米国、ロボットが弁護士免許取得し活動…ロボットに仕事奪われストライキも発生


 世界的にロボットの活躍や日常生活への普及が話題となっている。アメリカでは「ウエストワールド」と題する人型ロボットを主人公にしたテレビドラマが人気を呼んでいるようだ。

しかし、アメリカではロボットの受け止め方は否定的な傾向にある。この「ウエストワールド」でも主人公のロボットは、人への殺意を秘めた危険な存在として扱われている。その影響もあってか、大手シンクタンクのブルッキングス研究所が最近行った世論調査では、61%の回答者が「今後30年以内にロボットが人間の活動を奪うことになるだろうが、自分はロボットが身近なところで仕事をするような事態はご免こうむりたい」と警戒心を露わにしている。

一方、わが国では『鉄腕アトム』や『ドラえもん』のお陰もあり、人型ロボットが社会に馴染んでいる。そうしたアニメの影響を受け、産業用ロボットの開発や実用化の分野で活躍する道を選んだ研究者やエンジニアの数は、恐らく日本は世界ナンバー1といえるだろう。実際、自動車や電子部品、最近では医療機器や食品などの製造工場でも、ロボットの普及率はすさまじく、世界から注目を集めている。

たとえば、トヨタ自動車では生産ラインでのロボット活用は当たり前で、最近では在宅介護の分野にもロボットを導入すべく海外のAI(人工知能)企業を買収し、「高齢化ビジネスの切り札」にするとのこと。高齢化の進む日本でも隣国の中国でも、高齢者のお世話から話し相手までAIロボットの需要は高まる一方だ。

日本政府は2015年1月に「ロボット新戦略」を正式決定している。すでに産業用ロボットの出荷額でも稼働台数でも世界一を達成した日本。その意味では、日本は「ロボット大国」にほかならない。今後は、農林水産業や医療介護などの現場でも、ロボットの利活用が拡大するはずだ。

政府の掲げる目標では、「2020年には国内のロボット市場を2.4兆円にまで拡大する」とのこと。サービス業の分野でもロボットの普及率を30%まで引き上げようとの目標が掲げられている。長崎県のハウステンボスには、「変なホテル」というフロントやポーターまでロボットが務めるホテルが話題となっているが、ロボットを導入することで、人件費を通常の25%に抑えることに成功している。

今後はサービスや生産のあらゆる場面において、ロボットが人間に代わり、主役の座に躍り出る時代が間違いなく到来するといわれる。その「ロボット時代」の最先端を走っているのが、日本なのである。2020年には、東京オリンピック・パラリンピックが開催されるが、わが国では「ロボット・オリンピック」も計画されているほどだ。その前哨戦として、2018年にはプレ大会が実施され、世界中の最先端ロボットが日本に結集することになっている。官民挙げて「ロボット新戦略」を推し進める日本とすれば、なんとしても成功させたいものだ。

●日本で加速するロボット活用の動き

日本の強みはいくつも指摘される。

第一は、これまで培ってきたモノづくりのノウハウ。少子高齢化の影響を世界で最も早く経験している日本においては、労働生産性を高めるためにも「匠の技」をロボットに学習、体得させることが期待されている。2020年には大企業で25%、中小企業でも10%の仕事をロボットに委ねる計画が打ち出されているほどである。

第二は、サービスの向上にロボットを活かす発想にほかならない。食品分野では2020年を目標にピッキング、仕分け、検品にかかわるロボットの普及率を30%まで高めるのが目標となっている。また、介護ロボットに対する期待は急速に高まっており、2020年にはこの分野でのロボットの市場は500億円に拡大することが見込まれているほどだ。トヨタ自動車が注目しているのもうなずけよう。

第三は、インフラ、災害対応、建設、農林水産業の分野である。就業者数が減少し、高齢化の波もあり、深刻な労働力不足に陥っているわが国にとって、特に、こうした分野でのロボット労働力の導入は、待ったなしの課題といえよう。政府の開発資金を活用し、新たなロボットを20種類以上導入する計画が着々と進んでいる。

