「参加者だけでなく、観ている側も面白い」両角岳彦が語る、学生フォーミュラの魅力【第16回全日本学生フォーミュラ大会】

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2018/9/10 14:03


2018年9月4日(火)から8日(土)まで、静岡県小笠山総合運動公園、通称「エコパ」で、第16回目を数える「全日本 学生フォーミュラ大会」が開催された。

学生フォーミュラとは、ひと言でいうと、学生の自作によるフォーミュラスタイルのレーシンカーによる競技会。しかし、ただ単にクルマを作るだけでなく、年間1000台の生産を想定したビジネスモデルとしてのプレゼンテーションを行い、企画・設計・製作・走行までを一貫して評価されるので、ただいいクルマを作って速く走らせればいいというものではない。

また、世界各国でほぼ同じルールで開催されており、相互に海外遠征も行われる国際的な一面も持つ。エントリー数は年々増え、今回は過去最多となる138チームがエントリーした(うち海外からのエントリーは60にも及ぶ)。しかし、会場および日程の都合上、事前の書類選考が行われ、本大会出場チームは98チームが上限となる。

今年もエコパを会場としたが、直前に台風の接近があり、さらには前線の活発な活動もあってスケジュールもいくつか変更を余儀なくされた。「過去これほど雨に翻弄される年はなかった」と関係者も語るほど。夕立のようなひどい雨の後に夏の太陽が顔を出ししばらくするとまた大雨、と目まぐるしく変わっていく状況に各チームも翻弄されていた。

ここでは、この大会でも毎回現場の実況席で解説を担当している自動車ジャーナリストの両角岳彦さん(上写真・右)に、学生フォーミュラの魅力を語ってもらった。

学生フォーミュラは、もともとは1980年にアメリカで始まったものです。それは、アメリカの自動車産業、特にエンジニアリングが世界の中で存在低下していくということに対しての危機感から始まったもので、モータースポーツが好きな人だったらよく知っているキャロル・シェルビーとかキャロル・スミスとかそういうモータースポーツの専門家まで名前を連ねて、始められたものです。

実は今、日本の自動車産業が同じようにジリ貧になる危うさに直面しています。社会も含めて自動車というものがうまく理解できていない。電気自動車になればずべて解決できる、自動運転になれば全部解決するみたいな話で済まされてしまっています。『そうじゃない』ってことを、学生さんたちがこの活動を通じて体験・体感しています。

学生さんたちはモノを作って七転八倒しています。かっこよく走っているように見えますが、裏では大変です。学校の勉強の何倍も大変なんです。でもその中から人が育っていることは間違いない。

実はこの学生フォーミュラを経験した卒業生は、モノづくりの小さな工場から自動車メーカーはもちろん、それ以外の企業まで様々なところに就職してそれぞれがんばっています。学生フォーミュラは、自動車産業だけはでなくて、日本でモノを企画して設計して製造するというすべてのプロセスにつながっている。それが、この活動の大きな意味です。

学生フォーミュラというのは、学生さんたちにプロフェッショナルとしてアドバイスはいくらでもしていい。でも、答えは言っちゃいけないんですね。実はすごくもどかしいです。『それ違う』って言いたいところがいっぱいあるわけ。でもそれは言わない。失敗した学生さんは、同じ失敗は2度としません、人生で2度と。これも大事なことですね。

そんな活動なんで、大人たちが自ら企画して設計して制作して開発することをしてはいけませんってルールブックに書いてあります。そのかわり、ルールブックには、学生さんたち皆さんの創造力と想像性を活かすため最大限の自由を提供しますというのがこのレギュレーションの第一章に書いてあります。それを考えながら大人は学生たちに接しています。

でも実は、大人がのめりこむほど面白いです。見守っている側の大人のほうがむしろ気合いが入ってのめりこんで、大人のフォーミュラSAEを作ろうって話がしょっちゅう持ち上がります。それほど面白いのです。もちろん、僕は自動車業界にいっぱいお世話になったんで、恩返しのつもりでやっていますけど、でも面白くてしょうがないです。

今年の見どころは? とよく聞かれますが、それぞれのチームの中で、軋轢あり、葛藤あり、だけども最後たぶんみんな泣いてます。そういう意味でいうと見どころは毎年ちゃんとあって。トップ争いはもちろん、でもビリのチームはビリのチームでやっぱり見どころを持っています。

この活動は、大会全体をまとめるより1チームに密着すると俄然おもしろくなります。今年も楽しかったし、僕自身も終わって必ずなぜか涙ぐむんですね。そういう大会です。ぜひ一度見に来てほしいですね。

(青山義明)

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