米8月雇用統計レビュー - 賃金上昇に加速の兆し


米労働省が2018年9月7日に発表した8月雇用統計の主な結果は、(1)非農業部門雇用者数20.1万人増、(2)失業率3.9%、(3)平均時給27.16ドル(前月比0.4%増、前年比2.9%増)という内容であった。

(1) 8月の米非農業部門雇用者数は前月比20.1万人増と、市場予想の19.0万人増を上回り、前月の14.7万人増から増加幅が拡大。ただ、前月分と前々月分で合計5.0万人が下方改定された事もあって、3カ月平均では18.5万人増となり、前月の20.8万人増から減速した。業種別では、教育・医療部門などが大幅に伸びた一方、製造業が小幅ながらも減少に転じるなど、やや明暗が分かれた。

(2) 8月の米失業率は3.9%と、前回から横ばいで市場予想の3.8%を上回った。労働参加率は前月から0.2%ポイント低下して62.7%となり、労働の意思と能力を持つ「労働力人口」が減少した事を示唆。一方、フルタイムの仕事を望みながらもパート就業しかできない人なども含めた広義の失業率である不完全雇用率は7.4%に改善して2001年4月以来の低水準を記録した。

(3) 8月の米平均時給は27.10ドルとなり、前月から0.10ドル増加。伸び率は前月比+0.4%、前年比+2.9%で、いずれも市場予想(前月比+0.2%、前年比+2.7%)を上回った。なお、前年比の伸び率は2009年6月以来、約9年ぶりの高水準であった。

米8月雇用統計のポイントは、2つある。第一は、賃金上昇に加速の兆しが見え始めた点であり、インフレ率が目標の2%前後で推移するという米連邦準備制度理事会(FRB)の見立てに矛盾がない事が示された点だ。第二は、貿易摩擦問題が今のところ、米雇用情勢に負の影響を及ぼしていない事が明らかになった点だ。

今回の雇用統計を受けて、FRBが9月に利上げを行う事は確定的となったが、一方でトランプ米政権が「アメリカファースト」の保護主義姿勢を維持する公算も大きくなったと言えるだろう。トランプ大統領が重視する雇用情勢に貿易戦争の悪影響が及んでいない以上、米政権は貿易赤字の削減に向けた強硬姿勢を崩す可能性は低いと見られる。

なお、米8月雇用統計発表後のニューヨーク市場では、米ドルが広範囲にわたり買われた他、米国債が売られ長期金利が上昇。米国株はやや売り優勢であったが、主要指数の下落率は前日比0.2~0.3%といずれも小幅だった。

○執筆者プロフィール : 神田 卓也(かんだ たくや)

株式会社外為どっとコム総合研究所 取締役調査部長。1991年9月、4年半の証券会社勤務を経て株式会社メイタン・トラディションに入社。為替(ドル/円スポットデスク)を皮切りに、資金(デポジット)、金利デリバティブ等、各種金融商品の国際取引仲介業務を担当。その後、2009年7月に外為どっとコム総合研究所の創業に参画し、為替相場・市場の調査に携わる。2011年12月より現職。現在、個人FX投資家に向けた為替情報の配信(デイリーレポート『外為トゥデイ』など)を主業務とする傍ら、相場動向などについて、WEB・新聞・雑誌・テレビ等にコメントを発信。Twitterアカウント:@kandaTakuya

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