思春期女子の「自己肯定感」を下げないための対応法


女の子の「自己肯定感」を高める育て方: 思春期の接し方が子どもの人生を左右する!』(吉野 明著、実務教育出版)の著者は、私立鷗友学園女子中学高等学校名誉校長。

大学卒業後に鷗友学園の社会科の教師となり、44年間にわたって女子教育に携わってきたという人物です。

いわば女子教育の第一人者であるわけですが、最近は「自分の自己肯定感が低いので、せめて娘は高い自己肯定感を持った子に育てたい」というような話を耳にすることが多くなったのだといいます。

いうまでもなく、自己肯定感とは「自分の存在を肯定し、大切にしようとする気持ち」のこと。自己肯定感が仕事のパフォーマンスや人間関係に影響を及ぼすという理由で、その低さを気にする大人も多くなったというのです。

そしてそれ以上に、自己肯定感は現代の子育てにとって、最大のキーワードでもあります。

子どもの自己肯定感を高く維持することができれば、子育ての最重要ポイントの1つは終わったと考えてもいいほど、将来にわたって大きな影響を与えると考えられているからです。(「はじめに」より)

でも、親御さん自身の自己肯定感が低いからといって、諦める必要はないそうです。なぜなら自己肯定感は固定されるものではなく、上がったり下がったりするのが普通だから。

特に思春期の子は、数年の間に低い状態から高い状態に大きく変わることもよくあること。そしてそんな思春期に、親がどのように接するかによって、子どもの自己肯定感は大きく変化するというのです。

女の子の場合、反抗期は小学校5、6年生くらいから始まります。本書では、反抗期を含めた、10代の思春期を迎える娘さんを持つ親御さんに向け、思春期の女の子とはどのようなものか、親はどのような心構えを持つべきか、高い自己肯定感を持つ子に育てるためには具体的にどのように接すればいいのかを、私の経験に基づいてお話ししていきます。(「はじめに」より)

きょうはCHAPTER 4「うかつに『自己肯定感』を下げない思春期女子の対応法」のなかから、ふたつの重要なポイントをピックアップしてみたいと思います。
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女の子の「自己肯定感」を高める育て方: 思春期の接し方が子どもの人生を左右する!
女の子の「自己肯定感」を高める育て方: 思春期の接し方が子どもの人生を左右する!
1,404円

反抗する娘とヨコの関係を築く


まず著者が強調しているには、反抗期の娘との間に「ヨコの関係」を築くこと。しかし、これまでタテの関係のなかで育ててきたというのに、いきなりヨコの関係になろうといっても難しい気がします。

いったいどうしたら、上から下への指示や命令の形から、ヨコのつながりへと変えていくことができるのでしょうか。

反抗期になると、子どもはこれまでのタテの関係に対して反発を見せるようになるもの。「親がAといったらB、BといったらA」というように、言うことを聞かなくなるわけです。

そんなときに大切なのは、従来のように「Aにしなさい!」と強く言ったり、「いったいABのどっちなの!?」と問い詰めたりするのではなく、まずは“静観”することだといいます。

もし子どもがイライラしながら「Aじゃない、Bもヤダ」と言っているとしたら、親は落ち着いて「なにかあった?」「どうしたの?」「じゃあ、こういうふうにしてみたら?」と、子どもの気持ちに寄り添う声がけをすべきだということ。

そして、その際のポイントは「決めるのはあなた(娘)」だということをしっかり示すこと。いってみれば、タテの枠組みで親が持っていた決定権を、娘に譲りわたすわけです。

小学6年生のHさんは、運動会で赤組の応援団長に立候補するかどうか迷っていました。「お母さんは、私が応援団長をしたほうがいいと思う?」と何度もたずねてきます。

そこでお母さんは、「あなたがやりたいなら、やってみれば? 失敗してもいいんだよ。お母さんは、ちゃんと見ているからね」と伝えたところ、Hさんは応援団長に立候補することに決めました。(123ページより)

子どもには、5年生、6年生のころから「自己決定」の練習をさせる必要があると著者は主張しています。なかには「中学受験をするかどうか」など、かなり大きな決定も含まれることになるでしょう。

そんなとき親は、娘さんに大きな決定をさせることが不安で、ついこれまでのようにレールを敷いてしまいたくなるかもしれません。

しかし、そこは親もふんばりどころ。そういうときこそ、タテの関係からヨコの関係に降りていく練習をしていかなければならないということです。

ときには言い争いも多くなるかもしれませんが、とにかく冷静に。ヨコの関係で「対等に喧嘩する」ことだけは避けるべきだといいます。(122ページより)

仲間はずれ、いじめの処世術


小学1年生のいじめの件数は、10年前の10倍になっているのだそうです。たった10年の間にこれだけ件数が増えて報告されるようになったのは、「なにをもっていじめとするか」の認識が変わったからだといいます。

特にいじめが多く報告されているのは、著者ら教師が「中1の危機」と呼んでいるという中学1年生。文化の違う子どもたちが一斉に顔を合わせる中学進学のタイミングで、小学校6年間での安定した関係性が大きく崩れ、価値観の衝突が起こるというのがその理由です。

でも、そうした摩擦は起こるのは当たり前のことで、「これまではこういう位置にいたけれど、環境が変わったからここでは上になりたい」などと強気になる子がいることも原因のひとつ。

そんなとき、子ども同士でなんとか解決していくことが、その後の成長につながるわけです。

先の長い人生においても何度となく、新しい価値観を持った人と出会うことになります。つまり、「どう対応していけばいいのか」をこの時期に学べるということは、将来においても大きな助けになるということ。

