷でもない土地のことをこれだけ一生懸命考えるって、自分の中ですてきなことが起きているなっていう実感はありました。

――今作の企画をした前田さんから言われたことはありますか?

大東:特にはないんですけど、1年のほとんどを東京ではない地方で過ごしていると言っていて、前田さん自身、たぶん日本のいろんな面を見てきていると思うんですよ。悲しい現実もあるだろうし、リアルをどこまでかわからないですけど、いろいろ見てきている。そういうお話はしました。

前田さんのそういう思いを形にできることって、すごくすてきなことだと思うんですよ。映画というツールを使って、こういう日本があるんだよって示せる。それはとてもすてきな発想だなって思います。まだいろいろ構想をしているみたいです。

■ “考えるきっかけ”になれば

――見てもらいたい場面を教えてください。

大東:これは日本でたまたま見つけた数少ないものではないと思うんです。僕はこの作品で、この道端で歌舞伎をやるという、とんでもない祭り(山あげ祭)を初めて知って、ユネスコの無形文化遺産に登録されたのに僕は知らなくて、実際に中に入ってみたら、そのお祭りがなくなるかもわからへん。ユネスコへの登録は県は喜んでいるけど、やっている人たちからすれば実はきついという状況がある。

こういうことって日本中にあるんだなっていうことを知ることができただけでも、この映画を見る価値はあると思います。これがきっかけで那須烏山に興味を持ってもらえたら、もちろんうれしいですけど、日本中にどんな面白い文化があって、どんな面白い祭りがあって、どんな危機があるのかなっていうことへの、“考えるきっかけ”になったらいいなって思います。

また、例えば舞台あいさつなどで全国へ行った時など、地元の若者とご飯を食べに行ったりするんですよ。なるべくそういう機会を作るようにしています。若者はすごく力を持っていて、その力の出しどころに悩んでいる印象なんですね。それを若者同士が知ればもっと面白いのになって思います。

今年32歳で(若者と大人の)中間ぐらいにいるので、そういう若い力を大人たちに伝えられる役回りになれればなって考えていますし、自分自身ももっともっと生み出していければなって。そういうきっかけが映画なのもすごく幸せだし、そういう映画が増えていけばいいなって思いました。

――倉野尾さんは「高校生たちの姿がチーム8の活動と似たところがある」とコメントされていましたね。

倉野尾:実は映画ができあがる前に言ったコメントなんですけど、映画では(高校生たちが)具体的に動いている姿が映し出されているんですね。私たち(チーム8)は歌ったり踊ることを全国各地でやっているんですけど、それで元気をもらっているのかなとか考えます。

二人とも地元を盛り上げたいという気持ちはあるけど、何をしたらいいか分からない、地域のこともよく分からないみたいな状態で、それは私たちも一緒だなって思いました。地方を盛り上げていきたいと口にはするけど、どう動いていいか分からないという点ではすごく分かるので、具体的に何かを行動するという姿を見習いたいなって思いました。

■ 倉野尾成美が女子高校生から学んだこと

――では、最後に読者へメッセージをお願いします。

倉野尾:映画出演は初めてでしたが、普通に倉野尾成美として出ています。夢というか目標を語っているシーンがあって、ちょっと恥ずかしかったんですけど(笑)、私が帰った後の(高校生)二人の言葉を聞いていると、私の発言で力を与えることができたのかなって思えたし、私も二人から映画を通してすごく学ぶことがありました。今後の活動に生かしていけたらいいなって思います。皆さんも力をもらえる映画だと思うので、ぜひ見てほしいです。

大東:何がフィクションで何がノンフィクションか、とても曖昧な映画なんですけど、そこに登場してくる人物たちの思いというのは全部本当です。一番面白かったのは、主人公の彼女が始まりと終わりとでは全然表情が違うんですよね。本当に人間って、過ごした時間でこれだけ内側も外側も変わってしまうんだなぁと思いました。

これから何かしようとしているとか、沸々としている人が、何かを踏み出す力になるんじゃないかなと思うし、そういうきっかけになってくれたらいいと思う。改めて「自分の町には何もないよ」って思っているような人にこの映画を見てもらったら、「それを見つけられるのは自分なんじゃないか」ってことに気付いてもらえるんじゃないかなと思いますね。

意外と何にでも求めている人はいて、きっとこの町の人たちはまさか自分の町が映画になるとも、山あげ祭がこんなにもみんなに見てもらえるとは思っていなかった。日本中にそんなことはいっぱいあると思うので、これをきっかけに、日本中の面白い文化をみんなが知ることのできる環境になったらいいなと思います。(ザテレビジョン)

https://news.walkerplus.com/article/162085/

あなたにおすすめ