豊洲市場 移転まで1カ月「格段進歩」新施設に期待も「この2年は何だったんだ」

 東京都江東区の豊洲市場は、来月11日に開場する。2016年8月末、あと2カ月に迫っていた築地市場(中央区)からの移転が延期されて2年。豊洲に行く人、築地に残る人など、関係者はそれぞれの判断で1カ月後の新市場の開場日を迎える。移転に関わる人々の思いを4回にわたって連載する。第1回は、豊洲に移って働くと決めた仲卸業者。低温管理の行き届いた新施設に抱く、期待と不安を語った。

 広い建物の隅々まで空調が完備された豊洲市場。セリ場は、半袖でいると寒いほどだ。センサーに手をかざせばシャッター類が自動開閉。冷気を保ち、ホコリの侵入を防ぐ現代的な市場だ。農水省は10日、都の移転申請を認可。小池氏は「(豊洲を)しっかり育てていきたい」と話した。

 1923年(大12)創業のマグロ仲卸業者「鈴与」の三代目、生田與克(よしかつ)氏(55)は「生鮮食品を扱う場所として格段に進歩。食の安全という面で、築地と比べものにならない」と話した。猛暑の今夏を「カチンコチンに凍ったマグロが、数十分で柔らかくなる日もあった」と振り返る。数百キロのマグロを扱う肉体労働。「俺自身も涼しい方がいい。今年は暑くて体を壊した」と苦笑いした。

 2016年11月7日に予定されていた移転は小池百合子知事が開場約2カ月前に延期を決めた。あれから2年。「ヒ素が出た」「仲卸店舗が狭い」「ターレー(小型運搬車)が曲がれない」など次々“欠陥”が指摘されたが、生田氏は「難癖みたいなものばかりだった」と顔をしかめた。

 代わって関係者を悩ませる問題がある。一つは駐車場不足だ。築地の4600台を参考に、豊洲は5100台で計画。さらに周辺に200台を追加確保したが足りていない。築地では、駐車場を確保せず荷物の積み下ろしする業者もいるとされ、その数は約1000台との見立てもある。

 「買荷保管場」の使用料高騰も予想される。これは仲卸や買い出し業者が購買物を保管する場所で、豊洲のように広い市場で複数の店を回る際に重要。面積に応じて使用料は違うが、関係者によると3倍以上になる恐れも。築地では月平均1万~3万円だが、10万円近くになる例も出そうだ。負担増は消費者にものし掛かる。市場の業者全体で負担しようという動きもあったが、うまく進んでいない。

 どちらも移転延期前から不安視されていた。業者間の交渉や調整が続けられてきたが、生田氏によると「小池氏の移転延期決定後に空気が変わった」。長い年月をかけ、ようやく移転でまとまった業者は再び分裂。約540の仲卸からなる東京魚市場卸協同組合(東卸)の理事長が移転慎重派の人物に代わるなどし、移転後を見据えた調整が後回しされた。そのため駐車場問題などが解決できなかったとの指摘もある。

 “豊洲ブランド”のイメージも悪化。「この2年は何だったんだろう。小池さんには、きっちりケジメつけてもらわなきゃな」と恨み節が口をついた。

【問題点チェック】

 多くの問題点が指摘された豊洲市場。開場に際し、これまでの不安は拭えたのか?

 (1)有害物質 環境基準以下ながら、地下ピットからヒ素が検出されたことから地下水の安全性が問題視され、基準を超えるベンゼンも検出。都は追加工事費38億円をかけ“無害化”を目指したが断念。ただ、施設の下に厚いコンクリートを敷き地下水を遮断。また場内で地下水は使わない。小池氏は今年7月31日、安全宣言した。

 (2)盛り土 汚染土を除去後、新たに無害な土を盛るのが当初の計画。地下から有害物質が上がるのを防ぐためだが、建物地下に、土を盛らない“がらんどう”の空間があることが発覚。虚偽報告と問題に。都は「(空間は)配管などを修理点検するスペースが必要なため。厚いコンクリートで床を覆い、盛り土がなくても有害物質は遮断できる」。

 (3)仲卸店舗の広さ 「狭くて、長い包丁が引けない」と言われたが、店は最小単位の“1コマ”が築地の7.5平方メートルに対し、同8.25平方メートルと拡大。なお1店で2~3コマ契約する例も多い。横幅1.8メートルが1.5メートルと狭くなったが、これは仲卸業者らの合意の上。「1コマでも斜めに包丁を引けば大丈夫」という業者も。共同のマグロ解体場もある。

 (4)ターレー 「坂道が上れない」「ヘアピンカーブが曲がれない」とされたが、業者も都も「それはスピード次第。坂やカーブの問題ではない」とした。積み荷が落ちるとの懸念には「大事な商品をわざわざ落とすような走り方はしない」(業者)。

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