人生の岐路に立って少女たちの心は揺れ動く――ドラマ『チア☆ダン』第8話

日刊サイゾー

2018/9/7 19:00


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誰でも子供の頃には、「◯◯ちゃんみたいになりたい」「あんな仕事に就きたい」という夢を見たことだろう。その夢を持ったまま大人になり、実現させる人もいる。だが、多くの場合その夢は、「進路」という形で軌道修正される。時期的に言えば、中学3年生の高校受験の時、そして、高校3年生の大学受験・就職といった時。何の際限もなく大きく広がっていた夢が、現実を前に矮小化されていくのだ。

ドラマ『チア☆ダン』(TBS系)第8話。主人公わかば(土屋太鳳)たちは、進路を具体的に考える時期に差しかかっていた。

「北信越チャレンジカップ」で優勝を果たしてから3カ月。ROCKETSのメンバーは、9月に行われる「チアダンス関西予選大会」に向け練習を重ねていた。一方で、高校3年生の夏、わかばの周りでは、進路の話が聞かれるようになる。

早稲田の教育学部に行くという麻子(佐久間由衣)、看護師になるため看護学校を受験する望(堀田真由)、美大に行きたいという有紀(八木莉可子)など、みんな具体的な目標に向かって進み始める。夢を追い続ける汐里(石井杏奈)は、チアダンスを続けるために本場・アメリカに留学、茉希(山本舞香)はプロのダンサーになるといい、その覚悟は確かなようだ。

そんな中、わかばは、チアダンスでの全米制覇以外は何も考えていない状態。まるで周りの人たちに置いていかれたような気持ちになる。メガネ工場を営む父(高橋和也)に、「跡を継ごうか」と言ってみるが、「そんな甘い考えでやっていける仕事ではない」と一蹴される。

学生時代の、この取り残されたような感覚は、私にも覚えがある。ぼんやりと、「東京に行って好きなことをしたい」という思いと、「地元に残って平穏な生活をしたい」という気持ちが混ざり合って、自分の将来が決められなかったのだ。正直、その感覚は年をとった今でも残っている。なぜみんなあれほどまで自分の選んだ人生に自信が持てるのか不思議でならない。進路に迷うのは、多かれ少なかれ誰でも通る道だろうが、性格や考え方によって、その大小は違ってくるのかもしれない。

ある日、わかばは、部室の壁に書かれた「You’ll never walk alone」という言葉に目を留める。これを書いた穂香(箭内夢菜)によると、「人生はひとりではない」という意味で、好きな曲のタイトルだという。

これまでドラマの中では、サンボマスターの「できっこないを やらなくちゃ」、THE BLUE HEARTSの「人にやさしく」、SHISHAMOの「明日も」などの楽曲が、ストーリーとリンクした形で、効果的に使われてきた。今回は、初の洋楽。しかも、サッカーファンにはおなじみの曲だ。歌詞の意味を考えながら見ると、また深く物語を楽しめそうだ。

そんな頃、汐里は離婚して別々に暮らす父親(津田寛治)に会うため東京に行く。父の口から出たのは、「一緒にアメリカに行かないか」という誘いだった。「私のことはほっておいて」と言いながらも、早くアメリカに行ってチアダンスをやりたい気持ちが迷いを生じさせる。

早々に福井に帰ろうとした汐里だったが、そこである事件に巻き込まれてしまう。翌日、被害者の男性が「彼女から暴行を受け怪我をした」と言い出したのだ。それは、ネットでも拡散され、学内でも大きな話題となってしまう。暴行が本当だとしたら、ROCKETSが目指している大会にも出られなくなるかもしれない。汐里は詳細を話さず、ひとりで問題を抱えていた。

悩んだ末、汐里は、校長(阿川佐和子)宛てに退部届を提出し、部員たちは動揺する。元々ROCKETSは、汐里が作ったチームだ。その汐里が抜けてしまうということは、部活としても存亡の危機だろう。

父と一緒にアメリカに行くという汐里に対し、わかばは「汐里を疑ったまま別れたくない」と言う。その言葉に、汐里は真実を話し始める。

東京で、偶然にもかつての後輩が男に絡まれているのを見かけた汐里は、彼女を助けようとして、男を押し倒してしまったのだ。「人に迷惑がかかるのなら、自分は部活を辞めたほうがいいと思った」と心情を吐露する。

事実を証明することは難しい。しかし、全てを聞いたROCKETSのメンバーは、口々に彼女を信じるという。話を聞いた、教頭の桜沢(木下ほうか)は、汐里とともに東京に行き、彼女の正当防衛を主張する。

ここで、最初に出た「You’ll never walk alone」が効果的に使われる。それぞれのメンバーが汐里を信じて練習する姿、そして東京で、怪我をさせた相手と立ち向かう汐里の姿に合わせ、歌詞とともに曲が流される。それはまるで、ひとつの音楽映画のクライマックスを見ているかのようだった。

桜沢の働きもあって、正当防衛が証明され、ROCKETSに戻ってきた汐里。父に電話をし、今は日本に残ることを伝えるのだ。

そして、わかばもあらためて、父に「仕事を教えて欲しい」と話す。彼女が本気であることを感じた父は、仕事を教えてくれる。

迎えた大会の日、ROCKETSのメンバーは、今まで以上の一体感を持って、ステージへと踏み出していく。同じ高校に通う、チアダンス部のメンバーとして過ごす時間は少ない。それでも、その残された時間を精一杯取り組もうという思いが、メンバー全員にみなぎっていた。

今回は、大胆な音楽の使い方や、顧問の漆戸(オダギリジョー)が全く出てこなかったことなど、挑戦的な演出の回であったと思う。もちろん、見ている時はストーリーの中に入り込んで楽しめばいいのだが、時に、ちょっと引いた視点で、作り手の意図も考えてみると、ドラマはより面白く感じたりするものだ。

ドラマもいよいよ終盤にさしかかる。ラストに向けて、どんな展開、そしてどんな演出が見られるのか、楽しみに待ちたい。

(文=プレヤード)

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