発達障害の当事者が考えた「弱者のための仕事術」

日刊SPA!

2018/8/10 15:37



かつては未成年の問題だと思われてきた発達障害が、「大人の問題」として急速に認知され始めている。メディアでの露出も増え、自分や周りの人間に対して「実はそうなのかも」と思った人もいるのではないか。果たして「大人の発達障害」を抱える社会人たちの現状とはどんなものなのか。発達障害の当事者が見つけた「仕事術」に迫る。

◆発達障害の当事者が考えた究極の「弱者のための仕事術」

話題の一冊、『発達障害の僕が「食える人」に変わったすごい仕事術』は、当事者でもある著者・借金玉氏が、自身の経験をもとに身につけたライフハック術を記したものだ。自称“日本一意識が低い自己啓発書”を書き上げるまでには、多大な苦労があったと語る。

「大学時代にADHDの診断を受けるも、持ち前の面接力の高さで大手金融機関に入社できました。でも、新人に与えられる誰でもできる雑務の時点で、発達障害特有の“仕事の全体像が見えないと手をつけられない”という症状が災いし、明らかに出遅れてしまった。おまけに人間関係が壊滅的になり、2年も持たず職場を敗走しました」

その後、出資金をかき集め起業するも失敗。30歳の節目に無職、多額の借り入れを抱えたこともあり「借金玉」を名乗り始めた。

「ジョブズなど偉人たちも発達障害だという噂があり、自分にも“特別な才能がある”と信じた節がありました。でも、見事に起業に失敗した通り、結果は違った。その後には二次障害のうつ病まで患い、自分が“普通ですらないこと”を受け入れるのに時間は掛かりましたが、『誰も救ってくれない世界で生きていかなくてはいけない』という覚悟はできましたね」

現在も薬で症状を抑える生活は続いているが、それでも都内で営業マンとして勤務している。そんな日々のなかで借金玉氏が練り上げていったのが、著書にもある仕事術の数々だ。それらはすべて「自分は人と同じようにできない」ことを前提にしているという。

「言うなれば究極の弱者のライフハックです。例えば鞄の中に必要なものをすべて詰め込む『鞄ぶっこみ術』も、絶対に自分は忘れ物をするとわかっているから。昔はいろんな整理術とか自己啓発を試してみましたが、全部ダメでした。だから『自分はできない』ということを認めて、そのうえですべきことをするんです」

なくすことを前提に「最近購入したバイクの合鍵を6個作った」という借金玉氏。ほかにも、名刺はケースごと3つ持ち歩き、スマホの充電もし忘れるのでモバイルバッテリーは常に2個携帯。徹底して“もしものとき”に備えている。そうして初めて、一般社員として社会人生活を続けられるという。

「発達障害は昔よりも認知されるようになりましたが、それでも普通のサラリーマンが気楽に話せる場なんてない。僕の本が売れたのも、それだけ『実際にはどんな生き方をすればいいのか?』と、生の情報を知りたい人がいたからでしょう。発達障害の人の中には『社会は助けてくれない』と、恨みすら持っている人もいます。けど、それだと意味がないと思うんです」

借金玉氏の実体験が詰まった著書は、まさに「今の時代が生み出したヒット作」と言えるだろう。

《借金玉氏考案の仕事術3選》

1.必要なものはすべて鞄にぶっこんで持ち歩く

仕事道具、身だしなみグッズなど、生活に必要なものはすべて鞄にぶちこむ。大容量のサイズを選ぶのはもちろん、開口部は広く、仕切りも豊富なものを選ぶ。入れ替えると紛失のタネになるのでそのほかの鞄は廃棄する

2.忘れ物を防ぐため予備を大量に購入

仕事で必要なものはすべて大量購入し、自宅と会社に保管。小物は鞄に入れておけば忘れ物はしないで済む。借金玉氏は「絶対に夜に充電し忘れる」という理由でモバイルバッテリーを常時2つは持ち歩いているそうだ

3.顔と名前を覚えるため名刺に「あだ名」を書く

記憶力に自信がない借金玉氏は上司の顔すらおぼろげのため、貰った名刺にあだ名を記していく。キャッチーなほうが視覚情報として結びつきが強くなるため、「カマボコ顔のメガネおっさん」など楽しげなものを書くとか

【借金玉氏】’85年生まれ。ADHDの発達障害者。早稲田大学を卒業した後に金融機関に勤めるも“敗走”。現在は営業マンとして勤務している

― 大人の発達障害 ―

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