odolがsébuhirokoを迎えた自主企画『O/g』は音楽で共振する一夜だった

SPICE

2018/8/9 20:00

odol LIVE 2018 “O/g-7” 2018.8.3 表参道WALL&WALL


odol主催の自主イベント『O/g』。「Overthinking / great Ideas」を意味するこの企画ライブにはこれまでLILI LIMITやKing Gnu、LUCKY TAPES、向井太一、今年6月からは4ヶ所でのツアー形式をとり、3会場に集団行動が出演したほか各会場にiri、mol-74、Predawn、STEPHENSMITHが出演。odolが目指す言葉やジャンルを超えたところで共振する音楽との出会いを実現してきた。そして今回はこの日を含め、8月のライブでソロ・ライブを一旦終了するというsébuhirokoをゲストに迎えた。

sébuhiroko 撮影=今井駿介
sébuhiroko 撮影=今井駿介

会場の表参道WALL&WALLはステージと音響設備を備えた多目的スペース。4メートルの高い天井を部分的に仕切る壁がアーティスティックな会場だ。sébuhiroko名義での東京ラスト・ライブを目的に来場した観客も多く、開演前は静かな緊張感に包まれた。フロアと正面から向き合う態勢でピアノを弾き、世武自身が作った様々なエレクトロニクスや打ち込みのサウンドは、マニュピレーターとして下村亮介が担当。歌とピアノに集中する彼女の核の部分がむき出しになる編成と言えるだろう。sébuhiroko名義での2枚のアルバム『L/GB』『WONDERLAND』から様々なカラーの楽曲がセットリストに組み込まれていた。

sébuhiroko 撮影=今井駿介
sébuhiroko 撮影=今井駿介

声を楽器のように発し、ピアノやエレクトロニクスとエッジーなビートと並列するように表現する「John Doe」や「April 11」といった楽曲で感じられる儚さやセンシュアルさと潔癖が同居する世界観は、世武という音楽家の突き抜けた美しさであり、映画やドラマの劇伴作曲家としても活躍する彼女が、自らの内的な映像を立体的に表現していることを実感した。ピアノの弾き語りで届けた楽曲では、その演奏スキルと飾らない生まれたてのような歌声の混ざり合う妙味に観客も没頭。静かにステージを見つめる人もいれば下を向き、自分の内面と対話するように揺れている人もいた。ポップなリズムと愛らしいボーカルの「君のほんの少しの愛で」では、率直な歌詞が人々の琴線に触れる気配が伝わって胸に迫る場面もあり、ラストに演奏された「YOU」は、いつかまたどこかで音楽で出会うであろう目の前にいる一人一人の「あなた」に向けられた、前向きな“さようなら”の歌のように響いた。別に似ているとか音楽性が近いという意味合いではなく、世武の音楽家としてのレベルはビョークや矢野顕子に近いものがあると思うし、クラシックを素地にもち、オーケストレーションのアレンジもできる彼女が、ごくパーソナルな感覚を落とし込むからこそ生きる、そのバックボーンの深さがソロ作品であり、そこはこの日のライブでも突き詰められていた。MCもほぼなく、全身音楽家と呼びたい純度の高い演奏は1時間とは思えない速さで終わってしまった。

sébuhiroko 撮影=今井駿介
sébuhiroko 撮影=今井駿介

ゲストとホストという関係ではなく『O/g』は表向きには穏やかながら、お互いの表現でしのぎを削るれっきとした対バンだと感じる。それは観客の音楽に対するフラットな姿勢と、同時にいい意味シビアな審美眼にも顕著だ。

