『逃げ恥』に見る平成ドラマの特徴。昭和と大きく違う恋愛観

日刊SPA!

2018/9/12 08:30



今上天皇の退位で、来年には幕を下ろす予定の平成。そんな平成とはいったいどんな時代だったのだろうか……と振り返りたいところだが、最近はなぜか「昭和かよ!」と言いたくなるような騒動や事件が続出している。そこで、さまざまな分野の昭和・平成の状況を比較。それぞれの時代の良しあしを確認して勝敗をつけながら、新時代に何を残すべきかを考えていく。

◆“恋愛強者”な昭和の群像劇vs“恋愛弱者”が登場する平成ドラマ

“W浅野”と聞いて、ひたすらなつかしく感じる向きは多いだろう。’88年に放映され、4回のスペシャル版も制作された恋愛ドラマ『抱きしめたい』(フジテレビ系)。スタイリスト役の浅野温子と友人で専業主婦役の浅野ゆう子は、職業は違えど都内の高級マンションに住み、生活も豪奢。その華やかさはバブル経済真っ只中の日本と被り、“W浅野”なる言葉は、ドラマとともに圧倒的な支持を得る。

「当時、貧乏学生だった私は、どうしたら独身女性が家賃25万の部屋に? と驚きましたが(笑)。それでも友達も含め、夢中で観ていました。自分たちもいつか、あんなふうになれるんじゃないか。そう思わせる時代の空気があったんです」

早稲田大学文学学術院教授の岡室美奈子氏は、当時を振り返る。「トレンディドラマ」は会話が生き生きしていて、恋愛劇としてリアリティがあったからこそ、視聴者に支持されたともつけ加える。『抱きしめたい』の放映から30年。今ドラマは刑事・医療モノが目立つ。

「バブル崩壊や9.11、東日本大震災など、平成は禍々しい事件に溢れました。自分の生死すら心配になる時代。身近なメディアであるテレビに触れるほど、そんなふうに痛感するのかもしれません」

加えてSNSの普及は、なんとなく孤独に向き合わずに済む人たちを生んだ。「今は恋愛ドラマには厳しい時代」と岡室氏は分析する。

「でも大学で学生に教えていると、今の若者も、気持ちの奥底では恋はしたいと考えていると感じます。ただ『ニコニコ動画』に代表される、“ツッコミ文化”があるので、声を大にして、言いにくいのです」

そんななか支持されるのが、『逃げるは恥だが役に立つ』のような、恋愛が苦手な主人公のドラマだ。

「契約結婚という非日常な設定も、リアルと向き合うのが苦手な若者にはいい。一種の結婚ハウツーものとしても見られる。その上、二人のやりとりに恋愛の機微があるから、見続けてしまうのです」

非日常を通して、日常を描く発想と制作者の創意工夫に脱帽だ。

<判定>

SNSが普及した平成はドラマ受難の時代。それでも創意工夫でヒットを生む、平成の制作陣に軍配!

【早稲田大学文学学術院教授・岡室美奈子】

早稲田大学演劇博物館館長も務める。専門は、テレビドラマ、現代演劇など。ドラマ批評家として活躍し、コンフィデンスアワード・ドラマ賞などの審査員も務めている

― [昭和 VS 平成]十番勝負 ―

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