「最初は理解できなかった」the pillows山中さわおが、どんどん「フリクリ」好きになった理由

Movie Walker

2018/9/10 18:00

劇場版『フリクリ オルタナ』(公開中)、劇場版『フリクリ プログレ』(9月28日公開)は、2000年にリリースされたOVA「フリクリ」の完全新作で、少年少女に巻き起こるトラブルを描いたSF青春ストーリーだ。シリーズを通して主題歌や劇中曲を手掛けたのは、結成30周年を迎えるオルタナティブ・ロックバンド、the pillowsだ。そのフロントマン・山中さわおに、バンドにおける「フリクリ」という存在、今回書き下ろした新曲の制作秘話を語ってもらった。

■ 「僕の音楽に似ている」山中が感じる作品へのシンパシー

「フリクリ」では、the pillowsの楽曲が多数使用されており、作品きっかけでバンドのファンになった人も多い。また作品が放送されたアメリカでも彼らの人気に火が点き、ツアーを行うなど海外進出のきっかけになっている。

実は新作の制作発表から楽曲オファーまでは間があったそうで「(オファー時は)いやぁ、ホッとしましたよ。若いバンドに持っていかれたのかな?おじさんにはもう用はないのかな?と思っていたら、まだ、おじさんにも用があったみたいですね(笑)」と山中は冗談交じりに振り返る。

前作の主題歌「Ride on shooting star」は小気味良い印象的なギターリフとリズム感を重視した歌詞が特徴で、バンド屈指の人気曲。「当時はOasisみたいな音楽に憧れて曲を作っていて、(監督の) 鶴巻和哉さんにもそのような楽曲をリクエストいただきました。ただ、当時の僕は似ても似つかない『Ride on ~』を作っていたんです。すごく気に入った曲だったので、『これじゃダメですか?』ってダメ元で提出したら、葛藤はあったみたいですが結果的にOKをいただきました。でも、僕は『Ride on~』の方が良かったと思っているし、鶴巻さんもそうでいてほしいな」と意外なエピソードも明かしてくれた。

the pillowsの音楽を形容する場合、型にはまらない“オルタナティブ・ロック”という言葉が度々用いられる。「フリクリ」もまた、これまでのアニメーションの枠に収まらない、先読みできない実験的な演出が随所に盛り込まれている。

当時初めて「フリクリ」を観た感想について山中は「このボケに対してツッコミはないの?とか、この伏線は回収しないままなんだとか、物語に意味を求めていたのであまり理解ができませんでした。ただ、何度も観ているうちに、“俺の『Ride on shooting star』みたいなもんじゃん!”と思うようになったんです。歌詞には聴こえる言葉以外の意味はなく、それをおもしろいと感じる人には価値があるし、そう思えない人には残念な出会いだったのだろうと…。僕の音楽に似ていると思ってからは、どんどん好きになりましたね」と説明。山中自身もthe pillowsの楽曲と「フリクリ」の世界観にシンパシーを感じているようだった。

■ 方向性の異なる2曲を新たに書き下ろし!

劇場版『フリクリ オルタナ』に「Star overhead」、劇場版『フリクリ プログレ』には「Spiky Seeds」という2つの新曲を書き下ろした。それぞれの楽曲に込めた意味は「(新作の)内容がわからなかったので、勝手に前作の続編だと思って作り始めました。『Star overhead』は(前作の主人公)ナオ太が大人になって、少年時代を懐かしむところを想像したんです。例えばタイトルには、“大人になって失くしたと思っていた輝きが頭上にあったんだ”という意味があります」と「Star ~」は前作に続く物語であることを明かしている。

「Spiky Seeds」についても「歌詞は、意味よりも言葉の響きを重視しています。欧米を意識して音節も英語に近い“生誕”や“成長”などの言葉で構成していきました。ただ“進化しないまま原点回帰の真っ最中”という歌詞があるのですが、ロックンロールは流行り廃りに関係なく、同じことをやり続けることだと僕は思っているので、“進化しないまま”はその感情が出ちゃっているのかもしれないですね」と、海外リスナーを意識しながらも、そこには山中の意志が込められているようだ。

■ “オルタナ”スタイルで突き抜けた30年

来年はバンド結成から30年。改めて山中にこの30年を振り返ってもらった。「僕たちももう50近くになり、ライブでは脳みその“動け!”という指示に対し、体が“No!”って答える。そういうせめぎ合いが続いていますね(笑)。また、ずっと順風満帆だったわけではなく、いろんな波を越えてやって来た達成感もあります。最初の7、8年は本当に自分を苦しめるぐらい辛かったけど、そこからは自分勝手に楽しくやらせてもらいました。その中でも『フリクリ』は大きな存在です。USオルタナティブ・ロックを意識して作ってきた僕らの音楽が、アメリカで受け入れられたのは大きな出来事でした」。

共に“オルタナ”スタイルで時代を作ったthe pillowsと「フリクリ」。新作を観る際には、楽曲がどのように作品を盛り上げているのか、両者の生みだす相乗効果も楽しんでほしい。(Movie Walker・取材・文/トライワークス)

https://news.walkerplus.com/article/161227/

あなたにおすすめ