odol 撮影=今井駿介
odol 撮影=今井駿介

odolのメンバーがステージに登場。夜明け前の最も暗い色合いから朝がくる瞬間のような、群青のライティングが美しく、1曲目の「夜を抜ければ」にふさわしい。ドラムの垣守以外のメンバーがシンセやキーボード、サンプラーなども兼任する編成になり、過去の楽曲のアレンジが大幅に変更されている。ミゾベ(Vo)がハンドマイクで歌に専念していることも大きな変化だ。そのままシームレスに5月リリースの新曲「大人になって」を披露。輝度の高さとフォークロアな感触のどちらもあるユニークなナンバーだ。さらに7月に配信リリースされたばかりのダンサブルな「four eyes」へ。正確には四つ打ちとは言えないけれどハウス的なアプローチを、裏拍のキーボードリフ、ハイハットとスネアを限りなくミニマルに抑え、リズム楽器の圧ではなく、全ての楽器が最低限の音を編みながら徐々にアンサンブルのスケールを大きくしていくという人力ダンス・ナンバーだ。ミゾベの歌のメロディや歌詞の乗せ方も記号的で、体感的にも聴感的にも楽しめる。ボーカルのリフレインでグルーヴが同心円を広げていくイメージは、どこかアンダーワールドの歌モノナンバーにも近い印象をも持った。

odol 撮影=今井駿介
odol 撮影=今井駿介

odol 撮影=今井駿介
odol 撮影=今井駿介

また、音源でのピアノ中心のシンプルな音像から、グッと全ての楽器がロングトーンで鳴り、ウォール・オヴ・サウンドのようにアレンジが変化した「狭い部屋」も新鮮だ。逆に、同じEP『視線』収録の「GREEN」は元々のアレンジを踏襲し、警鐘のようなノイズギターと淡々としたピアノリフ、葛藤する気持ちを遠くまで放物線を描くように歌う同曲は、今やodolのライブで一つの山場を形成する代表曲になっていた。

odol 撮影=今井駿介
odol 撮影=今井駿介

ブラジルのミナス音楽を思わせる歌メロの「またあした」で場面転換を行うような時間が設けられ、最近の彼らの楽曲の中でも最も親しみを持って素直に歌メロに乗っていける「時間と距離と僕らの旅」。ライブではアンサンブルのそこここにジャズ/フュージョン的なコード感や音色を発見した。「years」「逃げてしまおう」といった、歌メロ部分は素朴ですらあり、アウトロに向かって音圧を増していたバンド・アンサンブルがもっと整理され、ノイジーさは減衰し、映像の中を疾走するような感覚をもたらすアンビエンスが新たに構築されていたのも、odolの新しい地平を実感させてくれた。ゆっくり歩くようなテンポのラスト・ナンバー「生活」にもその変化は明らかだった。

odol 撮影=今井駿介
odol 撮影=今井駿介

odol 撮影=今井駿介
odol 撮影=今井駿介

アンコールで曲を演奏する前にミゾベが『O/g』がなんの頭文字かを伝え、「考えすぎと、閃き」というこのバンドの特性、そしてそんな自分たちらしさを携えたまま、共振する音楽性を持つバンド/アーティストと共にライフワークとして続けていきたい企画であることを話してくれた。さらに「僕らの音楽人生で一番大きな作品」という、10月24日にリリースされるニューアルバムについても発表。フルアルバムとしては約2年半ぶりとなるが、完成までにこの『O/g』や先日のフジロック出演などで得たバンドの今いる地平がフォーカスされていくのではないだろうか。

odol 撮影=今井駿介
odol 撮影=今井駿介

お手本となるフォーマットがなく、すでにあるムーヴメントとも無縁なこのバンドが、むしろ曲そのもので判断される機会が増えた最近のリスナー環境において、純粋な評価を得る予感しか今はない。最後にファンからの要望を汲んだ選曲として「飾りすぎていた」が披露された。心情に沿った静けさと怒涛のアンサンブルがアレンジの肝になっている演奏もやはりodolの醍醐味。迫真のシューゲイズ・サウンドもどこか冷たく青い炎のよう。新しいビート感にもアプローチする今、ますます一つのジャンルに拘泥しないodolの音楽は、直感的に聴き手へ広がっていくはずだ。

取材・文=石角友香 撮影=今井駿介

odol 撮影=今井駿介
odol 撮影=今井駿介

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