藤田嗣治や円山応挙らが描く、“動物の美”を優雅に味わう 『第24回 秘蔵の名品 アートコレクション展 動物たちの息吹』レポート 

SPICE

2018/8/9 17:30


2018年7月30日(月)~8月23日(木)まで、ホテルオークラ東京にてチャリティーイベント『第24回 秘蔵の名品 アートコレクション展 動物たちの息吹』が開催されている。
一般財団法人クリステル・ヴィ・アンサンブルの動物保護活動を説明する滝川クリステル代表理事
一般財団法人クリステル・ヴィ・アンサンブルの動物保護活動を説明する滝川クリステル代表理事

このアートコレクション展は、1994年から24年間にわたって続いているホテルオークラ東京の社会貢献活動だ。展覧会の純益はさまざまな支援活動に寄付されている。今年は日本赤十字社等に加えて、滝川クリステルが代表をつとめる一般財団法人クリステル・ヴィ・アンサンブルにも寄付される。この団体は、犬猫の殺処分をなくすための情報発信・譲渡の促進や絶滅危惧動物の救済を主眼に活動している。

今年のチャリティー絵画展のテーマは「動物」。特にホテルの所在地の虎ノ門にちなんだ、“虎”の名画を鑑賞できる。また、絵画展にちなんだコンサートや宿泊プラン、期間限定のお土産品もおすすめだ。ホテルオークラ東京ならではの落ち着いた雰囲気や、一流のサービスも絵画とあわせて堪能したい。

第1章 田園のなかの動物

ヘルブラント・ファン・デン・エークハウト《ユノ、 ユピテル、 そして牛に変身させられたイオ》個人蔵
ヘルブラント・ファン・デン・エークハウト《ユノ、 ユピテル、 そして牛に変身させられたイオ》個人蔵

第1章では、西洋絵画を中心に動物のいる風景画が展示されており、日ごろ私たちが目にすることのできない個人蔵作品が並ぶ。おすすめは、《ユノ、ユピテル、そして牛に変身させられたイオ》だ。ユノの上位に立つ者の不敵な笑みと牛の様子に、他者や自然をコントロールする人間の性があらわれている。

第1章 田園の中の動物 エリア
第1章 田園の中の動物 エリア

西洋画における人と動物のかかわりは、牧歌的でありながら基本的には人間社会中心の視点だ。現代的な私たちの感覚とより近いともいえる。第1章で西洋的な視点を体験したあとに、第2章、第3章の伝統的な東洋の動物表現を比較すると面白いだろう。

第2章 動物画の魅力

第2章 動物画の魅力 エリア
第2章 動物画の魅力 エリア

第1章とがらりと変わって、江戸期・明治に描かれた東洋絵画の中から動物達がテーマの作品が並ぶ。「禽獣画」と呼ばれるジャンルだ。動物そのものの自然な姿、自然と動物の調和が主眼となっており人間はそれを”愛でる”という格好である。
菱田春草 《黒猫》 播磨屋本店
菱田春草 《黒猫》 播磨屋本店

見どころは、今回の主眼である虎の屏風絵と、犬猫のかわいらしい絵画だ。菱田春草の《黒猫》の緊張感のあるかわいらしさは、猫好きには覚えのある一瞬だろう。散歩中にかわいらしい子猫に出会って「おいでおいで」しても警戒され、そこがまたかわいい! と思ってしまう、あの瞬間である。絵の中の子猫は、警戒した目を大きく開いてこちらを見ている。人に媚びない猫の魅力がぎゅっと凝縮した作品だ。
円山応挙《十二支図の内 菊狗子》(部分)海の見える杜美術館
円山応挙《十二支図の内 菊狗子》(部分)海の見える杜美術館

一方、円山応挙の《十二支図の内 菊狗子》は、子犬の魅力が全開である。野菊のそばで遊ぶくったくのない子犬たち。猫と違ってこの犬たちは人間に容易に抱き上げられることだろう。野菊の香りと、犬のふんわりとした暖かさが伝わってくる。
岸竹堂《猛虎図屏風》(右隻)(千總)
岸竹堂《猛虎図屏風》(右隻)(千總)

この第2章では、動物達のほぼ等身大に近い大作が多く、らくだや馬、虎など、さまざまな動物の迫力ある姿がならぶ。とくに屏風絵は圧巻だ。平面絵画とは異なり軽く折り曲げているがゆえに、立体的で動物の躍動感が伝わってくる。なかでも竹内栖鳳の屏風絵《虎》は、大胆な筆使いと正確な描写が共存する名品である。左側の虎たちの健康的な毛並みや筋肉の動き、野生的な表情……。屏風の中から、虎たちがそのままこちらへと歩いて来るかのようだ。

その右側には寝そべる虎がいる。こちらをまっすぐに見ているまなざしは、どの角度からも視線が追ってくる。純粋に隙なくこちらを見る目から迷いのない野生の生き様が伝わってくる。見透かされて怖いような、認められて嬉しいような複雑な気持ちになる。

展示室は大変広く、これらの大きな屏風絵を遠くからも眺めることもできる。こうした大作は引きがあると見栄えがする。近くで見る印象と遠くで見る印象の違いも十分味わえるところがうれしい。

第3章 花鳥繚乱

石崎光瑤《孔雀図》(左隻) 海の見える杜美術館
石崎光瑤《孔雀図》(左隻) 海の見える杜美術館

みやびで華やかな花鳥画の世界で展覧会はしめくくられる。

いろいろな鳥がいる。孔雀や南国の鳥、おなじみのセキレイや鷹、上村松篁の《樹下幽禽》では、シマハッカンという南国の鳥がエキゾチックな姿を見せてくれる。鳥たちは花や木の実、紅葉など季節の美を背景に見事な構図で描かれ、会場は宝石箱を開けたようなきらびやかさだ。
テープカットの様子
テープカットの様子

会場中のどの絵画を見ても、動物たちは徹底した観察眼を下地に個性を引き出されて描かれている。画家たちの心ひかれた動物は趣がそれぞれ違い、また同じ動物を描いても視点が異なっている。

「こういう見方もあるんだなあ」と感心したり、「そうそう! この感じがかわいいんだなあ……」と共感したり、「こんな動物がいるんだ!」と驚いたり、描かれた動物たちの姿に心が優しくゆさぶられる。

この夏は、動物たちの美の息吹をホテルオークラ東京で優雅に味わってほしい。

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