“8人の峰不二子”が活躍する『オーシャンズ8』女を消耗品扱いにしてきたハリウッドへの挑戦状!!

日刊サイゾー

2018/8/12 00:00


 サンドラ・ブロック、ケイト・ブランシェットら8人の女たちが完全犯罪に挑む『オーシャンズ8』。ジョージ・クルーニーが主演した『オーシャンズ』シリーズの11年ぶりとなるスピンオフ作品だが、メンバーが全員女性となったことで彼女たちが犯罪を企てる動機が明白となっている。男性社会の中で培われてきた常識に縛られることなく、いつまでも輝き続ける女でありたい。そのために彼女たちは、カルティエの地下金庫から世界最大のダイヤモンドを盗み出すことに挑む。もちろん、血はいっさい流すことなく。絶対不可能なことを、頭脳とスキルと大胆さで覆してみせる。社会の片隅で燻っていた女たちは、俄然キラキラと輝きを放ち始める。

犯罪グループを率いるデビー・オーシャン(サンドラ・ブロック)は、前シリーズの主人公だったダニー・オーシャンの妹という設定だが、前シリーズはさほど深くは関係していない。社会派コメディ『デーヴ』(93)の脚本などで知られるゲイリー・ロス監督が発案した新作は、むしろフランク・シナトラが主演したオリジナル作『オーシャンと十一人の仲間』(60)へと原点回帰させた感が強い。『オーシャンと十一人の仲間』は戦争から帰ってきたものの、平和な社会に居場所のない男たちがカウントダウンパーティー中のカジノ襲撃に情熱を燃やす物語だった。デビーをはじめとする新生オーシャンズも、自分たちの居場所を求めて大勝負に臨むことになる。

5年の刑期を終えて仮釈放されたデビーは、かつての仲間だったルー(ケイト・ブランシェット)と再会する。刑務所の中でずっと考え続けてきた犯罪計画を実行に移すためだった。酒場を経営していたルーだが、酒を水で薄めて売るセコい仕事に退屈しており、デビーの計画に乗ることに。今回の狙いは、カルティエの地下金庫に眠る世界最大のダイヤモンドだった。時価1億5000万ドル。美しいものを愛するデビーにしてみれば、人類の財産ともいえる世界最大の宝石を、警備のために人目に触れないようにしていることのほうが遥かに大きな罪だった。だが、厳重なセキュリティーが施されたお宝を、どうやって奪おうというのか? そこでデビーが目を付けたのが、ファッションの祭典「メットガラ」の今年のホスト役に選ばれている超人気女優のダフネ(アン・ハサウェイ)だった。

まずデビーたちは、有名ファッションデザイナーであるローズ(ヘレナ・ボナム=カーター)に近づく。かつて一時代を築いたローズだが、今は落ち目で借金に苦しんでいた。そこでデビーたちはSNS上で“一周回って、これからはローズが新しい”と煽りまくる。情報に敏感なダフネがさっそく喰い付き、今年のメットガラ用の新作ドレスのデザイナーにローズを指名。ローズはダフネのために最高のドレスを用意する。そして、そのドレスを完璧に着こなすためには、世界最大のダイヤが必要だった。ダフネからの強い要望で、カルティエはメットガラ限定で特別に世界最大のダイヤを貸し出すことをOKする。デビーたちが撒いたエサに、しっかりとカモが掛かってくれた。後は全世界に生中継されるメットガラのパーティー中に、どうやってダフネの首からダイヤのネックレスをいただくかである。

物語の前半は、サンドラ・ブロックとケイト・ブランシェットの2大ベテラン女優が、人気のピークにあるアン・ハサウェイをカモにしようと企む形で進んでいく。厚化粧でオバハン度高めのサンドラとケイトが、テレビの中で周囲にちやほやされているアンハサを睨んでいる様子は、相当におっかない。このシーンを観ていて思い出すのは、ドキュメンタリー映画『デブラ・ウィンガーを探して』(02)だ。女優のロザンナ・アークエットが監督したもので、“ハリウッドでは40歳を過ぎた女優はお払い箱になる”という映画業界の不文律に疑問を感じ、同じ問題に直面する女優たちをインタビューして回っている。メリル・ストリープのように年齢を重ねても映画に主演し続ける大女優もいるが、それは極ひと握り。男優たちが年齢にさほど関係なく活躍しているのに比べ、女優には賞味期限が大きく付きまとう。40代を迎え、演技力に磨きが掛かり、女としての深みも増しているのに、ハリウッドでは居場所がなくなってしまう。年齢を感じさせないよう、多くの女優は美容整形に励むことになる。

デブラ・ウィンガーがハリウッドから一時的に引退した1990年代に比べれば、結婚&出産などを経験した女優がハリウッドで活躍を続けるケースは増えてはいる。それでも、『ゲティ家の身代金』(17)では主演女優のミシェル・ウィリアムズよりも助演男優マーク・ウォールバーグの出演料のほうが遥かに高いなど、女優に対する不当な扱いはまだまだ多い。さらに今回はオーシャンズの新しいメンバーとして、カリブ出身のアーティストであるリアーナ、アジア系の若手女優オークワフィナ、インド系コメディエンヌのミンディ・カリングといったマイノリティー層の女性たちが加わっている。さながら今回の『オーシャンズ8』は、R40女優&マイノリティーたちのハリウッドへの挑戦状でもあるかのようだ。

クライマックスは、いよいよNYのメトロポリタン美術館で開催されるメットガラのパーティー会場へ。それまでオバハンっぽいメイク&ファッションだったデビーたちだが、一転してゴージャスにドレスアップして夜のメトロポリタン美術館に乗り込む。まるで『ルパン三世』の人気キャラ・峰不二子を思わせる鮮やかな変身ぶりだ。権力や男たちになびくことなく、自分の意思で行動する女の強さと気高さがデビーたちにはある。

仮釈放中の身であるデビーは今回の計画に失敗して捕まれば、長期刑は免れない。さすがのデビーも緊張を隠せない。計画を実行する直前、ひとりになったデビーは自分自身に向かって呟く。「私自身やみんなのためにやるんじゃない。世界のどこかで犯罪に憧れる8歳の女の子のためにやるのよ」と。映画の中で描かれる犯罪は、一種のイリュージョンだ。夢見ることすら難しくなった世知辛い世の中で、みんながアッと驚くイリュージョンを打ち上げたい。常識や偏見に縛られることなく、8人の女たちは自分らをダイヤ以上に輝かせる壮大なイリュージョンに挑戦する。
(文=長野辰次)

『オーシャンズ8』
監督・脚本/ゲイリー・ロス 脚本/オリビア・ミルチ プロデューサー/スティーブン・ソダーバーグ 
出演/サンドラ・ブロック、ケイト・ブランシェット、アン・ハサウェイ、ミンディ・カリング、サラ・ポールソン、オークワフィナ、リアーナ、ヘレナ・ボナム=カーター
配給/ワーナー・ブラザース映画 8月10日(金)より全国公開
(C) 2018 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC., VILLAGE ROADSHOW FILMS NORTH AMERICA INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC
http://wwws.warnerbros.co.jp/oceans8

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