H&Mの抱える“3つの地雷”! 「流行遅れ」「安くない」「場末感漂う店内」停滞の理由とは?


 「ファストファッション」という通称で呼ばれる、複数の外資系低価格グローバルSPA(製造小売りのこと。小売業が製造まで手掛ける場合と、製造業が小売りまで手掛ける場合の両方がある。自社のオリジナル商品の開発を行い、自社で販売する方法)ブランドが日本に上陸して早くも10年が経過しました。しかし10年もたつと、上陸当初のブームは少し変質してきています。ブランドごとの業績格差が生まれつつあり、すっかり消費者に定着したブランドがある一方、苦戦が取り沙汰されるブランドも現れ始めました。ただ全般的に共通しているのは、上陸当初のブームは沈静化したという点です。実際に、トップショップやオールドネイビーのように撤退してしまった外資グローバルSPAブランドも珍しくない中、今回はH&Mを取り上げてみたいと思います。

日本1号「銀座店」はなぜ閉店したのか?


 H&Mの日本1号店だった銀座店が7月16日で閉店しました。ファッションニュースサイト「WWD JAPAN」に掲載された「『H&M』が銀座店を閉店 5000人が行列した日本1号店、ファストファッション・ブームの震源地」という記事には、

「17年2月から2代目のH&Mジャパン社長を務めるルーカス・セイファート(Lucas Seifert)社長は、『10年前は、日本を代表する好立地でいい形のスタートが切れた。ただ時代が変わり、状況が変化したので、10年間のリース契約が切れるのに伴い更新せず、閉店することを決めた』と明かす」

とありますが、売れ行きが好調なら契約を更新したはず。更新しなかったことを見ると、「捨てても惜しくはない」という状況だったのではないでしょうか。

また、同記事では、H&Mの業績について、

「(国内店舗数は)17年11月期末で82店舗となり、売上高は48億1900万スウェーデンクローナ(約629億円)。16店舗の新規出店にECも加わり売上高こそ前期比4.7%増とプラスだが、既存店売上高はマイナスの状況だ」

と説明されており、上陸当初の勢いは完全になくなっていることがわかります。H&Mが苦戦しているのは日本だけではなく、アメリカでもそうだと報道されているだけに、世界的に見てもH&Mの業績はあまり芳しくないということでしょう。2016年度までは好調だったものの、17年から苦戦が始まり、18年現在もその傾向が続いているようです。

国内の店舗の様子を見ても、ユニクロやジーユーに比べて店内が閑散としていることがまま見られます。例えば、大阪・心斎橋筋商店街には、ユニクロとH&Mが通路を挟んだ向かいにありますが、ユニクロはいつ行ってもにぎわっているのに対し、H&Mが混雑している様子はあまり見かけなくなりました。同じ心斎橋筋商店街のジーユーも、毎日、多くの客入りが見られますし、商店街自体の人通りは海外からの旅行者が増えに増えているため、朝から晩までごった返しています。決して人通りが少ないわけではないのに閑散とすることが多いのは、つまるところ、それだけH&Mのブランド力の低下が顕著だといえます。

つい先日、筆者が平日夕方(午後6時30分頃)に両店を覗くと、仕事帰りの人でにぎわっているユニクロに対し、H&Mの閑散ぶりが対照的で驚きました。とても同じ立地の店とは思えません。ではH&Mが苦戦に転じた原因は何でしょうか? 3つの落とし穴を考えてみたいと思います。

1.ジーユーなどの国内低価格ブランドに負けた!?


