人間の血の味を覚えたベンガルトラ 13人を襲い、地元住民は怯える日々(印)

インドで絶滅危機にあったベンガルトラが政府の保全政策が成功し、近年ではその数が増加している。絶滅寸前の野生動物が増える傾向にあることは喜ばしいことだが、人口増加に伴いトラの生息地が減少、ここ2年で13人がトラに襲われ命を奪われているという。『Mirror』などが伝えた。

インド西部マハーラーシュトラ州パンダーカワーダの住民らは、近年相次いで起こるベンガルトラによる襲撃に生活を脅かされている。

野生のベンガルトラは絶滅危機に瀕しており、2006年には1411頭のみが確認されていただけであった。しかし今ではおよそ2500頭、世界に生息する4000頭のトラの数の半数を上回るまでに増えており、これまでトラの保全政策に尽力してきたインド政府の試みが成功した証とも言える。ところがここ2年以上は、増えたトラに人間が襲われるという被害が相次いでいるのだ。

最初の犠牲者は高齢女性で、背中に大きな爪痕を残しうつ伏せ状態で綿畑に倒れていた。2人目は農民男性で、遺体は左脚1本が完全に食いちぎられていたという。さらに両脚を噛みちぎられ死亡した女性や、背中に噛みつかれて脊柱が露出した状態で亡くなった男性もいる。先月だけでも3人がトラに襲われ、そのうちの1人で12番目の犠牲者となった牛飼いの男性は、農村部の高速道路近くで遺体が発見された。

森林局の役人らは、トラの足跡やDNA検査、複数の目撃証言などからこれまで人を襲ったのは雌の5歳になるベンガルトラであることを明かした。このトラは生まれて間もない頃からリサーチをしているスタッフらに“T-1”と名付けられ、監視されてきた。T-1の母親は、人間が野生のブタから農作物を守るために張り巡らしてある電線により感電死したことも分かっている。インドの30%のトラがそうであるようにT-1は決して専用の保護区には棲まず、保護された森林地帯で過ごしている。そのT-1が人間を次々に襲っているという。専門家によると、1頭のトラが複数の人間をこのように襲うケースは珍しいようだが、その背景にはトラの生息地の減少が深く関わっていることが明らかになった。

増えたトラの数同様、インドでは人口も急速に増加している。パンダーカワーダのような農村地帯でさえ人口密度が上がり、人間が農地にと開拓を広げ続けるために森林地域が減少、増えたトラはテリトリーを求めて次第に人間の住むエリアへと姿を現し、生きるためにカモシカや野ブタ、牛や馬、そして時に人間を襲う。皮肉にもトラの数を増やすために保全政策に尽力した人間と、増えたトラの間でこのような悲劇が起こる傾向にあるというのだ。

人間だけでなく、複数の牛や馬といった動物も襲うT-1が現れるとされる公園脇の道路には、「この公園にはトラがいるので注意してください。主要道路や舗道以外のところに入らないように」という注意書きの立て看板まで設けられている。また、これまでにも地元住民らがT-1を捕獲しようと懐中電灯や竹杖などを持ち森を何度も捜索したが、発見には至らなかった。

数人の政治家からは、人間の血を覚えた人食いトラを生かさず、見つけた時点で射殺すべきだという声もあがり、今年1月に森林局関係者はT-1の射殺許可を政府に申請した。しかし「トラは子供を守っているだけ。犠牲になった者たちはトラの領域に侵入したからだ」とインドの最高裁判所にまで訴え出るムンバイの動物保護活動家もおり、T-1の射殺に反対する声も多々あることから現段階で射殺許可は出されていない。T-1は2頭の子供を産んでいることも判明しており、捕獲されれば幼い子供たちが危険に晒されることにもなる上、絶滅危機に瀕する野生動物を射殺することは法に反する可能性もある。そこで森林警備隊らは、未だ発見されていないT-1を探して森をパトロールするとともに、麻酔銃を持った専門家を乗せたゾウでトラを囲み、捕獲して動物園へ移すという作戦を試みようと準備している。しかしT-1が生息しているとされる地域の住民らは、犠牲者が増えるばかりでトラを仕留められない隊員らの無力さに呆れ、ジャングルへのアクセスをブロックするなど協力を拒否する者もいるという。

トラの餌食になった被害者家族らには、政府から上限14,000ドル(約156万円)の補償金が出るが、父親をT-1に殺されたという一家の娘は「生かしておいても何もいいことなどない。他に犠牲者が出る前に捕まえて殺してほしい」と話しており、捕獲がなされていない現時点では、パンダーカワーダ周辺の住民らは恐怖に慄く日々を送っている。

画像は『Mirror 2018年9月10日付「Hunt for ‘man-eating’ tiger blamed for deaths of 13 people after developing taste for human flesh」(Image: Oxford Scientific RM)』のスクリーンショット

(TechinsightJapan編集部 エリス鈴子)

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