ただ最近では、こうした摩擦のすべてを「いじめ」として学校に訴えてくることが増えているのも事実だといいます。いじめ件数増加の背景には、そんな事情も絡んでいるということなのでしょう。

子どもが悲しそうな顔をして帰ってきた→友だちにきついことを言われた→その子にいじめられている→担任に「いじめた子をなんとかしてください」と訴える、ということ。

しかし、こうした摩擦や衝突は普通に起こることで、それが中1ならなおさら。そのため、こうした初期の摩擦に親が介入すると、結果としてうまくいかないケースが多いのだそうです。

親が入ってくることで、子どもは自分で解決する機会を奪われてしまうため、いくつになっても同じようなケースが頻発することになってしまうというのです。

中学1年生のケースでよくあるのが、小学校時代にいじめられていて自己肯定感が低かった子が、奮起して上に立とうとして起こる摩擦。中学校という新しい場では、絶対に「下」に行かないと決め、他の子に強い態度に出るようになるわけです。

ところが、他者との関係性をうまくつくることがうまくないために、周囲の気持ちが離れていき、結果として一気に形勢が逆転。

いじめられていた子たちが強く出るということが起こってしまうもの。そうなると、誰がいじめる子で、誰がいじめられる子なのか、明確な区別などなくなってしまいます。

とくに中1では、ある程度の摩擦はあるものだと、親も子も覚悟しておくほうがいいでしょう。その上で、子どもがしょんぼりして帰って来たら、「辛いね」と共感する。

親が自分を認めてくれれば、学校で多少辛いことがあったとしても、子どもはがんばれるものだからです。

そういう場合に親が最初にすべきは、「うちの子がいじめられている」と学校に連絡はしても、すぐに解決を求めることではありません。「辛いねと子どもの気持ちに共感することなのです。(142ページより)

そのため、もしも娘さんが友だち関係の悩みを話しはじめたら、まずは気持ちを受け止めることが大切。

子どもが「つらいんだ」と言ったら「つらいんだね」と返し、「お母さんも同じ立場だったらつらいと思うよ」と共感するわけです。これは「反復法」というものだそうです。

「痛いの痛いの飛んでいけ!」という言葉を思い出してください。ここにあるのは、 共感です。子どもが「痛い」ところを認めた上で、さすってやる。

共感の気持ちとともに、母親の手の温もりも伝わり、ほとんどの場合は母親に受け入れてもらえたという満足感で痛みは和らぎます。

思春期になっても、対応方法は基本的に同じ共感です。「痛いよね」「辛いよね」「泣きたいよね」という気持ちを共有することから始めてください。(87ページより)

友だちのことで怒っているときも、「こう解決したら」と具体的にアドバイスするより、「そんなことがあったんだ。そりゃ怒るよね」と気持ちに寄り添う。そうするだけで、子どもは安心できるというのです。

なお、この際に注意すべきは、子どもと一緒になって相手を非難しないこと。子どもが成長していく過程で、人間関係のトラブルは必ずどこかで起きるもの。

そのため最終的には、子ども自身で解決していく必要があるわけです。そこで、「相手にどんな働きかけをすれば関係がよくなるか」について、親子で考えていく姿勢を持つことが大切だという考え方。

大人が出て来た瞬間に、その問題は子どもの手を離れてしまいます。そうすると自分で解決するという経験をする機会は、永遠に失われてしまいます。

子ども同士の摩擦やケンカは当然あるものですから、よほど深刻なものでない限りは、話を聞いて状況を把握しながら共感を示すことで子どもの支えとなる、様子を見ていく、というのが一つの方法ではないでしょうか。(144ページより)

とはいえもちろん、命に関わること、犯罪に当たることに対しては、すぐに大人が出て行く必要があります。

特に小学生のときにいじめられ、そのトラウマから中学生になっても周囲となじめず、自己肯定感が低い子どもの場合は、いじめられていると訴えてきたときにすぐ対応しないと、深刻化するケースもあるのだといいます。

情緒的に不安定になり、なにかを思い出して“怖い”と抱きついてきたり、眠れない、食べられないなどの症状が続いたりする時には、躊躇せずに学校とも協力し、保健室やスクールカウンセラー、さらには児童・思春期精神科や心療内科などに相談して解決する道を探すことが大切。

なかには、いじめられたことを「自分に問題があった」と考えたり、「そのことは大人に触れてほしくない」と考えていたりなど、他人に相談することを嫌がる子もいるもの。

そういう場合には無理に医療機関などを受診せず、まず母親がしっかりと受け止めてあげるべき。「いじめられたのはあなたの落ち度ではない。私たちは味方であり、いつも見守っている。そばにいるよ」というメッセージを伝え続けることが大切だというわけです。(138ページより)


子どもたちへの接し方に、誰にでも当てはまる共通の方法があるわけではありません。つまり子どもとの関わりのなかで、親御さんなりの工夫や変更が必要になるということ。

とはいえ中高一貫の女子校において、多くの生徒たちやその保護者と関わり合いながら気づいたこと、カウンセラーや精神科医など専門家の方々から学んだことも多いと著者は言います。

つまり本書では、そうしたノウハウが余すところなく明らかにされているのです。女の子を持つ親御さんには、ぜひとも読んでいただきたい良書です。
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女の子の「自己肯定感」を高める育て方: 思春期の接し方が子どもの人生を左右する!
女の子の「自己肯定感」を高める育て方: 思春期の接し方が子どもの人生を左右する!
1,404円


Photo: 印南敦史

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