左目の眼球が零れ落ち……万引きGメンが見た「元カラーギャング店長VS外国人窃盗犯」の地獄絵図


 こんにちは、保安員の澄江です。

先日、検事さんに呼び出されて検察庁に行ってまいりました。いわゆる検事調べというやつです。一般の方であれば、検察庁の内部に入ることなど、なかなか経験されないことでしょう。ここは世間と刑務所の架け橋のような場所なので、それも至極当然のこと。実際に、厳重な所持品検査を経て庁内に入ると、腰縄を巻かれて手錠をかけられた被疑者が警察官に連行されているところを、あちこちで見かけます。

どのような時に呼び出されるかというと、被疑者に犯行を否認されたり、捕捉時に暴行を受けた場合や、逮捕者である私と被疑者の話が大きく乖離している時などが多いですね。明白な証拠を押収した上で、犯行現場である店内で実況見分を為し、警察署で長時間にわたって詳しい調書を作成しているにもかかわらず、法廷で否認に転じたりする被疑者の言い分に対抗するために、より詳細な検事調書を作成するのです。平均して年に1~2回のペースで呼び出されていますが、起訴されなければ日当はおろか交通費さえ支給されないので、そうした場合には公権力の図々しさを感じます。

今回、私が呼ばれたのは、都内の大型ショッピングセンターで、高級炊飯器を盗んだベトナム人女性の件でした。「持ち出し」と呼ばれる古典的な手口で高級炊飯器を盗み出した彼女は、店の外で声をかけられると同時に炊飯器を放り投げて逃走したにもかかわらず、「金は払うつもりだった」と犯意を認めず否認を貫いているというのです。

「日本製の炊飯器で炊く米はうまい」

昨今、アジア諸国において日本製の炊飯器は評価が高く、あらゆるところで高値売買されている状況にあります。それ故、大量に盗まれてしまうのでしょう。ダイソンの掃除機や圧力鍋、高級空気清浄器、IHコンロなどの被害も散見され、大型テレビとハードディスクレコーダーをセットで複数台持ち出した日本人の窃盗団を、腕っ節の強い仲間の男性保安員と一緒に検挙したこともありました。

高額品を狙う人たちは、捕まれば逮捕になる確率が高いので、ほぼ確実に暴れて逃走を図ります。たとえ捕まっても、素直に認めることなく否認を続ける傾向にあるため、その悪質さにイラつかされることが多いですね。平気な顔でウソをつく人たちを目の当たりにすると、誰も信用できない気持ちになって、世の中が恐くなります。

ここ数年、衣類を狙う外国人窃盗団も暗躍しています。もはや世界的なブランドとなったUの商品は、その機能性と品質の高さが買取相場を安定させ、瞬く間に彼らのターゲットとされてしまいました。薄くコンパクトな商品はバッグにたくさん入るため、1回の犯行による被害は過大で、売場の皆さんの頭を悩ませています。いまや現地の泥棒市場で、同社の製品を見かけないことはなく、そのほとんどが未開封のままタグ付きで販売されている始末だと、ベトナムに移住している友人に聞きました。

外国人窃盗団による大量盗難を現場や報道で目にするたび、我が国が侵略されているような気持ちになるのは、私だけではないでしょう。特定の商店をターゲットに、幅広い範囲を神出鬼没に暗躍する彼らによる被害は深刻で、捕捉するべく対峙する私たちの感じる恐怖も相当なものです。特に、複数の外国人による犯行を現認した時には、自分の心音が大音量で鳴り響き、温度に関係なく妙な汗が吹き出すほどの精神状態に追い込まれます。見るからに怖い人や複数犯の場合には、店長や店員さんと協力して声をかける手順を踏みますが、手助けしてくれた店長さんが、お酒や化粧品など多数の商品を盗んだ外国人グループの1人に殴られて重傷を負うという事後強盗事件に遭遇したこともありました。

数年前、東京の郊外にあるディスカウントストアで起きた話です。お酒や化粧品、医薬品など、多数の商品をボストンバッグに隠している20代に見える中国人の3人組を発見した私は、彼らが店外に出るというタイミングで店長を呼び出して応援を頼みました。

「若い外国人の3人組なので、複数で対応しないと危ないですよ」
「フン。みんな忙しいし、おれ1人で大丈夫だよ」

少しトッポイというか、なにかと威勢のいい40代前半の店長は、学生の頃、カラーギャングの一員だったらしく、たまにそのことを自慢気に話していました。なので、よほど腕に自信があるのでしょう。応援要請をするよう進言した私を鼻で笑った店長は、俺に任せろという雰囲気を全開にして、たった1人で3人組につかみかかっていきました。

「おい、待て! コラ、この野郎!」

しかし、乱暴に声をかければ、声をかけられた側もそれに合わせた形で対応してきます。なかでも複数犯や外国人に対する乱暴な声掛けは、非常に危険な行為といえ、命懸けの状況を招くことにつながりかねません。案の定、店長がひとり勇ましく声をかけた瞬間に、その悲劇は起こりました。犯人グループの中で一番体格のいい男が、振り向き様に店長の顔面に肘打ちを食らわせたのです。その強烈な一撃で地面に倒された店長の上に跨った男は、さらに店長の顔面を殴りつけると、仲間の怒声に呼応する形で逃走しました。

「大丈夫ですか!?」

あまりの恐怖から制止することすらできなかった私が、犯人を追うことなどできるわけもありません。顔を押さえて呻く店長に駆け寄り、そっと手を離してケガの状態を確認すると、あまりの状況に思わず悲鳴が出ました。左目の眼球が、通常ではあり得ない位置に零れ落ちていたのです。

救急病院に搬送された店長は、眼下底骨折と診断され、すぐさま緊急手術が施されました。全治6カ月の重傷です。容態が落ち着いた頃を見計らって見舞いに行くと、目の下に風船のようなものを入れて手術したと聞き、その痛みは凄まじいものだったと話していました。その一方、警察の緊急配備を掻い潜った犯人たちは、身元の特定にも至らないまま、いまも逃げ果せています。盗まれた商品も持ち去られてしまったので、まさに踏んだり蹴ったりの状況といえ、保安人生の中でも忘れられない嫌な思い出となりました。
(文=澄江、監修=伊東ゆう)

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