松田翔太「幕末は“全員正しい”からこそ面白い」『西郷どん』慶喜役で

 「革命編」へと突入し、注目度がさらに高まっているNHK大河ドラマ『西郷どん』(NHK総合/毎週日曜20時ほか)。いよいよ“幕末”へと物語が進んでいく中、今後ますます目が離せなくなる人物の一人が、松田翔太演じる一橋(徳川)慶喜だ。お忍びで品川宿に通う“ヒー様”から、“江戸幕府最後の将軍”へ…時代に翻弄されたその人物像を、いかにして演じているのだろうか。

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「徳川慶喜役のオファーを頂いたときは、『今度は慶喜か!』と。家茂役を演じていたとき、慶喜に嫌なイメージがあったんですよね。今回演じることで、彼が亡くなった後の世界を見られてよかったな、という思いがあります。あと僕は、鈴木亮平君のデビュー作で共演していて、当時一緒に食事に行ったりもしていたんです。今回の大河では十何年ぶりの再会。それもうれしかったですね」。

しかしながら、松田いわく今作での慶喜像は「完全な悪役」。演じる上では、悩む部分もあったという。

「僕が調べた限りでは、慶喜ってそんなに感情的な人ではなさそうだったんですよね。でも今回の作品では“乱暴なお殿様”というイメージで。もともと、演じる上では役の“筋”を見つけるのが好きというか、大切にしているんです。でも大河ドラマは、長く演じる中で役のキャラクターが少しずつ変わってくることもある。なので“筋”にこだわると逆に混乱することもありまして。だから今回は、中園ミホさんが描いている慶喜がたとえ僕の思っているイメージと違っていたとしても、そこを逆に楽しもうかなあと思って演じていましたね。例えば脚本に『ここで笑いまくってください』と書いてあれば、とにかく笑いまくってみる。そうしたら演じてる自分がどういう思いになるだろうか、と。そこを楽しみながら現場に入っています」。

「ヒール(悪役)を演じるのは好きだけど、ずっと怒鳴ってるのは大変」と今作の慶喜について苦笑しながら語る松田。慶喜と吉之助は磯田屋で過ごした日々から一転、敵対していく間柄となる。本作では前半の関係性が、後半の物語に切なさを増す伏線となっていくのだが、この構成について「それがなかったらもうちょっと楽だったなあと」と思っているようだ。

「昔の吉之助を知ってる、そしてあの時代の僕の感覚を知られているからこそ、それが(慶喜の)弱みになっていくんですよね。性格を把握されているから、ちゅうちょしてしまう…それをうまく利用されたなと。非常にやりづらいです(笑)」。

ただ、俳優・鈴木亮平はというと、非常に“やりやすい”とのこと。

「すごく柔軟な方だし、中心にいる懐の深さというか、すごく大きい世界を見てやっている気がする。僕としてはやりやすいし、温かみを感じるんですよね。対立するシーンでも、どこか愛情があるんじゃないかと感じてしまいます」。

ちなみに、鈴木が取材の際に「今作でほかに演じてみたい役柄は?」という質問に慶喜の名を挙げたと伝えると「そうなんですか!? それは素直にうれしいですね」と笑う。では、松田自身が今作で演じてみたい役柄は? と聞いてみると、しばらく考え込み…。

「この時代に関しては、書く人の視点で人物像がずいぶん違ってきますよね。だから答えるのは難しいけど…坂本龍馬(小栗旬)はやりたくないかな(笑)。すごく難しい立ち位置だし。見ようによっては腰抜けに見えるかなとか、いろいろ思っちゃうんですよね(笑)。とにかく、その役柄の“いい部分”も描けるんであれば、全員やりたい。となると龍馬もいいんですけどね(笑)」。

それだけ、さまざまな描き方ができる幕末という時代の面白さを、撮影しながら実感しているようだ。

「いろんな考え方、価値観があって、どれも正しい。新しいことが起きるときは、その正しさを信じたやつの勝ちですよね。それがなんとなく時代の流れとか、いろいろな感覚で一つにまとまっていくんですけど、そのときに『これは間違っているかもしれない』と思う人は歴史には残らないんですよ、きっと。そんな『全員が正しい』からこそ、面白い時代なんじゃないかなと思っています」。

慶喜最大の見せ場ともいえる大政奉還のシーンも撮影が終わったタイミングでの取材。松田いわく「慶喜が感情だけでやったとは思えない」というこの偉業も含め、緊張感あふれる場面が続く今後の展開。『西郷どん』の盛り上がりから、ますます目が離せない。(取材・文:川口有紀)

NHK大河ドラマ『西郷どん』はNHK BSプレミアムにて毎週日曜18時、総合テレビにて20時放送。

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