 2009年の上陸当初は破竹の勢いでしたが、実は15年頃からその勢いは如実に鈍っていました。代わって急激に売上高を伸ばしたのがジーユーです。10年に「トレンド対応ブランド」へ転身してから急激に売上高を伸ばし、12年から16年までで実に約1300億円も売上高を伸ばしています。これに加えて、「アースミュージック&エコロジー」「アメリカンホリック」などを展開するストライプインターナショナルや、「ローリーズファーム」「グローバルワーク」などを展開するアダストリアホールディングスなども売上高を大幅に伸ばしています。H&Mは、これらの国内低価格ブランドに客を奪われたと考えることができます。

なお、ストライプインターナショナルの単体売上高は10年には400億円だったのが、17年1月期には990億円にまで拡大。また、アダストリアホールディングスは18年2月期に連結売上高で2200億円の巨大アパレルに成長しました。加えて、ユナイテッドアローズの低価格ブランド「コーエン」も好調ですし、アーバンリサーチは低価格ブランド「センスオブプレイス」の店舗数を40店舗以上にまで増やしています。H&Mに限らず、フォーエバー21などの外資低価格SPAが停滞気味である背景には、消費者の“日本ブランド”に対する信頼感に勝てなかったという面があるのかもしれません。

2.実は“ファスト”ではなかった!?


 H&Mジャパン社のクリスティン・エドマン前社長(16年12月退任)は、いつも「H&Mはファストファッションではない」と発言していました。これは、価格が安いことを否定しているのではなく、「企画が速い(ファスト)」と言われることを否定していたのです。ビジネスニュースサイト「BUSINESS INSIDER」の記事によると、「H&Mは、デザインから製造まで最大6カ月を要する」とあり、「2~5週間」といわれるZARAに比べると、確かに格段に長い時間がかかっているのがわかります。これはつまり、期中での小刻みなトレンド変化に対応できないということです。

このように、実はファストではない点が、米国では“H&M苦戦の要因”として挙げられているそうですが、現在、世界2位のH&Mの売上高を猛追している世界第3位のファーストリテイリングの主力ブランド「ユニクロ」は、1年前から商品の企画作りを開始します。にもかかわらず、ユニクロが増収し続けていることを考えると、H&Mは企画から製造までのサイクルが長いことというより、企画の精度が低いことが問題といえます。H&Mも、1年前から企画してヒットを外すことが少ないユニクロ並みの企画精度を身につけることができれば良いだけのことです。消費者も、“何となく流行からズレてる”ものばかりが店頭に並んでいては、足が向かなくなるのではないでしょうか。

今のH&Mの商品を手に取っても、あまり驚きがありません。確かに値段はそこそこに安いのですが、驚くほど安値ではないのです。海外での価格相場感はわからないものの、日本では格安衣料品がほかにもたくさんあるため、H&M程度の価格では「驚くほど低価格」とは思えなくなりました。例えば、ジーユーの投げ売り値下げ品390円/590円/790円の方がよほど衝撃的な価格でしょう。また品質面でも、H&Mの商品は決して高いとはいえず、ユニクロには遠く及びません。個人的にはジーユーにも劣るのではないかと見ていますが、フォーエバー21よりはマシといった印象です。

以前でしたら、商品のデザインが可愛い、変わっているといった「見た目の良さ」はありましたが、最近では、国内低価格ブランドの方が可愛いデザインの服が多い。しかも、H&Mはこのところの商品はベーシック志向が強まっているようにも見え、ベーシック品ならば、何もH&Mで買う必要もなく、品質の高いユニクロでも十分なのです。

さらにいえば、店作りも随分と冴えない印象。セール品コーナーは、随分と乱雑に服が積み上げられています。棚の上もぐちゃぐちゃだったり、ハンガーラックにギチギチに商品がかかっていたりして、これでは場末の投げ売り屋とあまり変わりません。それだけ商品が動いていないのかもしれません。こんな店作りでは、消費者も購買意欲をそがれ、売れる物も売れないのではないでしょうか。「売れない→在庫過剰→過剰陳列→だから売れない」という悪循環に陥っているのではないかと感じます。

好調だった頃の戦略が、一気に通用しなくなるのは、H&Mに限らず、どの企業でもありますが、そうなると“暗いトンネル”を抜け出すのに一苦労します。「新しい必勝パターン」を構築するには大変な労力と資金が必要となるだけに、H&Mがこの危機を乗り越えられるかどうかは、まったくの未知。外野から見守るほかありません。
(南充浩)

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