30年ぶり上映「1999年の夏休み」に連日長蛇の列、なぜ注目浴びた?

Excite Bit コネタ

2018/9/12 13:41



間もなく終わる平成最後の夏。新宿で期間限定上映され、3階建て映画館の階段に連日長蛇の列ができていた作品があります。『1999年の夏休み』のデジタルリマスター版です。

ソフトを探すのが難しい状況にも関わらず、隠れた名作との呼び声が高い作品。なぜ今また注目されているのでしょうか?

初めてでもわかる!『1999年の夏休み』ってどんな映画?


『1999年の夏休み』はちょうど30年前の1988年に公開。萩尾望都さんの人気マンガ『トーマの心臓』を翻案し、自然が美しい全寮制学校を舞台に、夏休みに繰り広げられる4人の少年の愛と葛藤を描いた作品です。



主演の少年4人を演じたのは、これがデビュー作である深津絵里さんをはじめ全員が少女。加えて“少年っぽさ”を出すために、デビュー間もない人気声優の佐々木望さんや高山みなみさんらが声を当て、性別を超越した美しい世界が醸し出されます。



さらに見終えた人の感想はさまざま。「少年時代のはかなさ」や「終わらない夏の永遠」を感じる人もいれば、「今でいうBL的でも性的要素がない愛の世界」や「誰かを好きに思う純粋な気持ち」に魅力を感じる人もいます。

また「日本と感じさせないファンタジー感」「近未来的な小道具」「少女が演じるボーイッシュなファッション」「どの子に感情移入したか(ちなみに筆者は中野みゆきさん演じる直人)」「透明な世界観にマッチしたやさしい音楽」など、好きな点は多岐に渡ります。みなさん、とても熱く感想を語ってくれました。



30年の時を超えた再開。デジタルリマスター版の魅力
今回30年ぶりに作品が公開された経緯と、新たな魅力について、金子修介監督、キーパーソンとなる少年を演じた宮島依里さん、音楽を担当した中村由利子さんに話を聞きました。



まず30年の時を超えた大きなきっかけは、中村さんの音楽活動30周年のイベント。ここに金子監督、宮島さんが出演して、曲が使われた映画のシーンを流すことが発端となったそう。その後は権利問題のクリアなどが怒涛の勢いで進み、さまざまな人の協力が一気に集まり、今回の上映となりました。



ちなみに、映画で使われた中村さんの曲(アルバム『風の鏡』)は、元々は中村さんが少女だった頃の横浜の風景などをイメージしてつくったもの。金子監督が聞き「絶対これだ」と決めたそうです。その結果、映画の源流である少年たちの姿と見事な合致が生まれました。



そして30年経っても、中村さん・宮島さんにとって『1999年の夏休み』は原点ともいえる大事な作品。実際に30年間にわたり年代を問わずいろいろな人たちから「この映画のファンです」と言われるそうで、変わらない人気がうかがえます。特に宮島さんが2年間一緒に仕事したスタッフから、実はこの映画のファンでしたと言われた時は驚きだったとか。



もちろん、多くの作品を手掛ける金子監督にとっても、デビュー5年目で初めて自ら企画したという思い入れの深い作品。公開までにはさらに長い日数を要し、大変な労力を費やしたそう。そして、今回のデジタルリマスター版も、単なるデジタルへの処理・修正にとどまらず、フィルムの魅力も残しつつの作業となりました。その結果、まるで新作映画を作るようだったとのことです。

30年ぶりに見たファンの人からも、まるで上映当時がよみがえってくる不思議な体験をしたとの感想が。また、30年前に近未来を感じたのに今見ても古びておらず、より近未来感を感じるというの声もありました。

好きな人が集まって上映が広がった


そして、今回のデジタルリマスター版公開にあたっての裏話。実はスタッフの多くが、この映画が大好きというファンの人たち。SNSでつながり、各自の特技を生かし、本職がありながら睡眠時間を削って作業するスタッフもいました。

それでも関わったみなさんは、大変なのにどこかうれしそう。実際インタビュー終盤でも、スタッフの人が「実は当時宮島さんにファンレターを出して、いただいた返事を持ってます」と愛ある爆弾発言をする一幕も。



そして映画への愛は観客の人も同じ。口コミやSNSで今回の上映を知った人は、その感想をまた人へ伝えて、広まっていくという流れが生まれています。その多くは、公式SNSで見ることができます。
https://twitter.com/30th1999
https://www.facebook.com/30th1999/



今回のムーブメントについて、金子監督からもファンの愛の深さと力の大きさにとても感謝しているとの言葉がありました。そして、ファンや映画館から強い要請があれば、また作品を上映し、都合がつけば舞台挨拶に足を運ぶとのこと。ちなみに、この日の上映後トークショーへの宮島さん・中村さんの登壇は、まさに監督直々の依頼で実現したもの。ここにも熱い映画愛がありました。



また前日の上映後トークショーでは、同じく少年の1人を演じた大寶智子さんが登壇。イケメンの和彦役を演じた大寶さんですが、男の子に間違われることも多かったそうです。







『1999年の夏休み』は少女が少年を演じた演出や、独特の世界観が相まり、「どの映画にも似ていない、他にない映画」と言われています。見たことのある人でも、デジタルでの新たな再会が待っていることでしょう。

そして、見たことがない人! まずは一度見て、これほどまでに多くの人を惹き付けてる魅力をぜひご自身で確かめてほしい! もう戻ることができないと思っていた、輝いていた夏休み。ふたたび一緒に味わってみませんか?

(高柳優/イベニア)

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