テレ東「オードリー春日2時間SP」にほっこり! テレビ界では稀有な春日の”特性”とは?

日刊サイゾー

2018/9/11 21:00


 独創的でアイデア勝負の局、テレビ東京はそんな評価を確固たるものとしている。同時に、同局のバラエティを見ていると『ローカル路線バス乗り継ぎの旅』と『家、ついて行ってイイですか?』の2つのフォーマットに、大ざっぱに分けられることにも気づく。この2番組のどちらかにアレンジを加え、新たな形式のバラエティを生み出す。これぞ、“テレ東印”というべきか。

■雲の上でヘリの扉を勢いよく全開にする春日


 9月9日に、『空から村人発見!パシれ!秘境ヘリコプター~東京・埼玉・山梨の秘境SP』(テレビ東京系)と題した2時間特番が放送された。オードリーの春日俊彰がヘリコプターで秘境を訪問。山奥に暮らす人たちを対象に、普段は交通が不便でできないけれど瞬間移動できるならやってみたいことを募り、かなえてあげるという内容である。

上空から集落を見下ろす春日。絶対怖いはずなのに「(ヘリの存在に)気づいてない可能性ある」と、いきなり扉を全開、真下に向かって身を乗り出し、トラメガで「トゥース!」と呼びかける不動心はいかにも春日だ。

「ヘリに乗って、春日にパシらせたいことございませんか~!」(春日)

上空の春日に向かい、地上から秘境の人たちが手を振っている。

例えば、ある老夫婦には「生まれ育った集落を空から眺めたい」という夢があった。何しろ、空から我が家を見たいあまり、夫婦は1枚2万円以上する航空写真を4枚も購入していたほど。

2人の夢をかなえるべく、春日は夫婦をヘリに招待した。そして、老夫婦は上空から我が家や地元を見下ろした。奥さんは涙を流すほど感動しており、一方で隣に座る春日は「息子さんが手を振ってますよ」「(上空を)回りますから」と献身的にサポート。もはや、完全にガイドである。

同番組の高橋弘樹プロデューサーは「withnews」の取材(9月9日、以下同)で、春日についての印象をこう述べた。

「僕が春日さんに感じた魅力は、熱量が実はあるのに、それをアピールしないことです」

「過酷なロケにチャレンジする時、その大変さを、テレビっぽく過剰にアピールしない。そんな人は、目立ちたがりのテレビ業界ではあんまりいないから、新鮮で魅力的で。リアルなものを求めている今の視聴者に、伝わるんじゃないかなという気がしてお願いしました」

確かに、春日には熱量がある。危険を伴う上空で、なんの前触れもなしにヘリの扉を全開する破天荒さ。なのに、秘境の人たちをヘリに乗せると途端に減る口数。なるほど、春日は過剰じゃなかった。これは奥ゆかしさゆえなのか、ただのナチュラルなのか。

■テレビ界で渡哲也と春日だけが実現した快挙


 実はこの番組、ロケだけでなく総合司会も春日が担当している。すべてのロケが春日によるもので、総合司会も春日。まさに“春日2時間スペシャル”だ。この重責を仰せつかった春日は、テレ東の決断を評価した。以下は、「withnews」での春日の弁だ。

「ここ何年か、ずっと見てたんですよね。5年ぐらい。どこの局が春日にメインMCをやらせるのかなって。1(NHK)なのか2(Eテレ)なのか4(日テレ)なのか……テレ玉(テレビ埼玉)やMX(TOKYO MX)なのか。どこが名乗りを上げるのか、見てたんですよ。そうしたら、やっぱり7(テレ東)だったんですよね」

V振りをするのは、もちろん春日。VTRを見終わった後に「いかがでしたか、若林君」と相方に感想を聞くのも春日。この大胆な起用は、テレ東局内からの警戒を招いていた。

番組が動き出してから、春日さんがテレ東の人たちとゴルフに行ったらしいんです。その時、『今度テレ東で、春日にゴールデンの2時間を任せていただけるということで……』と挨拶したらしいんですよ。そうしたら急に、テレ東の上層部が『え? なんだこの番組』みたいになって。「色々ヤバいんじゃないか」と僕のところに内容を聞きに来たぐらいです(笑)『春日さんとヘリだけで2時間何をするんだ』って(笑)」(高橋P)

この番組が費やした予算の大半は、ガソリン代(春日のギャラの8~10倍)だという。まさに、春日とヘリだけ。ヘリからトラメガで怒鳴る春日が延々2時間続くのだ。

「そういうことができたのは、今まで渡哲也さんぐらい。並んだと言ったら変ですけど、春日か大門(渡がテレビ朝日『西部警察』で演じた大門圭介のこと)かみたいな話じゃないですか。向こうは銃・ライフル、こっちは平和的なトラメガ。持っているものは違いますけど」(春日)

■春日起用に至る経緯も、春日のたたずまいも上品


 冒頭で、テレ東のバラエティは大ざっぱに2つのフォーマットに分けられる、と書いたが、この番組は『家、ついて行ってイイですか?』の方。一般人についていき、人々の人生を垣間見る方向性だ。

加えて、こんな要素もあるらしい。

「一言で言えば、『タケコプター』があったらいいな、をそのまま実現しました」(高橋P)

タケコプターとは、言い得て妙。檜原村に住む少年は、宮大工になるべく茨城で修業中の兄に会いたいと春日をパシらせた。直線距離は137キロメートルで、公共交通機関で5時間かかる茨城への道なのに、ヘリだとたった38分! 自宅から持参したピザが、茨城に到着した時はまだ温かいというミラクルである。

兄との再会を喜ぶ弟。照れ混じりの兄弟の間に漂う空気に、なんともいえない表情を見せる春日。とても、芸人のそれではない。相方の若林正恭も指摘せずにいられなかった。

「お前の、(弟が)宮大工のお兄ちゃんに会ってる時の顔(笑)。大和田獏さんとかのランクまで行ってる」

大和田獏という例えが、過剰ではない春日の性分を的確に表現しているではないか。

そのほかでも、春日は大活躍だ。ドラマ『コード・ブルー』(フジテレビ系)にハマったものの、都会が遠すぎて映画館へ行ったことのない7歳の女の子を、映画版『コード・ブルー』を見に行かせてあげる。山梨の奥地にある自宅庭から25年間ずっと横浜のランドマークタワーを望み続けた男性を、タワーへ連れて行ってあげる。結果、女の子はドクターヘリの医師になる憧れを強め、男性はランドマークタワーから自宅が望めるのかを人生で初めて確認した。あくまで、主役は一般人。春日はパシリ役なので徹頭徹尾に控えめだ。確かにこんな芸人は、目立ちたがりのテレビ業界では稀有である。だからこそ、企画意図がブレていない。

「旬がどうだとかは考えず、『春日さんで2時間やってみたい!』と。実際のロケでも、春日さんと一般の方の距離感がとてもよかったです」(高橋P)

芸能人の旬を意識せずに、ロケも総合司会も春日に丸投げした今回の特番。「春日で2時間やってみたい」とあくまで欲求に忠実なところは、しがらみなしで品がある。あと、過剰ではないロケ時の春日のたたずまいも上品だったと思う。ヘリで夢をかなえる企画内容を「パシる」の一言で表現した発想も見事だった。

(文=寺西ジャジューカ)

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