北海道地震の大停電で強盗事件も…ブラックアウトの恐怖

日刊SPA!

2018/9/11 08:55



なぜ、こうも無慈悲な災害が立て続けに起こるのか……? 台風21号が西日本を直撃した2日後の9月6日午前3時すぎ、北海道胆振地方を震源とするマグニチュード6.7の大地震が発生した。震源地にほど近い厚真町では震度7を記録。この揺れで町内の山々が数百メートルにわたって崩落し、多くの家屋が土砂に呑み込まれた。10日時点での道発表では死者は40人に達し、うち36人が厚真町の住民だ。

◆台風と地震のダブルパンチで土砂崩れが

このように多数の犠牲者を出した背景には、台風の影響がある。日本列島を縦断するように北上した台風21号は、地震前日の5日に北海道を通過。大雨や強風で農作物や交通網に大打撃を与えると同時に、山間部の地盤を緩くしていたのだ。札幌市に住む40代の男性が話す。

「登ってみるとわかりますが、震源地近くの平野部にある山には大きな岩がありません。粒の細かい火山灰が堆積してできた柔らかい地質と言われているので、過去にも何度か大雨で土砂崩れを起こしている山もあるんです。ただ、今回ほど大規模な土砂災害は見たことがありません……」

◆今までと違う「内陸地震」で大きな被害に

大雨に次ぐ地震――2つの不幸が重なった格好だが、もう一つ想定外だったことがある。数多くの大地震や大噴火を予測してきた木村政昭・琉球大学名誉教授が話す。

「過去の北海道を襲った大きな地震を見ると、ほとんどの地震の震源地は海の中。それも、十勝沖や釧路沖に集中しています。千島海溝を境に2つのプレートが接しているのですが、十勝沖から釧路沖にかけて北米プレートの下に太平洋プレートが沈み込んでいるため、圧力が加わり、地震が発生しやすくなっているのです。

ところが、今回の地震はこれまでと異なり、内陸部が震源地。いまだ発生原因は明らかになっていませんが、震源地近くを南北に走る石狩低地東緑断層帯でズレが生じた可能性が高いと見ています。太平洋プレートからかかる圧力が、この断層帯で放出されたかたち。プレートの境目で起きる海溝型地震に比べて、このような内陸地震のエネルギーは小さめではありますが、都市直下型となって大きな被害をもたらす傾向にあるのです」

◆明かりがバチンと消えて真っ暗に

すでに繰り返し報じられているように、札幌市内では液状化現象が発生し、至るところで道路に亀裂や陥没が生じている。南西部・室蘭市の石油コンビナートでは火災も発生。都市直下型地震の爪痕は深く刻まれている。だが、被災者を恐怖に陥れたのは電力喪失という二次被害だった。サッカー日本代表の対チリ戦取材のため札幌に滞在していたスポーツライターの栗原正夫氏が話す。

「大きな揺れで目が覚めてから、すぐにテレビをつけましたが数十分後にテレビも明かりもバチンと消えて真っ暗に。その後、市内をクルマで流してみたら信号は消えているうえに、ガソリンスタンドやスーパーも大半が閉店休業。幸いなことに私は停電中も泊めてくれる宿を見つけられたのですが、私の知り合いは札幌中心部のホテルの予約をキャンセルされ、開放されていた札幌駅の地下通路で暗闇の中一晩過ごしたようです」

◆なぜ295万戸も停電したのか

最も多くの被害者を出した厚真町には北海道電力最大の苫東厚真火力発電所がある。同発電所が地震の影響で運転停止に陥った結果、電力需給のバランスが崩れて、他の発電所も連鎖的にダウンしたという。大阪電気通信大学電気電子工学科教授の伊與田功氏が解説する。

「火力発電はお湯を沸かして、その蒸気の力でタービンを回転させて電力を発生させる仕組み。この発動機の回転数が電気の周波数に当たります。ところが、道内の50%の電力を供給する苫東厚真がストップしたことによって、稼働していたほかの3か所の火力発電所にしわ寄せが行き、電力需給が崩れて発動機の回転数が乱れてしまった。通常ならほかの供給量を増やして対応できるのですが、今回はカバーできる量を超えていたんです。その結果、周波数の乱れは機器の故障に繫がるため、ほかの発電所も自動停止。295万戸という道内の大半が停電する事態に発展したのです」

◆暗闇で強盗事件も…ブラックアウトの恐怖

突如襲ったブラックアウトの恐怖は想像以上だったという。札幌市在住の20代男性が話す。

「ケータイ基地局の非常用電源があと何時間でなくなる、浄水場の自家発電が故障して断水になる、など真偽不明の情報が錯綜してもバッテリー切れが心配で確かめようがない。夜は真っ暗だから寝るほかないんですけど、生活音がないせいか、遠くの救急車のサイレン音がやけに耳につく。7日の夕方に電気が復旧してからニュースをチェックしていたら、地震発生直後の深夜に暗闇に紛れて強盗事件が起きていたことを初めて知って、本当に怖くなりました」

被災者が口ぐちに話していたのは、「失って初めて電気の大切さを知った」ということ。すでにほぼ道内全域で電気は復旧しているが、綱渡りの電力需給が続いているだけに、計画停電を実施する可能性も浮上。北海道が本来の活気を取り戻すには、まだまだ時間がかかりそうだ……。<取材・文/日刊SPA!取材班>

※週刊SPA!9月18・25日合併号「今週の顔」より

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