山田孝之とは何者か? 【てれびのスキマ】

ザテレビジョン

2018/9/14 07:00

■ 平成の深夜ドラマの概念を作り上げた一人

「わからない」ものに接したとき、人は拒絶しがちだ。理解できないものは怖い。不気味だ。だから、自分とは関係ないものとは見て見ぬふりをして、距離をとって遠ざける。

けれど、「わからない」もののほうが本来は刺激的で面白いのだ。その証明が山田孝之である。

山田孝之ほど、わけのわからない俳優は珍しい。

2003年、「WATER BOYS」(フジテレビ系)でドラマ初主演を果たしたころは、その後、「FIRE BOYS ~め組の大吾~」(2004年フジテレビ系)、「世界の中心で、愛をさけぶ」(2004年TBS系)、「H2~君といた日々」(2005年TBS系)と続いたように“爽やかイケメン俳優”枠だった。だが、2005年、映画「電車男」に主演し、オタク男性役を好演。さらに2007年には映画「クローズZERO」でワイルドなヤンキー役と役柄の幅を広げ、爽やかイケメンとは相反する濃い無精髭がトレードマークのようになっていった。その後もメジャー作品に出続ける一方で、単館系の映画などにも、主演・助演関係なく出演。特にテレビドラマでは、深夜ドラマに主戦場を移した。彼が最初に出演した深夜ドラマは「闇金ウシジマくん」シリーズ(2010年~2016年TBSほか)。無口で冷酷無比な闇金融の経営者を威圧感たっぷりに演じ、テレビドラマとしてはコンプライアンスギリギリな表現をしながらも、Season3まで放送。映画化もされた。そして2011年、いよいよ山田がテレ東の深夜ドラマに登場する。それが「ドラゴンクエスト」などのRPGをパロディにした「勇者ヨシヒコ」シリーズ(2011年~2016年)だ。こちらも今のところ3期まで放送されている人気シリーズ。山田は生真面目な「勇者」ヨシヒコ役。その生真面目さが突き抜けていて、空気が読めなず、抜けていて、周りを振り回す。飯塚健と組んだ「荒川アンダー ザ ブリッジ」(2011年TBS)では、顔が星型という「星」役! 同じ飯塚監督作品では「REPLAY & DESTROY」(2015年TBSほか)で主演。この作品では「企画」に名を連ね、キャスティングオーディションの審査にも参加するなど、裏方としても力を発揮した。

そして、多くの人を困惑させ、釘付けにさせたのが、松江哲明・山下敦弘と組んだドキュメンタリードラマだろう。2015年には、清野とおるの「東京都北区赤羽」「ウヒョッ! 東京都北区赤羽」を“原作”にした「山田孝之の東京都北区赤羽」、2017年には「山田孝之のカンヌ映画祭」(共にテレビ東京ほか)が放送。前者は清野の漫画に感銘を受けた山田が、実際に赤羽に“移住”し、そこで出会った人々との交流などを記録したもの、後者は、山田が“作り手”としてカンヌ映画祭の映画賞を獲るために奮闘する様を描いたもの。どこまでが本当で、どこからが作ったものなのか、まったくわからない、視聴者も何を見せられているのか、わけがわからない強烈な作品だった。

こうして振り返ると、山田は2010年代の「深夜ドラマ」という概念そのものをつくった一人であると言っても過言ではないだろう。単に色々な役になりきる「カメレオン俳優」とは違う。そこには「山田孝之」という不可解な存在感が必ず漂っている。

俳優は仕事柄、どうしても受け身になりがちだが、「仕事は選んでいるのか」と問われ「どう言っていいのか……めちゃくちゃ選んでますね(笑)」(「21世紀深夜ドラマ読本」)というように、極めて主体的。知名度という武器を最大限利用して、やりたいことを実現するということに自覚的だ。

最近では「女性300人のバスト計測」などというイベントをやったりもする。プライムタイムという早めの時間帯の連続ドラマにメインキャストとして久々に出演している「dele」(テレビ朝日系)も内面が見えづらくとらえどころのない役柄だ。何より、このドラマは山田&菅田将暉&麻生久美子というドラマファン垂涎の組み合わせはもとより、ゲスト陣が、作家の高橋源一郎や映画監督の塚本晋也、声優の大塚明夫、ミュージシャンのコムアイ、野田洋次郎、Mummy-D、般若……と異色の顔ぶれ。何が起こるかわからない“見たことのないドラマ”を作ろうという気概に溢れている。

山田孝之は、どんなことになるか「わからない」方向へ自ら飛び込んでいく。だからこそ、彼は「わからない」存在のまま、魅力的なのだ。

(文・てれびのスキマ)

◆てれびのスキマ=本名:戸部田誠(とべた・まこと) 1978年生まれ。テレビっ子。ライター。著書に『1989年のテレビっ子』『タモリ学』『笑福亭鶴瓶論』など多数。雑誌「週刊文春」「週刊SPA!」、WEBメディア「日刊サイゾー」「cakes」などでテレビに関する連載も多数。2017年より「月刊ザテレビジョン」にて、人気・話題の芸能人について考察する新連載「芸能百花」がスタート(ザテレビジョン)

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