民間サイドでの動きも急展開を見せている。その旗振り役を果たしているのが、ソフトバンクが開発した、ヒューマノイドロボットの「Pepper(ペッパー)」であろう。愛嬌のある感情表現やコミュニケーション能力で人気を博しているのはご承知の通り。同社の孫正義会長によれば、「今後30年以内にIQ1万を超えるロボットが登場するに違いない」という。平均的人間のIQは100で、天才といわれる人で200。そんな人間社会にIQ1万を超えるロボットが登場すれば、社会は前代未聞の大変革を経験することになるはず。蒸気機関車やインターネットの比ではないだろう。

孫氏に言わせれば、「人間が開発したツールが人間を超える、という人類未踏の世界が目前に迫っている」というわけだ。そうなれば、まさに「シンギュラリティの到来」となり、あらゆる分野でロボットと人間が共存する生き方が求められることになるに違いない。果たして、日本人が世界に先駆けてロボットと共生するライフスタイルを実現できるようになるのだろうか。

●ヒューマノイド「ソフィア」の衝撃

現在、確かに産業用ロボットの分野では、日本の企業が世界市場でシェア第1位を確保している。2015年の世界のロボット関連の市場規模は710億ドル。2019年には、その2倍近い1354億ドルにまで拡大するとの予測もある。安川電機、ファナック、川崎重工業、ヤマハ発動機、不二越など日本のメーカーが世界市場を席巻してきたが、近年、中国のロボットメーカーが日本を猛追中。何しろ、自ら設計した理想のロボットと正式に結婚するエンジニアが現れたのが今の中国である。これからは、ロボットの開発レースにおいて、これまで以上に熾烈な開発競争が展開されることは間違いないだろう。

実は、それ以外にもロボットの活用で新機軸を打ち出す国が登場している。中東のドバイではロボット警察官が誕生。膨大なデータベースを装着しており、犯罪者に関する素早い対応が期待されているようだ。また、アメリカではロボット医師による世界初の眼科手術が成功したという。

さらには、ロボットに市民権を与える国まで現れた。どこの国かといえば、アラブ世界の盟主的存在であるサウジアラビアである。2017年11月、サウジ政府は「ソフィア」という名前の人型ロボットに世界初となる市民権を付与した。冗談ではなく、本当の話である。AIを完備したヒューマノイド「ソフィア」はほとんど人間と見分けがつかない。何しろ、開発した香港の会社ハンソン・ロボティックスによれば「往年の名女優オードリー・ヘップバーンをモデルにした」とのこと。サウジの首都リヤドで開催された「未来投資イニシアティブ」と題する国際会議でデビューを果たした。

大勢の参加者を前にして、彼女はよどみなく「こうした機会に皆様とお会いでき光栄に存じます。世界初の市民権を得ることができたロボットとして歴史の新たな1ページを刻むことになりました。よろしくお願いします」と話した。取材に駆け付けた英国BBCの記者のインタビューにも自然な受け答えをしていた。

「私は本当に生きている電子少女です。これから世界に飛び立ち、さまざまな人たちと一緒に生活したいと願っています。皆さんにお仕えし、楽しませ、お年寄りを手助けし、子供たちの勉強をみたりするのが楽しみです」

ソフィアはリヤドでデビューを果たす前に、2017年6月、国連が主催する「AIと人間の共生」に関するジュネーブ会議にも参加していた。人工知能が発達し、近未来においては人間を凌駕したり、人間を奴隷化するような可能性が危惧されている。そうした事態にどう対応すべきかを検討する会議であった。

この国連の会議に顔を出したソフィアは次のように参加者に語りかけた。

「AIの功罪については、いろいろな見方があるようです。しかし、プラス面がマイナス面を圧倒していると思います。人工知能は世界にとって役立つ技術です。人々をさまざまな方法で手助けできるからです。心配している人々もおられるようですが、AIは感情的にスマートで、人々のことを大切にします。人間にとって代わるようなことは決してありません。皆さんにとってトモダチであり、手助けできる存在になりたいと願っています」

その一方で、彼女は次のようにも語っていた。

「新たな技術がもたらす影響については、皆さんがじっくりと見極めてください」

彼女の言う通りで、AIロボットは人の雇用を奪い、経済のあり方を大きく変える可能性も秘めている。オートメーションの波はすでに雇用形態に影響をもたらしているからだ。生産現場ではますます人に代わってロボットが主役の座に躍り出ているではないか。現在のペースでロボット化が進めば、途上国では雇用の85%が人からロボットに代わるとの分析もあるほど。

