永久メイにインタビュー 超名門マリインスキー・バレエで活躍する新星の快進撃の秘密とは

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2018/9/10 18:20



ロシアのサンクトペテルブルグを拠点とする超名門バレエ団、マリインスキー・バレエで日本の新星が注目を浴びている。現在18歳でセカンド・ソリストを務める永久メイだ。2017年に研修生として入りソリスト役を任され、2018年4月には『くるみ割り人形』の主役マーシャ役に抜擢された。破竹の勢いで躍進する永久に現在の心境、これまでのバレエ人生、2018年11月~12月に行われるマリインスキー・バレエ日本公演に向けての抱負を聞いた。


待望の正団員、そしてセカンド・ソリストに


――2018年6月、マリインスキー・バレエの研修生を経て正団員となりセカンド・ソリストになられました。その時のお気持ちを教えてください。

びっくりしました!18歳になってワーキングビザが取れて団員となりました。主役やソリスト役を踊らせていただいていましたが、まさか最初からセカンド・ソリストになるとは思っていなかったので、びっくりし過ぎて泣いてしまいました。

――マリインスキー・バレエには舞踊監督のユーリー・ファテーエフ氏直々のお誘いで行かれたのですよね?

はい。2015年の夏、ユース・アメリカ・グランプリ(YAGP)のガラ公演に招待された時に声をかけていただきました。監督にレッスンを見られているのを全然知らなくて、後から「メイは楽しそうに踊っていたから」と聞きました。そして2016年4月のマリインスキー国際フェスティバルに招待され『ラ・バヤデール』の壺の踊りを踊ることになりました。

――初めてマリインスキー劇場で踊った時の心境はいかがでしたか?

信じられなさ過ぎて緊張もせず、どう踊ったのかを覚えていません。留学していたモナコのプリンセス・グレース・アカデミーの校長先生が来られていたので「私、どのように踊っていましたか?」と聞いたくらいです(笑)。まだ15歳だったので全てが新しく、「踊るしかない!」とただ楽しんで壺の踊りを踊りました。


コンクールへの挑戦、モナコでの修業時代


――バレエを始められたのはいつですか?

3歳です。

――2013年、YAGPのジュニア部門で第1位となりスカラシップを得てモナコのプリンセス・グレース・アカデミーに行かれました。いつ入学されましたか?

13歳の時で中学1年生の9月から入りました。

――早くから将来プロとして踊ることを志していたのですか?

YAGPには海外のバレエ学校に行くために出るようになりました。深田真紗子先生に学び、舞台経験を積んで賞をもらうなかで「このままバレエをやっていくんだな」と思うようになり、モナコに行くことになってからプロになる気持ちが固まりました。

――コンクールに挑んで得たことは何でしょうか?

学校もあって両立は大変でしたが、何ヶ月も1つのヴァリエーション(ソロ)を練習し、そこで言うなれば「強い心」ができたと思います。賞を獲って喜びを得たり、上手い子を見て自信を無くしたりもしましたが、つらかった練習が私のなかに残っています。

――モナコのバレエ学校での生活はいかがでしたか?

バレエだけでなく私生活の面でも厳しく鍛えられました。自己管理ができず退学させられる子も見てきました。日本の留学生は全員まじめで問題を起こしたりとかルールを破ったりとかはありませんでしたので、先輩方を見習って卒業できた感じです。今考えると自分でもよくやってきたなと思います。

――主に習った先生はどなたですか?

4年間のうち2年目まではローラン・フォーゲル先生に一番お世話になりました。フリーデマン・フォーゲル(シュツットガルト・バレエ団プリンシパル)の兄にあたる方です。最初は厳しかったので嫌いになってしまいそうでしたが、4年目の卒業公演で『ラ・バヤデール』第3幕のパ・ド・ドゥを踊り、2、3ヵ月の間指導を受ける機会があって「こんなに素晴らしい先生に習っていたんだ!」と気付きました。厳しいことも言っていただいたからこそ「もっと頑張ろう」と思えたし、先生がいないと今がないので本当に感謝しています。


入団当初のころ


――2017年、学校卒業後マリインスキー・バレエに研修生として入られた時の実感は?

マリインスキー・バレエはロシア人で(傘下の)ワガノワ・バレエ・アカデミーの生徒が入る場所だと思っていましたので本当に夢みたいでした。袖とか客席から大きな舞台を見ると「本当にここで踊っているんだ!」と感じました。

――日本からモナコへ、そしてロシアへ。環境の変化が大きいですね。

家族は私がロシアに行くことを心配していましたが、私は「マリインスキーがあるなら、どこの国にでも行く!」みたいな感じでした。寒さとかは怖かったですが「バレエをやったら温まるでしょう?」みたいに考えていましたね(笑)。言葉の面の心配もありましたが、私は今目の前にあることをやっていきたいので怖がらずに行きました。

――バレエ団の雰囲気はいかがですか?

