NHK朝ドラ『まんぷく』のモデルは、20世紀もっとも偉大な商品を開発していた?


 NHK朝の連続テレビ小説『まんぷく』の放送が10月1日から始まる。

朝ドラの多くは女性が主人公で、実業家の妻や創業者をモデルにした作品が少なくない。たとえば、『マッサン』(2014年度下半期)は、ニッカウヰスキーの創業者・竹鶴政孝の妻、竹鶴リタ、『わろてんか』(17年度下半期)は吉本興業の創業者・吉本せいがモデルだ。

『まんぷく』は、日清食品ホールディングス(HD)の創業者である安藤百福(ももふく)の妻・仁子(まさこ)がモデルである。ヒロインを安藤サクラ、その夫を長谷川博己が演じる。失敗を繰り返しながらインスタントラーメンを完成させるまでを描く。

8月25日は「即席ラーメン記念日」だった。1958年のこの日、百福が世界初のインスタントラーメン「チキンラーメン」を発売したことに由来する。百福が発明した「国民食」は、独自の進化を遂げながら世界へ広がった。8月22、23日に「世界ラーメンサミット」があり、即席麺の将来について意見が交わされた。

「世界ラーメンサミット」は1997年以降、世界各地で開かれ、今回が9回目。日本のほか中国やタイ、インドネシアなど16カ国から延べ300人が参加した。今年は、チキンラーメン60周年にちなみ、発祥の地である大阪が会場となった。

即席麺の業界団体である世界ラーメン協会(会長:安藤宏基・日清食品HD社長)によると、2017年に世界で消費された即席麺は1001億食。08年に比べて1割増えた。地域別では、中国・香港が389億食と断トツ。次いでインドネシアの126億食。日本は56億食の3位で、全体の5%強にすぎない。

すっかりインスタントラーメンは「世界食」となったが、発祥の地の日本では存在感が低下している。

「世界市場で最大のシェアを持つのが台湾の頂新国際集団だ。中国で即席麺の代表格である『康師傳(カンシーフ)』を傘下に抱え、英調査会社ユーロモニターインターナショナルによると金額ベースのシェアは15%。次いで日清食品HDが12%、インドネシアのインドフード・スクセス・マクムルの7%と続く」(8月25日付日本経済新聞記事より)

世界ラーメン協会の推計によると、誕生100年となる40年後には、新興国での消費が伸びるため、現在の1.5倍に消費が拡大するとみている。

日本では人口減に加え、幼い頃から即席麺に親しんできた世代の高齢化が進み、国内市場は縮小。人口が多い中国や、今後の経済成長が見込める東南アジアなど海外市場の開拓に各社は力を入れている。

●海外市場に熱視線

日本即席食品工業協会の統計によると、17年の即席麺の国内消費は56億食。うちカップ麺が39億食で69%を占める。袋麵は16億食、生タイプは1億食。国民1人当たり年間44.8食を食べた計算になる。

カップヌードル」の日清食品=明星食品、「マルちゃん」の東洋水産、「サッポロ一番」のサンヨー食品=エースコックの3グループを中心に、激しいシェア争いを演じている。

【即席麺の売上高】 ※( )内は前期比(%)
・日清食品…2329億円(+1.9%)
・東洋水産…2020億円(+1.5%)
・サンヨー食品…780億円(+3.8%)
・エースコック…433億円(+3.1%)
・明星食品…415億円(+2.2%)
(日清食品と明星食品は日清食品HDの子会社。エースコックはサンヨー食品の傘下。売上高は18年3月期決算。エースコックは17年12月期決算)

国内シェア4割でトップを走るのが日清食品HD。71年、日清食品が発売した容器入りの「カップヌードル」は、日本人が発明した商品のなかで「20世紀でもっとも偉大」といわれている。

日清食品HDの18年3月期の連結決算の売上高は5164億円(前年同期比4.2%増)、営業利益は341億円(同19.2%増)。

創業事業である即席麺事業は、子会社である日清食品の売上高となっており、売上高は上記の表に記した。営業利益は283億円(同2.2%増)。明星食品は日清食品HDの連結子会社だ。「明星 チャルメラシリーズ」が人気で、売上高は上記の表の通り。営業利益は21億円(同15.2%増)。

日清食品HDの海外事業の売上高は1223億円。連結売上高の4分の1弱。中国市場に力を入れる。17年に最新鋭のカップ麺工場が稼働した。同社は「シーフード味」を主軸に中国の高価格帯市場を開拓してきたが、今、力を入れているのは「とんこつ味」だ。日本の有名ラーメン店と共同開発したカップ麺を中国市場に投入した。

東洋水産の18年3月期連結決算は、売上高が3887億円(同1.6%増)、営業利益は266億円(同9.6%減)。国内即席麺事業は、売上高が1290億円(同2.3%増)、営業利益は83億円(同17.3%減)。海外の売上高は730億円と横ばいで、営業利益は99億円(同15.5%減)だった。

東洋水産は社名の通り、もともとは水産・倉庫業だったが、今や即席麺が営業の柱となっている。主力商品は「マルちゃん赤いきつね」(うどん)、「緑のたぬき」(天ぷらそば)を中心とする和風カップ麺シリーズだ。11年に発売した「マルちゃん正麺」は、生麺本来の味や食感を保つ製法で人気を呼び、袋麺市場が再び活性化した。国内即席麺事業の18年3月期の売上高は過去最高を更新した。

米国の子会社マルチャン・インクは米国1位。メキシコでは9割近いシェアを握る。17年にブラジル子会社を設立した。

サンヨー食品の18年3月期の決算公告によると、売上高は前述の通り780億円(同3.8%増)、営業利益は15億円。68年に「サッポロ一番 みそラーメン」を発売。大ヒット商品となった。「サッポロ一番」開発のきっかけは、全国のラーメン店を食べ歩いた同社専務が、札幌ラーメンに感銘したことによる。袋麺が縮小していくなか、昔ながらの「サッポロ一番」袋麺シリーズは根強い人気がある。

サンヨー食品傘下のエースコックの17年12月期の決算公告による売上高は、前述の通り433億円(同3.1%増)、営業利益は10億円。代表商品は88年に発売した大型容器の「スーパーカップ」シリーズだ。

エースコックはベトナムで5割超のシェアを持つ。香港市場に上場している中国最大のインスタントラーメン企業で、中国本土で5割のシェアを持つ康師傳にサンヨー食品は1999年に出資した。33%以上の株式を保有している。伊藤忠商事も2008年に出資した。

サンヨー食品は台湾の頂新とも提携しており、海外戦略では大手と対等な戦いぶり。ミャンマー市場を狙っている。

ミャンマーでは日清食品が現地の大手と組んで現地生産を始めている。ミャンマーは有望市場になるとみられており、各社が照準を合わせている。
(文=編集部)

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