翻弄ラブコメと思いきや、もののけ怪異炸裂!「あの人の胃には僕が足りない」の特別感


あの人の胃には僕が足りない(1)』(著:チョモラン)

おっきくて積極的な女の子に、ちっちゃくてシャイな男の子が迫られる純情ラブストーリーには、ひとつの郷愁があるものだ。そして、無邪気な年上の彼女に、純情な年下彼氏が翻弄される姿にも、特別な胸キュン感があるものだろう。



そこにプラスαで、「喰うか、喰われるか」という命がけの恐怖があったとしたら……。比喩じゃなく、「食べちゃいたいくらいキミが好き」と頬を染める彼女から、リアルに喰われそうになる状況があったら……。

吊り橋効果でもっとドキドキしちゃうんじゃなかろうか!?
『あの人の胃には僕が足りない』は、そんな新しい怪異ファンタジーだ。

主人公の舟次蒔江は、ちっちゃくてシャイで料理が得意な男の子。そんな彼に、学校でいつも話しかけてくるのが、おっきくてかわいくて、いつもお腹を空かせている先輩・満腹さちだった。





淡い恋心を抱く蒔江が手作りのクッキーを渡せば、さちは顔を赤らめて大喜びし、内緒話のように無邪気に顔を寄せ、「いい匂い」と囁くのだ。ラブコメ好きには「待ってました」な振り回され展開!



しかし、そんなドキドキ・エピソードからスタートし、平和な学園ラブコメかと思わせて、物語は突如、不気味な世界へと一転する。

実は蒔江には、幼い頃から正体不明の異形の者「ワタリ」を寄せ付ける体質があったのだ。





誰にも話せないこの秘密を抱えたまま、ひたすら無視することでやり過ごしてきたが、さちといいムードになっていたその日、ついにワタリと目が合ってしまう。身の毛もよだつ恐怖から蒔江を救ったのは、意外にもさちだった。

突然、巨大な魚のような未知の生き物に「ぐももも……」と変身。そして、頭からバクッとワタリを喰ってしまうのだ。

ほんわかラブコメだったはずが、ゾクッとさせる不穏な世界へと急展開!!





可愛い彼女の正体もまたワタリであり、蒔江が放つ「いい匂い」は、ワタリたちにとっては「食べたくなっちゃう、おいしそうな匂い」。そして、彼女には人間の姿に変化できるワタリとして、この街を守るというミッションがあった。

ここから彼女と彼の
「キミを守りたいし、食べたくない。でも、おいしそう」
「食べられたくはないけど、彼女に手料理を食べてほしい。だから一緒にいたい」
のドキドキ攻防戦が始まるのだ。

甘々な日常の空気と、ギクリとするような異次元の怖さが交錯する、ちょっと不思議なラブストーリー。人間・蒔江と、人ならざる者・さちは、恋と本能のはざまで葛藤を抱えながら、どこまで近づくことができるのか。





新たな異類婚姻譚とも言えるこの物語、普通のラブコメでは物足りないあなたにもオススメだ。

本日の1言:「可愛い子には気をつけろ。美人局、絵画商法、腹ペコの先輩」

レビュワー

ゆたかまり


貸本屋店主。都内某所で50年以上続く会員制貸本屋の3代目店主。毎月50~70冊の新刊漫画を読み続けている。趣味に偏りあり。

https://note.mu/mariyutaka

本の紹介

あの人の胃には僕が足りない(1)


あの人の胃には僕が足りない(1) 表紙画像

料理上手な中学生・蒔江は恋をしていた。お相手は高等部の先輩・満腹さち。彼女の意外な一面、それはいつも空腹なこと。
「料理で胃袋をつかんで、先輩とお近づきに!」
……なんて思っていた蒔江の初恋は、さちの重大な「秘密」のせいで、命がけの一大ラブ・ストーリーへと変貌を遂げる。異形の年上彼女×尽くし系年下彼氏が織り成す、異“食”の恋愛×怪異ファンタジー!

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