皆がライバルで冷たいかもしれないと心配していたのですが、先生は優しくダンサーは皆仲良しです。初めはテレビ等で見て知っていたスターたちを素晴らしいと思って眺めていましたが、今は「このダンサーのここが凄いな」という点をつかむようにしています。

――入団して苦労したことはありますか?

ワガノワ・バレエ・アカデミーではなくモナコのバレエ学校から来ているので、最初は周囲から「見られている」という視線を感じました。でもコール・ド・バレエ(群舞)に入って大勢でまとまって練習するのとは違うので、それほど苦労はありませんでした。

――マリインスキーのスタイルになじんできましたか?

「踊り方が変わった」と言われたりはします。先生から注意いただいたことを頑張って直すようにしていて、特に上半身の使い方に気を付けて練習しています。
永久メイ「眠れる森の美女」よりフロリナ王女  (C)Natasha Razina
永久メイ「眠れる森の美女」よりフロリナ王女 (C)Natasha Razina

『くるみ割り人形』で初主役


――2018年4月、まだ研修生でしたがチャイコフスキー三大バレエの一つである『くるみ割り人形』の主役マーシャを踊りました。その際の印象はいかがでしたか?

この時も緊張しなかったんです。私はいつも本番後に自分のできなかったことを見付けてネガティブに考えてしまうのですが、この時は自分で自分を追い詰めることなく踊れ、「ちゃんと踊れたかもしれない」と初めて思いましたし達成感がありました。

――マリインスキーのワイノーネン版ではマーシャが最後のグラン・パ・ド・ドゥも含めてずっと踊るので大変だったのではないですか?

いつもより練習期間が長く、舞台上でもリハーサルできたので安心感はありました。パートナーのヴィクター・カイシェタも初めての主役だったので、初めて同士の二人で時間をかけて練習できたのがよかったです。でも『くるみ割り人形』だけを練習していた訳ではなく、ほかの作品の練習もあってきつかったですね。

――現在、どの先生に師事されていますか?

エルヴィラ・タラソワ先生にリハーサルを見てもらっています。私は最初ロシア語が分からなかったのですが、タラソワ先生は英語を話されます。英語とロシア語で話しながらリハーサルができるので安心感がありますね。

――『くるみ割り人形』以外で印象に残る役はありますか?

『ジゼル』のペザント・パ・ド・ドゥです。『ジゼル』が一番好きなバレエで主役を踊るのは夢です。ペザントの練習はテクニックが大変できつかったのですが印象に残っています。

――普段の気分転換はどのようにしていますか?

バレエ団がお休みでも一応レッスンはやっているので行きます。凄く疲れていたらレッスンにも行かず家で休みます。ずっとバレエのことを考えているという感じで、リラックスしたいから何か特別なことをする訳ではないですね。


日本公演への思い


――2018年11月~12月に行われるマリインスキー・バレエ日本公演ではガラ公演「マリインスキーのすべて」で『海賊』第2幕のパ・ド・ドゥ、『白鳥の湖』全幕で王子の友人、『ドン・キホーテ』全幕でキューピッドを踊られる予定です。団員になって早々の来日公演ですね。

うれしいです!日本が大好きなんです。13歳で日本を離れホームシックにもかかり今も恋しくなります。マリインスキー・バレエの団員として帰って来られるのもうれしいし、久しぶりに日本で踊るので楽しみです。『白鳥の湖』はツアー公演でもよく上演され王子の友人などを踊っていますし、『ドン・キホーテ』のキューピッドも一度踊っています。どちらも好きな役です。『海賊』のグラン・パ・ド・ドゥはヴィクター・カイシェタとガラ等で踊っています。

――カイシェタとはよく組んでいますね。

カイシェタは一つ年上で『くるみ割り人形』で踊ってからずっと組んでいます。リハーサルも一緒で、よく話しますし仲もいいです。彼はいつもハッピーな性格です。

――今後の目標をお聞かせください。

目標を立てずに今あることをやっていきたいのですが、厳しいレッスンは変えずに努力し続けたいですね。練習あるのみです。あと今すぐに踊りたいという目標とは違うのですが、『ジゼル』のタイトル・ロールを絶対に踊りたいです。先ほどお話したように『ジゼル』がもともと大好きでしたし、入団前にマリインスキー劇場に行って初めて見た舞台もエカテリーナ・オスモールキナが踊る『ジゼル』で、「マリインスキーの『ジゼル』は凄い!」と思いました。なので「踊りたい役は?」と聞かれると「『ジゼル』です」といつも答えています。


取材・文=高橋森彦  写真撮影=岩間辰徳

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