麻雀・Mリーグ発足を素直に喜べない業界の本音

日刊SPA!

2018/9/12 15:49



身近なギャンブルの1つである麻雀。麻雀組織やプロ組織も数多く存在し、プロ雀士たちはCS放送を中心にメディアにも数多く出演。女流雀士はアイドル顔負けのルックスで人気を博している。そんな麻雀界に大きな動きが起きている。7月17日にサイバーエージェントの藤田晋社長がプロ麻雀リーグ「Mリーグ」の発足を発表。今年10月から来年3月にかけて1チームあたり80試合をおこない、優勝賞金は5000万円という一大プロジェクトが動き始めている。最高顧問にはJリーグのチェアマンなどで活躍した川淵三郎氏が就任。麻雀の普及と健全化を目指しているのだが、一方、業界内部にはこの状況を素直に喜べない方々もいるようだ。ぱちんこジャーナリスト・POKKA吉田氏とカジノ研究家の木曽崇氏がギャンブルをキーワードに言いたい放題しゃべりまくり、斬りまくる『POKKA吉田氏&木曽崇のギャンブル放談』では、そんな麻雀界、Mリーグの舞台裏をギャンブル界のご意見番に語ってもらった。

◆Mリーグ発足とプロ雀士たちの本音

木曽崇:1つのチームに3人の選手が所属していますから、1人の選手が戦う試合数はもっと少なくなりますよね。麻雀は偶然性に左右される部分もあるので、本当に強い人が浮かんでくる形にするには試合数を増やすべきという議論もありますが、問題はAbemaTVの放送枠との関係ですね。

POKKA吉田:AbemaTVは、全試合放送をやらない可能性もあるってこと? やるやろそりゃ(笑)。

木曽崇:「麻雀チャンネル」で全試合放送をやるのが前提だからこそ、試合数を絞らないといけないんですよ。試合数が多すぎると放送枠確保の面で問題があり、これをどうしようかという論議がずっとある。だから今回は80試合でやりますっていうのは、とりあえず試験的にやってみて、ていう話なんです。今後いろいろマイナーチェンジをしていくつもりなんでしょう。

──注目選手としては、俳優の萩原聖人さん。Mリーグの各チームが欲しい選手を指名するドラフト会議で、電通チームに指名されましたね。

POKKA吉田:8月7日のドラフト会議で指名されるように、萩原聖人さんはわざわざプロ団体に入ってプロ雀士になったのよね。

木曽崇:既存のプロ雀士からすると、面白くないんですよ。だって7月21日にプロ団体に入ったばっかの萩原聖人には、プロ雀士としての実績は何もない。なのにそんな人がドラフト1位で選ばれちゃうと、いったいなにがプロか? プロは競技として戦うものなのに、それが人気投票で選ばれるのか……という話になるわけですよ。

POKKA吉田:二階堂姉妹、かわいいやん! 俺は今回のドラフトで指名された妹派やけど(笑)。人気がある選手を出さなアカンでしょ。萩原聖人さんだって、あの21人の選手の中で一番カネになるのは彼ですから、そりゃあ電通がドラフト1位で持っていくのも当然ですよ。

木曽崇:ドラフトの指名がどうなるかは、事前にプロ雀士の方々のなかでもいろんな論議がありました。萩原さんだけでなく女流雀士も含めて、SHOWとして演出するための人がたくさん選ばれるだろうと予想する人がいる一方で、いやいやMリーグは藤田さんが麻雀愛で仕切っているから、実力を見て選ぶんじゃないかと見る人もいて、二分されていました。

POKKA吉田:フタを開けてみると、それぞれのチームごとにカラーがすごい出てた。電通なんて、もう完全にタレントを固めたグループでしょ。

木曽崇:一方で、U-NEXTの選手の顔ぶれを見ると、完全に実力先行で選んでますよね。だからMリーグの各チームの指名状況は、人気本位と実力本位で完全に二分される形になっています。これから実際にMリーグが開幕したとき、実力派を揃えたU-NEXTなどが本当に独走するのかどうかが見ものですよ。

◆Mリーグが麻雀界に及ぼす意外な影響と雀荘経営者たちの思惑

POKKA吉田:いろいろな面で、オレはMリーグの動向に注目してるけど、これが麻雀界に及ぼす影響も気になるよ。Mリーグ最高顧問に就任した川淵三郎さんは、「Mリーグと選手は賭博行為といっさい関わらない」と明言してます。そうすると、いわゆる一般的な風俗第4号営業の雀荘は今後どうなるんやろ。

