「弱いリーダー」である僕が、いかにして「メンバーの強み」を引き出したのか|クラウドワークス田中 健士郎さん

「何かが足りない…。もっともっと頑張らないと」
「うまくいかないのは自分に欠点があるから?」
仕事をする上で、こうした息苦しさや辛さを感じたことは誰にでもあると思います。そんな時、どのように壁を乗り越えたらいいのでしょうか。この連載では「自分の弱みは、誰かの強み」をテーマに、自分らしく自然体で働く人の働き方ストーリーをリレー形式でお届けします。
今回は、株式会社ココナラ広報 古川芙美さんからのご紹介で、株式会社クラウドワークスで働く田中健士郎さんにお話をうかがいました。

田中 健士郎さん(たなか けんしろう)さん

上智大学卒業後、大手製造業会社で電子デバイスの海外営業を担当。2015年日本最大級のクラウド・ソーシングサービス「クラウドワークス」の経営企画/地方創生マネージャーとして、地域パートナーや自治体と連携してクラウドソーシングの普及促進・ワーカー育成に携わる。株式会社オムスビ(神奈川県逗子市)の「カタリスト」として、プロダクト・マネジメント構築や組織づくりにも取り組む。
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キャリアチェンジで気付いた「自分の弱み」

―新卒で製造業に入り海外営業を担当されていたそうですが。
ええ。入社してから、海外営業担当として多様なメンバーの力を最大限に発揮させる場を作る魅力を感じ、全力投球していました。米国担当当時、日米の2拠点生活でした。2カ月ごとに日米を行ったり来たり。そこでクライアントである世界的なIT企業を担当し、個人のライフスタイルを重視した働き方を目の当たりにしました。皆さん仕事はかなりハードにされている印象はある一方で、短パンにTシャツ、帽子をかぶって出社し、勤務時間もフレキシブル。夕方にちょっと自宅に帰って家族と夕食を取ったあと、また仕事をする―という人もたくさんいました。

そういう自由な働き方を見るにつけ、東京での働き方が窮屈に思えたのです。
個人のライフスタイルを大切にしているのか?という視点で見ると、日本は「まだまだだなぁ」という感じがありました。同時に「日本の働き方はこれからどんどん変わるんじゃないか?」と変化の可能性を感じたのです。

そのころから、「新しい働き方」を考えるようになりました。会社の休みに全国のコワーキングスペースを回り、自由に仕事をしている人たちの姿に触れ、「地方でも東京と同じように働ける」と確信しました。
考えてみると、シリコンバレーって意外と田舎にあるんですよね。

そこで思い切って自分のライフスタイルを変えてみました。神奈川県逗子市に移住したのです。逗子は都内まで電車で1時間ぐらいのギリギリ通勤圏内です。

 

―そして「働く」をキーワードに転職されたのですね。製造業からクラウドワークスへの転職は大きな転換ですね。

はい。「働く」をコア事業として「新しい働き方」に真摯に向き合っている会社だと思い、転職しました。

前職の海外営業は自分が得意とする仕事だったため、自分の弱みを明確に意識することがありませんでした。海外の最重要顧客担当に抜擢され、自分でも「結構できるな」と思っていて。
それが、クラウドワークスに転職して初めて「自分は全然足りていない」という体験をします。

会社の新規事業である地方創生のプロジェクトを、ゼロから立ち上げる場にポンと入り、すべてを一人でやらなければならない。今思うと、僕の働き方として「すべてを一人でやる」というのが自然体ではなかったのだと思いますけど…。この間いろいろなスキルを学び、同時に弱みを知ることができました。

前回の古川芙美さんも「資料作りが苦手」とおっしゃっていましたが、僕も近いところがあるんです。IT系社員が多い会社に製造業から転職した僕は、そもそもITスキルが厳しいところがありました。クライアントへの納品物をパワーポイントやエクセルで完ぺきに作って提出する際、クオリティが上がらなくて…。一時期は本を読んで学んだりもしました。でも「やっぱり好きじゃない」んですよね(苦笑)。

こうした自分の弱みを知ると同時に、自分の得意な分野、強みも明確になりました。
僕はチームで1を10にするのがすごく得意。完成したコンセプトを、TODOに落とし込み、どういうスケジュールで、誰にそれを振るのか。全体のプロジェクト・マネジメントが得意なんだと分かりました。
幸い、地方創生事業が拡大して部下が2~3人になり、同じチームの中に、僕よりもパワポを作るのが得意な人が現れたので、その人に任せています。これで僕がプロジェクト・マネジメントに特化することで、全体がうまくいくようになりました。

明確になった強みと弱み

―自分の強みを強く意識したきっかけは?

