目指すは”規制”の向こう側!『今田×東野のカリギュラ』は過激さだけじゃない

日刊サイゾー

2018/9/5 17:00


 特にここ数年、テレビは大きな転換期だったと思う。YouTube等の動画サイトでたかだか10年前のバラエティを見ると、現代では明らかにアウトなことを堂々とやっていて驚くのだ。

作り手側と見る側、両者の価値観は、ここ数年で共に大きく変容した。「規制がなくて過激なほうが素晴らしい」とは一概に言えないが、あまりにもな規制(自主規制)に世知辛さを感じることが多いのは事実である。

8月31日より、Amazon Prime Video『今田×東野のカリギュラ』シーズン2の配信がスタートした。「カリギュラ」とは、禁止されるほどやってみたくなる心理現象のこと。地上波では「マニアックすぎて視聴率が見込めない」「コンプライアンス的にNG」「くだらなすぎる」などの理由でボツになった企画を蘇らせるのが、この番組のコンセプトである。

シーズン2は8話まで一挙配信されており(残りの10話は今冬に追加予定)、それぞれの内容は以下である。

・「狩猟をしてみたい」という願望を持つ東野幸治が、プロから狩猟のいろはを学ぶ「狩りシリーズ」。シーズン1で鹿、イノシシを狩った彼による第3弾は「東野、カラスを食う」。

・タレントたちが火だるまになって空を飛ぶ「人間火の鳥コンテスト」。

・美人の嫁を持つ者たちが、嫁の下着を盗む選手権「家庭内下着泥棒グランプリ」。

・元EE JUMPの後藤祐樹氏が生半可なタトゥー娘を叱る「デスペラード ~ならず者よ、正気に戻ったらどうだい?~」。

・地上波の環境の変化で衰退した仕事「特殊効果(特効)」を憂い、バラエティ史上最大規模の爆破をお届けする「特効野郎Aチーム」。

・規制により、過激さを失ったドッキリ企画を物足りなく思う芸能人が自身へのドッキリを考案する「自作自演やらせドッキリ」シリーズに竹中直人が挑戦した「自作自演やらせドッキリ ~俳優編~ 【竹中直人】」。

・芸人の父親にドッキリで美女の誘惑を仕掛ける「私の父は大丈夫!ドキドキ浮キッス」。

・AV界の鬼才・バクシーシ山下監督が、姿を消した元AV女優に謝罪すべく再会を望む「再会 ~地上波では会えないあの人に会いたい~」。

■夫婦愛が深いほど、嫁の下着を盗みにくい


 この番組の仕切り役を担うのは、今田耕司と東野幸治。この人選もうれしい。過激さこそ正義だった90年代、この2人は特に深夜番組で重宝されていた。過激な時代の最も過激な場所で本領を発揮していたレジェンドである。

すでに配信中の8話のうち、往年の深夜番組に最もテイストが近い回は「家庭内下着泥棒グランプリ」だ。

「自分の嫁がはいている下着が評価されることは、夫にとって至福の喜び」

そんな夫の心理を突いた“嫁の下着コンテスト”を開催。審査されるは、夫が自宅からこっそり盗んできた嫁の下着だ。下着を盗む際のドキドキっぷりや、狙いを定めた下着のチョイス等によって夫婦愛の深さを確認する。そんなコンセプトである。

とにかく、くだらなすぎる。バラエティで「くだらない」は、最高の褒め言葉なのだが。

この選手権に挑戦したのは、はんにゃの川島章良、ウーマンラッシュアワーの中川パラダイス、かまいたちの山内健司、馬鹿よ貴方はの平井“ファラオ”光の4人。それぞれ、嫁(恋人)への愛情を隠さないのがほほえましい。当然だ。そういうグランプリなのだから。

「1~2回しか見たことないですけど、(嫁が)Tバック持ってるんですよ。本当、興奮しましたよね。『この子がTバックはくんだ』と思って」(はんにゃ川島)

「この企画がなかったとしても盗んでると思いますよ。それぐらい今、嫁に興奮してるんで」(ウーマン中川)

「ネタだけでは東京で通用しない。嫁の下着、かなり自信あるんで」(かまいたち山内)

「僕、31歳まで童貞で生きてきて、今の彼女が人生で最初なので」(馬鹿よ貴方はファラオ)

愛の深さを測る企画なだけに、ターゲットとなる下着はスペシャルなものばかり。はんにゃ川島が狙うTバックは「今日はエッチOK」という嫁からのサインだそう。ウーマン中川は「脱ぎたて以外は下着じゃない」というこだわりを見せた。かまいたち山内は、初めて嫁を抱いた時に着けていた下着がターゲットである。

加えて、シチュエーションもスペシャルだ。嫁が外出中の隙にこっそり盗むというやり方は、このグランプリでは認められない。家の中に嫁がいるタイミングで、嫁の気をそらしながら目当ての下着をゲットする。それがルールだ。

夫婦間のコミュニケーションが密なほど、下着泥棒の難易度は高まる。引き出しを開け物色する最中、「ねえ~」と話しかけてくる愛妻。普段なら喜ばしいはずなのに、この瞬間だけは障害物となる。いつもと違う自分を気づかれたらどうしよう。泥棒してる現場を見られたらどうしよう。没交渉で自分に興味のない嫁ならば発生しない心配事だ。愛が深いからこそ、構ってくる。ドキドキ=夫婦愛の深さである。

芸人が持ってきた嫁の下着を、今田東野は実際に手で持って審査する。この2人はシビアだ。ある芸人は気を利かせてキレイな下着を盗んできたが、そんな彼を2人は責めた。

「“うわっ!”って、いい意味で引かせてほしかったです。せっかく盗んできたのに!」(今田)

「アンダーヘアあっても、俺怒れへんで。“汚いな”とは言わん!」(東野)

■「東野幸治 vs 熊」に期待!


 この番組は、あからさまに“過激”を狙っているわけではない。番組の総合演出・姉崎正広は「お笑いナタリー」のインタビューで語った。

「『地上波で見られない』を意識していると思われがちなんですが、そんなことはなくて、ネットと地上波それぞれの形態にうまくハマった面白いものをどんどん作っていきたいです」

毎回、違った方向性でネットの特性を生かしている。現代社会を生きる人間が見落としがちな命の重さをストレートに提示する「東野、カラスを食う」。最大公約数が視聴する地上波では扱えない人間関係の歪みを捉えた「再会 ~地上波では会えないあの人に会いたい~」。バラエティでありながら、ベクトルが“笑い”だけに向かっていないのも同番組の特徴だ。

各話のテーマがテーマなだけに、見る人によっては不快さが伴うことも事実。なので、オープニングでは「番組の性質上、ご覧になられる方によっては一部不適切と感じられる場合がございます」とテロップで必ず呼びかけている。

番組の踏み込みの大きさは、視聴者のハートに確実に刺さっていた。シーズン2の初回、今田は番組の反響の大きさについて笑顔で振り返る。

「大阪のうどん屋で座ったら、隣の席の若者が俺に気づかんと“『今田×東野のカリギュラ』って知ってる? めっちゃおもろいで”って!」(今田)

今後、番組は“狩りシリーズ”の決定版「東野、熊を狩る」や、芸人がいかにスリリングな状況で嫁の胸を揉めるかを競う「痴漢グランプリ」の実現を視野に入れているそうだ。

過激だから是なのではなく、規制を緩くしなければ行き着けない地点を目指し続ける。なるほど、まさに「カリギュラ」である。

(文=寺西ジャジューカ)

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