木曽崇:実は雀荘側は相当悲鳴を上げていて危機感を持っています。ただ麻雀の健全化に向けたシフトというのは僕は正しいと思うし、賭けない麻雀を推進するグループは徐々に増えてきてるんですよ。雀荘を見ても、ノーレートや健康麻雀の店と、そうじゃない店という図式が出来上がっていますし。

──そういえば、昔ながらの無頼派麻雀の体現者でもあった小島武夫先生が亡くなったのが、今年5月28日でした。麻雀界の動向と、タイミング的に偶然とは思えませんね。

木曽崇:いやいや、亡くなったのはたまたまでしょ(笑)。だけど、なんかこう時代が変わっていくターニングポイントという感じはしますよね。

POKKA吉田:小島武夫が阿佐田哲也や古川凱章と結成した麻雀新選組、あれってギャンブルの歴史の中ではアカン人たちやんか! ヤクザの代打ちとかしてるわけやろ(笑)。小島さんの打ち方って面白くて、テレビとか出ててもすげぇ楽しかったけど、ああいうのを、実際の、すげぇカネが動く現場でもやってはったわけよね、たぶん。

──すごいですよね。ジュンチャン三色を狙って出来合いの面子を落としていきますから(笑)。

POKKA吉田:そういうの、シビれるやん! 阿佐田哲也の『麻雀放浪記』も雀鬼の桜井章一さんとかも、アカン世界やけど切った張ったで楽しいわけじゃん。カネに命をかけてる。麻雀というコンテンツのそういうところに魅力を感じてる人たちにとっては、やっぱ健全化の動きには反発したくなるだろうね。ギャンブルを肯定するという意味じゃなくて、だから麻雀は面白いねん、っていうレベルの話。

木曽崇:でも麻雀界の改革者として、藤田晋さんというのは高く評価されるべきだと思いますよ。僕は雀荘経営者の団体「全雀連」なんかともお付き合いがあるんですけど、幹部連中が平均年齢70歳オーバーとかでもう老い先短いので、あと10年先まで業界がもてばいいという考え方しかしないんです。今のまま、あと10年もってくれれば自分は死ぬ、みたいなスタンスで業界の基本的な方向性を定めようとしがちなんですね。だから麻雀業界もこのまま死んでいくしかないんだろうなって個人的には思ってたんですが、そこに彗星のごとく現れたのが、サイバー藤田。

POKKA吉田:彗星だよな~本当に。

木曽崇:あの人、1人のせいで、えらいことになってるから(笑)。

──先ほどPOKKAさんが、シビれる時代の雀士として名前を挙げた桜井章一さんって、藤田さんの師匠ですよね?

木曽崇:僕もそう聞いてます。桜井章一さんが主宰している雀鬼会の麻雀道場『牌の音』に通っていたらしいです。

──雀鬼会は、打ち方のルールがすごく激しいそうで、背筋を伸ばして! 発声を強く! とか。リーチまでドラを切っちゃいけない、とかいろいろあるみたいですね。

POKKA吉田:桜井章一さんが阿佐田哲也と麻雀を打ったときのエピソードが、いいんですよ。桜井さんはやっと心の師匠に出会えたと思いながらずっと卓を囲んでるんだけど、ふいに阿佐田哲也から「桜井さん、なかなかフリコミませんね」って言われたらしい。そこで桜井さんはすっげぇ自問自答して、気づくわけよ。「俺はまだまだやった! 全然ふりこまないで勝つだけが美学じゃねぇんだ!」って。ホンマかよくわからんエピソードやけど、麻雀はコミュニケーションなんだと。こういうところは賛成ですよ。勝負ごとに生きざまを投影するっていうのは、俺は嫌いじゃないし、その思想に心酔する人が塾生門下になってそれを体現するのも悪いことではないと思う。だから藤田さんの麻雀愛は本気にしか見えない。だって、AbemaTVって儲かってるように見えないんだもん(笑)。

木曽崇:そうです、あれは本気です。AbemaTVは儲かってないどころか、大赤字ですよ(笑)。

【POKKA吉田】

ぱちんこジャーナリスト。パチンコ業界紙『シークエンス』の発行人・編集長。近著に『パチンコが本当になくなる日』(扶桑社)などがある。メーカーが主催するセミナーで講師も務めている。 Twitter @POKKAYOSHIDA

【木曽崇】

国際カジノ研究所所長。日本では数少ないカジノ産業の専門研究者。近著は『「夜遊び」の経済学 世界が注目する「ナイトタイムエコノミー」』(’17年、光文社新書) Twitter @takashikiso

<構成/勝SPA!取材班>

【勝SPA!取材班】

SPA!が運営する日刊SPA!内のギャンブル情報サイト「勝SPA!(かちすぱ)」の取材班。Twitter(@kspa_official)

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