都内屈指の不人気タウン「尾久」ってどんな街? 東京駅まで14分…なのに誰も降りない

日刊SPA!

2018/9/7 15:53



「次は、おく~。おく~」

上野駅から埼玉県・群馬県・栃木県など北に向かう電車に乗っていると、ふと聞こえてくるこのアナウンス。尾久駅の1日平均乗車人数は9487人(2017年度)で、東京都内にあるJR駅の中ではワースト3位の少なさだ。東北本線、上野東京ラインが停車する駅だが、実際のところ、降りる人はほとんどおらず、ドアの『プシュー』という音だけが車内に鳴り響く。

尾久駅が一体どこにあるのかさえ分からない人も多いだろう。その答えは北区である。上野駅のすぐ近くと思いきや、台東区からは荒川区を挟んで2つ隣に位置するのだ。そんな誰も降りない尾久駅前は一体どんな街なのか?

◆カシオペア号が停まっている“撮り鉄”の聖地

Googleマップで尾久駅を見てみると、ホームの乗り場は2つしかないにもかかわらず何本もの線路が束になっている。ここは尾久車両センターと呼ばれ、JR東日本の車両基地となっているのだ。駅を降りて外から基地を見てみると、2015年まで上野―札幌を繋いでいた寝台特急「カシオペア」の車両があり、カメラを構えている人もチラホラ。そこで、付近にいた尾久駅の男性駅員に声を掛けてみた。

「カシオペアは現在運行していませんが、旅行会社のツアーに参加すればいまでも乗ることができるんですよ。金曜日の夜に上野駅を出発して東北に向かうことが多く、通過する尾久駅には撮り鉄さんたちが結構集まるんですよ。でも車体もかなり古いので、週一回くらいしか走ることができないんです」(男性駅員)

調べてみると多くの旅行会社がカシオペアのツアーを販売している。値段はかなりお高めではあるが、カシオペア号の人気は健在だ。金曜日の夜の尾久駅には夜の中を走るカシオペアを目当てにカメラを持った人々が集まる。尾久駅は鉄道ファンには人気の場所なのだ。

◆高層マンションが乱立。住人は意外と多い

誰も降りない尾久駅前は、それは寂しい風景が広がっているのかと思いきや、人通りはそれなりにある。そして駅から徒歩圏内には高層マンションが立ち並ぶ。建設中のマンションもあるようだ。駅前に店を構える中華料理屋の店主がこう話す。

「尾久駅前はマンションがバンバン建設中でね、住んでいる人は意外と多いんだよ。尾久駅前に店なんか出して大丈夫なのかと思うかもしれないけど、昼なんか客が入りきらないんだから。これでも店を開いてから30年以上経っているんだよ」(中華料理屋の店主)

しかしながらこの店主にも一抹の不安はあるという。

「昔は昼休みのサラリーマンとかがたくさん来たんだけど最近は減ったね。マンションが増えた一方で、企業のオフィスが減っているみたいなんだよ。だからいまは建設現場で働いている男性の客が多い。正直、マンションが全部完成しちゃったらこの店はどうなっちまうんだって心配はあるよ」(同上)

上野駅まで乗車時間6分、東京駅まで14分。アクセスが便利なうえに家賃相場も都内では安め。新宿方面には行きづらいものの、新橋、大手町、丸の内あたりで働く人にとって、立地的にはピッタリかもしれない。

◆駅名は“おく”だけど地名は“おぐ”!

尾久駅前で取材を進めるうちに、あることに気が付いた。それは尾久に住んでいる人々は“おく”ではなく“おぐ”とにごって発音するということだ。駅名は“おく”のはずだが……。駅前にある観光案内所で働く50代の女性に聞いてみたところ、正式な地名は、なんと「おぐ」なのだという。どういうことなのか。

「尾久駅は北区にあるのですが、尾久という地域自体は荒川区にあるんです。そのため駅名を決める際に北区と荒川区の間でひと悶着あり、本当は“おぐ”と読むところを“おく”と読むことで解決したらしいんですよ」(観光案内所の女性)

この駅名の読み方問題には諸説あるとのことではあるが、とりあえず本当の読み方は「おぐ」。生まれも育ちも尾久というこの女性は、「おぐ」と普段から発音するし、住んでいる人々もやはり「おぐ」と言うらしい。

都内に通勤する人々からすると、ぽっかりと穴が開いたような存在である尾久駅ではあるが、降りてみると新しい発見がいくつかあった。もし、仕事が早く終わった日などがあれば、普段は通り過ぎるだけの駅に試しに降りてみるのはどうだろうか。どうせ定期券で降りられるのなら、通勤利用だけではもったいない。<取材・文・撮影/國友公司>

あなたにおすすめ