ZOMBIE-CHANG ターニングポイントを迎えた『PETIT PETIT PETIT』に込められた想い

SPICE

2018/9/7 20:00

2016年よりメイリンのソロプロジェクトとして始まったZOMBIE-CHANG。今まではトラック、リリック、レコーディングまで全て自分で手掛けてきたが、今作はベース、ドラム、ギターといったサポートメンバーを迎え、アレンジなども全員で手掛けたバンドサウンドが中心になっている。彼女の別プロジェクト時代から、個人的に知っているが、サウンドが電子音に変わった事もあり、歌い方なども変化したと感じていた。が、今作ではバンドサウンドの影響もあってか、以前の感情豊かな歌い方も見受けられる。その変化の経緯を聞いていった。また、「愛のせいで」のMVで幼少時のメイリンを父親がホームビデオで撮影していた映像が使われている事もあり、話は幼少時にも遡った。そのあたりの話を聞けたのは、興味深かった。とにかく全てを自分で手掛けたい上に、そこを理解してくれる信頼すべきメンバーやスタッフも揃い、尚一層多くの人に伝えようとしているメイリン。確実にターニングポイントを迎えた素晴らしい作品でのインタビューとなった。是非とも読んで頂きたい。


――今日、初めてお会いするんですけど、昔から僕は大好きで。でも、2016年からZOMBIE CHANG名義で、いわゆる打ち込みで音を作られましたよね。何故そうなったのかから、お伺いしたいなと。

そうなんです。元々、今とは別の形態で音楽活動をしている時期があって、ある日、お散歩で街に出た時に電子音のトラックしか流れてないぞ!と気付いたんです。ファストファッション系のショップは、全部そうだし。その時、イケてる女の子になりたかったので(笑)。じゃあ、街で流れてる、この電子音をやりたいなって。

――確かに街では、電子音の音楽をよく耳にしますよね。それまでは、街で何が流れてるかとかは意識した事はなかったんですね?

はい、全然意識してなくて。自分の気持ちを伝えるだけを考えていたので。精一杯、自分の言葉だけを突き詰めていましたけど、それだけでも仕方ないので。冷静になれてなかったんですよ。音楽は“音”が楽しくないといけないし、そこから、ゆったりとした音になりましたね。そしたら、今までの活動より音楽を作るのが楽しかったし、新しい方向を発見できました。(電子音は)より、ひとりだけで自由に出来るので、色んな可能性も感じましたね。
ZOMBIE-CHANG  撮影=森好弘
ZOMBIE-CHANG 撮影=森好弘

――でも、今回のアルバムは、また生のサウンドに戻りましたよね。それもバンドサウンドに。

去年の夏、代官山UNITでスチャダラパーとnever young beachとやる時に流石にひとりじゃ勝てないなって。それで健ちゃん(ネバヤン鈴木健人)やD.A.N.の(市川)仁也君とやったのが最初のキッカケですね。みんなで音を出したら楽しいなと。ひとりの時はステージでも寂しさを感じていたんですけど(笑)、みんなといると安心感もあるし。MCとかテンパると、ひとりだと笑えないけど、みんながいたら、みんなで笑える。何かライブ中にハプニングが起きても楽しめる。今はハプニングが起きたら、ラッキーだと思っていますね。

――その経緯については他のインタビューでも答えておられましたけど、僕が面白いと思ったのは他の2組に勝とうとしていたのが良いなって。勝ちたいって、かっこいいなって。

本当だ! 何で勝とうとしていたんだろ?! 意味わかんないですよね(笑)。

――いやいや、素晴らしいですよ。バンド対決、対バンなわけですから。

負けず嫌いなんですよね。負けたくない。勝てなくても、せめて対等になりたい。共演って同じ土俵に立つ事ですから。それでひとりじゃ出来ないなって。戦場だと思っていたんですかね(笑)。

――実際ライブでの手応えは、いかがでしたか?

みんなが今まで以上に良かったとか、パワフルで良かったとか言ってくれたのが嬉しくて。エネルギーが出た感じでしたね。

――今回のアルバムも、まさしくパワフルやエネルギーを感じたんです。電子音とバンドを単純に融合させた訳でもないじゃないですか。

はい、エレクトロバンドにはしたくなくて。何か違和感が欲しくて、どう何を合体させたら面白いかを考えてました。

――ZOMBIE-CHANGになってからは、歌い方を電子音に馴染ませる方向でしたよね。

そうですね。今回は馴染ませようとはしてないので。トラックに声を馴染ませようとしていたが、これまでは大きくて。声も張らないし、か細い声でしたから。それは面白くないなと。別にライブでカラオケをやりたい訳じゃないので。エネルギーを観たいし。だから、(音源も)ライブに近くしたくて。でも、馴染ませようとしていたのも凄く面白かったし、その時によるので。