弱みと強みが分かってきた中で「自分の得意を活かして、さらに可能性を広げてみたい」と思っていた時、全国各地で場づくりに取り組む株式会社オムスビCEOの羽渕彰博(ハブチン)さんに出会い、副業としてオムスビに参加しました。羽渕さんも僕と同じに逗子市に移住し、起業や新規事業立ち上げを経験している人です。

ここで羽渕さんと一緒に「AM(アム)」というプロダクトを一緒に作りました。チャットグループによるオンラインキャリアカウンセリングサービスです。僕が最初の顧客になってやってみて、そこで強みと弱みが明確になりました。僕は「後ろから押し出すリーダーシップ」で、人に依頼するのが得意だということです。

具体的にいうと、プロジェクト・マネジメントや、営業ディスカッション、ファシリテーションが得意だということです。それまではその仕事に対して「まあまあ普通かな。むしろ、ほかの人よりもできないかも」と漠然と思っていたんです。それが、AMをやっていく中で、調整役とか、仕事を依頼する能力とか、仕事を依頼しても相手の気分を悪くさせずに気持ちよく仕事してもらうスキルが僕にあって、「そこはかなりすごいよ」と指摘してもらって自己認識しました。
自分が得意なことは無理なく自然にできてしまう。説明できないけどできちゃうから、「強み」なんでしょうね。

 

―「後ろから押し出すリーダー」というのはユニークですね。

学生時代を振り返ると、委員会とか部活とかではたいてい、部長や代表ではなくて副部長や副委員長ばっかり(笑)。全体のミッションや方向性を把握し、外れてしまいそうなメンバーの軌道修正をしたり、ミーティングを開いて方向性を確認したり、チームとして一つに作り上げていくプロジェクト・マネジメントが得意でした。
後ろから押し上げていくリーダーとして、なぜか無意識で自然にそういうポジショニングを取っていました。

 

―メンバーの「強み」を見ていくために心がけていることはありますか。

僕のプロジェクト・マネジメントでは、「1 on 1」という面談を実施しています。従来の面談は、上司と部下が緊張して向き合って、期末に「あなたの評価は〇〇です」とか「今期目標をクリアできました」というパターンが多かったと思います。

でも「1 on 1」では、「最近何か楽しいことあった?」とか、「家族に良い事あった?」とか、まずはプライベートから入って、日々メンバーの変化に気付きながら、目的意識を確認し合う場づくりをしています。

今は副業もできて、本業と副業の垣根がどんどんなくなってきている時代。その中で、上司やマネージャーとしてやるべきなのは、本業だけにフォーカスするのではなくて、その人全部を理解して、心理的に安全なスペースとして、気持ちよく働ける環境を作っていくこと。楽しかったことや、モヤモヤしていることの中から、要望を聞いて手助けできることをアドバイスします。みんな一人ひとり本当に賢いんで、そこだけケアすれば仕事はスムーズにできるんですよね。

普段からその人の「強み」の引き出しを見て、その「強み」から頼む仕事を判断します。そうするとピタッとはまりますし、依頼された方も「自分を理解してこの仕事を振ってくれている」と、信頼感と納得感を持って仕事をしてくれます。
そこには「やらされ感」が全くない。それが一番重要な気がしています。

 

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「後ろから押し出すリーダーシップ」が得意だと自覚した田中さん。後編では、メンバーの強みを引き出しながら、やらされ感なく「気持ち良く仕事を依頼する方法」を具体的におうかがいします。

インタビュー・文:野原 晄 撮影:平山 諭

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