サッカーW杯を野宿観戦した男が悟った「日本人よりロシア人のほうが優しい」

日刊SPA!

2018/8/9 15:52



「日本対セネガルが行われるエカテリンブルクに向けて歩いている道中、ドーベルマンっぽい野犬と対峙しまして……」

フランスの大勝で終わったロシアワールドカップ、大会前は治安面でかなり不安視されており、都市部では外国人を狙った強盗、スリなどの日本人の被害も多く、日本の外務省はロシアの大部分に対し注意を促す「危険情報レベル1」、一部地域には渡航中止勧告を促す「危険情報レベル3」まで発出していたのだ。さらに“世界一凶暴”と言われるロシアフーリガン、目的のためには手段を厭わぬネオナチまで……。

そんな大会期間中、ロシアのストリートの治安を、ストリートで寝ることで感じ取った猛者がいる。その名も市川野宿、誰が呼んだか「プロ野宿」。寝袋ひとつで挑んだ、本当のロシアの治安とは!? インタビュー形式でお届けする。

――まずは「野宿」をはじめたキッカケを教えてください。

市川野宿(以下、市川):もともとは高校1年の時に遅刻癖がヒドすぎて留年寸前になり、激怒した親に捨てられて“ホームレス高校生”になったからです。野宿しながら登校してはいましたが、さすがに1ヶ月ほどで断念。26歳になった現在はさすがに家を借りていて、FC東京のサポーターとして遠征に付いていくときも、宿泊費の節約のために基本は野宿です。公園の公衆便所裏や、神社の軒下や、ビルの隙間で寝ています。冬の北海道のときは寒さで凍死しかけましたし、夏はヤブ蚊に刺されて顔が倍以上になりましたけど、……もう野宿に慣れているので平気です。

――今回のW杯期間中、何日間野宿し、持っていったものは何だったのでしょうか?

市川:日本代表がベルギーに敗退した翌日までいたので、18日中、野宿は14日程度です。今回の旅は“宿泊費ゼロ”を掲げ、無料の寝台列車で寝たりはしていました。でも、最終日にシャワーに入るために借りたドミトリーで誤って寝てしまい……、その目標は達成できませんでした(苦笑)。持っていったのはリュック一つに、寝袋、床に敷くマット、携帯充電器に着替え程度です。あとはお金も……30万円ほど持っていきましたが、飛行機代やレンタカー代、チケット代にだいだい消えたので、実質使えたのは5~6万円。ほぼ飲食代や風呂代に消えましたね。

――主にロシアではどの辺りで野宿を?

市川:初日は初戦コロンビア戦を終えて、会場サランスクから徒歩10kmほどのビジネス街にある、ビルのゴミ置き場の裏手でした。ホテル街からも遠いので、夜になれば人はまったくおらず。気温10度ほどだったので、静かで快適に眠ることができました。あとは移動のため数回50km歩くときもあったので、疲れてその辺の道で寝たりも……。

――えっ、50kmを歩いて移動していたのですか?

市川:1000km移動のときはさすがにレンタカーを借りましたけど、基本は「Google Map」を頼りにした徒歩移動です。平均1日20km近くは歩いていて、50kmは普通。最終日はロシアで移動手段の一つとして普及していたキックボードを買い、空港まで60km漕ぎ続けました。いや~、あれは疲れますね!(笑)。

◆ロシアで一番危険なのは強盗ではなく、田舎町にたくさんいる大きな野犬!

――その辺の道で寝て危険なのでは?

市川:う~ん、野犬はヤバかったですねぇ。

――野犬ですか? ロシアでは野生化した野良犬が問題になり、大会前に大量に殺処分された、というニュースもありました。

市川:確かに都市部はほとんどいませんでしたが、少し歩けば出てきます。しかもドーベルマンのような大型犬ばかり! もう対峙すれば「噛んでやる!」という威嚇の眼差し。ちょっとした田舎道にはたくさんいて、もう何度も逃げました……(苦笑)。

――あの、人の危険さとかは……。

市川:会場前には警備員も多く、入場チェックもかなり入念で、問題をおこさないよう徹底された大会に感じました。心配していたフーリガンも、ネオナチもいたのかな?と思うほど、お祭りごとを楽しんでいる印象。スリには警戒していて、一度、都市部のベンチで寝てしまったときに、手に持っていたスマートフォンが落ちたんです。そんな様子を見ていたロシア人男性が「携帯が落ちているよ!」と拾ってくれました。あとは、ロシアの親切心は日本人を上回ると思います。

――日本人よりですか?

市川:はい、街にいるロシア人は困っている人を見かけたら、進んで声をかけてくれる。道に迷っているだけで「困っているのか?」と案内してくれる。モスクワに向かうための道を聞いただけなのに、「俺の車に乗っていくか?」と乗せてくれたり。あと、一番驚いたのが、間違えて高速道路を歩いていたら女性ドライバーが停まってくれて、「こんな場所歩いたら危険だから乗りなさい!」とピックアップをしてくれたことです。

――女性ドライバーが1人でですか?

市川:はい。普通、こんな薄汚れた異国の男性なんて車に乗せますか? 日本だったら性犯罪などを警戒して、100%乗せてくれない。W杯期間中で国民にボランティア精神があるかもしれませんが、野宿をする中で何度もロシアの人たちには助けられました。冷淡なイメージ? とんでもない。ロシアは僕にとって世界一治安の良い国。冷たいのは、日本人のほうかもしれませんね。ちょっとシステマチック過ぎる部分がありますし、基本は野宿していても無関心ですから。

次の2022年カタールW杯でも、市川氏は全て野宿、ほぼ徒歩移動を予定しているという。世界の路上で寝たことで知った日本人の冷たさを、2020年東京五輪で訪日客は知るのかもしれない。

<取材・文/カトウカジカ>

【市川野宿】

26歳、元ホームレス高校生。普段は日雇いをしながらFC東京のサポーターとして国内、世界を“野宿”で遠征する。『クレイジージャーニー』の丸山ゴンザレス氏も“ヤバい旅人”として評価している。ブログ『野宿ブログ~地球に泊まる~』

あなたにおすすめ

すべての人にインターネット
関連サービス