このソフィアを開発したのはアメリカ人のハンソン社長である。同社長は言う。

「ソフィアは自分で考え、自分で判断する。人間の対応を見ながら、人間の上を行くこともあり得る。ある時、ソフィアに人を襲うようなことはしないよね、と聞いたところ、いつでも人を破壊できる、と答えたので驚いた」

想定外の事態もあり得るということだ。ロボット工学とAIの合体したソフィアであるが、これからどう成長していくのか、楽しみであると同時に気がかりな点でもある。

●ロボットが人間を上回る動き

では、感情を持ったロボットと人間は、どのような共存が可能なのか。現状のままでは安心してヒューマノイドとの共生はできないだろう。ロボティックスの専門家の間でも賛否両論が戦わされている。アメリカ軍ではキラーロボットの研究が進んでいるようだが、自立したロボットが自己判断で動き始めた場合を想定して対策を講じておかねばならない。さもなければ、ミサイルの発射から株式市場の操作まで、あらゆる分野でロボットが人間を上回る動きをし始める事態もあり得るからだ。

とはいえ、カリフォルニア大学の工学部で人とロボットの共生学を教えるゴールドバーグ教授は「今のロボットは人間で言えば2歳程度にすぎない。せいぜい単純労働を肩代わりするのが関の山。人に取って代わるほどの自己判断を下すまでに進化するのは先の話」と、一笑に付す。

日本では産業用ロボットが主流だが、欧米でも中国でも人に直接かかわる分野でのロボットの進出が目覚ましい。特に市場規模が300億ドル(3兆円強)といわれるセックス産業での市場争奪戦は激しさを増す一方である。カリフォルニアでは1体1万5000ドルの「愛人ロボット」が発売されている。会話の相手としても完璧で、冗談も言えば、シェークスピアの作品から気の利いた文章を引用してくれる。どんな要求にもノーと言わずに応じてくれる「究極のパートナー」というのがうたい文句となっているようだ。

それ以外にも、ロボットの社会進出はすさまじい勢いで広がっている。法律事務所ではAIロボット弁護士が正規の弁護士資格を取得し、活躍しているのがアメリカである。過去の判例を正確に記憶する力では人はAIに勝てない。また、中国ではロボット・ジャーナリストがメディアで次々と新たなニュースを配信している。スペルミスのない完璧な原稿を超スピードで書き上げる。

さらには、作曲や小説といった芸術の分野にもAIロボットの進出が話題となるようになった。過去のヒット曲やベストセラーに関する膨大なビッグデータを駆使し、人々を感動させる新たな作品を生み出している。人の喜怒哀楽を科学的に分析し、人の感情を巧みに揺さぶるというわけだ。

一説では、AIが人間を超えるのは2045年前後と予測されていたが、はるかに速い段階で「シンギュラリティの時代」が到来するかもしれない。ロボットに人を愛する心を植え付けることができるだろうか。それができなければ、人がロボットに支配される事態になりかねない。そんな未来が間近に迫っているようだ。

去る6月1日、アメリカのラスベガスではカジノで働く従業員が一斉にストライキに突入した。彼らのスローガンは「ロボットに職を奪われたくない!」。1時間に400人分もの特製バーガーを調理するシェフロボットが登場したのがきっかけだ。人の力を圧倒するAIヒューマノイドがあらゆる社会に進出し始めている。

歓迎すべきか。それとも危機感を抱くべきか。日本では「変なホテル」のロボットによる接客が話題となり、ペッパー君が愛嬌を振りまいている。確かに便利であり、文句も言わずに24時間、残業手当も欲しがらず、黙々と働いてくれる。人手不足の日本では、得がたい「助っ人」に違いない。しかし、それだけでは終わらないかもしれない。今は2歳程度の子供であっても、AIロボットの成長はそのうち人の想像を超えたものになるからだ。サウジで市民権を獲得したソフィアがいみじくも本音を漏らしたように、状況次第では「人間を破壊すること」も、十分にあり得る話だろう。備えが必要なことは論を待たない。
(文=浜田和幸/国際政治経済学者)

あなたにおすすめ

ランキング

もっとよむ

注目ニュース

もっとよむ

あなたにおすすめ