――昔からメイリンさんの感情豊かな歌声が大好きだったし、強烈な個性だと想っていたんです。だから、ZOMBIE-CHANGになってから電子音に声を馴染ませていったのは素敵でしたけど、不思議でもあって。

う~ん、あんまり自分に自信がある訳でもなくて。色々な事をやりたいというコンプレックスがあるんです。小っちゃい時から弱虫で、点数が高くても自信なかったし。夕暮れとかが好きで。別に鍵っ子とかじゃないんですけどね。よく鍵は無くしてましたけど(笑)。ヒグラシの声も好きだし、夕暮れのお腹がギューッとなる感じが好きなんです。下校時に色々な家から御飯の匂いがしてくるのもキュンとしますよね。

――そういう感じが、このアルバムには凄く詰まっていますよね。凄くセンチメンタルだし、凄くノスタルジックですよね。特に、それが表れているのが「愛のせいで」のMVなんですよね。メイリンさんが小っちゃい時にお父さんが撮られていたホームビデオの映像ですよね?

そうです。この曲が出来る前から、その映像をビデオにしようとは言っていて。何となく、この曲で編集してみたら予想以上にはまったんですよね。

――とにかく物凄く愛情をうけて育った事が映像から伝わってくるし、それが曲とリンクもしますし。

父への気持ちでもあるし、母への気持ちでもあるし、恋人への気持ちでもあるし、娘から父母への気持ちでもありますよね。このMVによって、曲に立体感も出来ました。小っちゃい私がハイハイしてるリズムと曲のリズムが合ってたりもしますし。何か運命を感じますね。

――《感情的に怒っている わたしを許してほしい》という歌詞の部分では、小っちゃいメイリンさんが撮影するお父さんのカメラを怒った顔を叩くんですよ。このリンクは鳥肌立ちましたね……。

ほとんど偶然なんですけどね。

ZOMBIE-CHANG 「愛のせいで」

――「愛のせいで」自体、メイリンさんの感情が出てる曲でもあるので、本当に良いMVだなって。

「愛のおかげ」「愛のため」だと私は書けなくて、「愛のせいで」だと照れくさくなくて。“せい”にしちゃうのは楽だし、サンドバックみたいなもので。

――でも、ただ感情をぶつけてるだけでもないじゃないですか。

そうですね。感情的な自分を楽しんでいるし、意外と冷静に自分を見てるのかな。偶然に任せてる感じですよね。基本的に人を傷つける事もないですし、あまり自分の意見も言えないので。

――それなのに今回のバンドのコミュニケーションは大丈夫だったんですよね?

仲良いので、みんな凄くアイデアを出してくれるんですよ。それに私が納得してないと思ったら、そこを察してくれるんです。いい人たちに会えました(笑)。

――後、鳩を頭に乗せたジャケットが素晴らしいですよね! 特典では鳩のシールも付いていて、どこに貼るか考えるだけで楽しかったですし。

嬉しいです! ずっと鳩が好きで、旅行に行っても鳩ばかり写真を撮ってます。犬よりも鳩が好きです! 甘えてこないし、ひょうきんな顔してるし、安心感あるんです。後は、小っちゃい子にも手に取ってもらいたいなとも思ってるんですよ。何か気持ち悪いけど、可愛いみたいなトラウマを与えたくて(笑)。それと大前提として、みんな何でジャケットデザインを自分でしないんだろうと思うんです。私は自分でやりたいので。

――感情的の話にも繋がりますが、全部自分でやりたいと思いながらも、バンドメンバーもそうだし、ちゃんとスタッフとも一緒に活動が出来ていますよね。

不安にならず、人に任せれたのは今回は初めてで。不安は負担になるので、今までは大体の人を疑ってきたんです。一番大事な信頼関係が無いと怖いですし。今回関わってくれた人は、みんな人柄が良くて、スッキリした作品になりましたね。

――今後は電子音、バンドサウンド、特にどっちでいこうかとか考えてますか?

その時に好きな方でですね。混ぜこぜになるかもだし。

――先程、お話した勝ちたいという気持ちは今はいかがですか?

今は勝ちたいというより、今は自分に納得が出来ているので、面白くしたいという感じですね。みんなが笑えるような。小っちゃい時から面白くしたい気持ちはあったし、笑ってもらえるのが第一ですね。だからジャンルとかも気にせずやりたいです。

――ジャンルを気にせずやっても、みんなを笑わしたいという、多くの人に伝えたいという気持ちがあるのはいいですね。

人に伝えたい気持ちは昔からあったし、より楽に今は出来ていますので。今、凄く楽しいんです。

取材・文=鈴木淳史 撮影=森好弘

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