新垣結衣、『コード・ブルー』10年の変遷で見せた愛される理由


大規模災害に見舞われた人命を救うために空翔けるスケールの大きな映画『劇場版コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-』の冒頭に流れるテレビシリーズを振り返る映像を見て、白石恵を演じるガッキーこと新垣結衣の10年間の変遷がまぶしくなった。

2008年の1st seasonではセンターパーツの姫カット風、2010年の2nd seasonはボブスタイル、そして久々に復活した2017年の3rd seasonでは横分け。徐々に成長していく様子が髪型でもわかる。

ガッキー演じる白石恵はフライトドクター候補生からはじまって(1)、晴れてフライトドクターになり(2)、翔北救命センターのスタッフリーダーにまで成長(3)、映画では堂々たる貫禄をふりまいている。

貫禄といっても、透明感、清涼感は残したまま、落ち着きが加わったという印象で、むしろピュアな感じを10年キープし続けているところがすごいと思う。雪肌精を使ったらそうなれるかと思わず購入を検討しそうになった(なれません)。

映画では、10年という長い間、苦楽を共にしてきた仲間たちがそれぞれの新たな目標の地に旅立つ直前に、未曾有の大事故が起きる。成田空港への航空機緊急着陸事故と東京湾での海ほたると巨大フェリーの衝突事故が連続発生、主人公・藍沢耕作(山下智久)、白石ほか、救命センターのメンバーたちが奔走する。
○なぜかどこか抜けている役が似合う

運び込まれてきた患者がガンを患っていて事故での負傷が治るまでにガンも進行してしまうという悩ましい問題や、藍沢が事故に巻き込まれて大変なことになるなど、次々起こるアクシデントの数々……救命センターは休む間もなく常に緊張状態、その一方で、冴島はるか(比嘉愛未)と藤川一男(浅利陽介)の結婚式も近づいている。白石は結婚式用のメッセージ映像を撮ることになるが、みんなひとくせもふたくせもあるものだからなかなか撮れず……とりわけ緋山美帆子(戸田恵梨香)はなんだかんだと理屈をつけて逃げて白石を困らせる……というほのぼのエピソードもある。

藍沢と並んで処置に当たるときの冷静沈着な感じも素敵だが、緋山に手を焼くところなど真面目過ぎる白石は微笑ましい。この役をはじめとして、新垣結衣は、理知的で努力家で誠実にもかかわらず、なぜかどこか抜けていたり報われない目にあったりする役がよく似合う。例えば、『コード・ブルー 2nd season』のあとに出演し、代表作のひとつになった『リーガル・ハイ』(12)シリーズの黛。賞賛ではなくからかいの意味で「朝ドラのヒロインのよう」と言われてしまうキャラクターだ。この場合の「朝ドラのヒロイン」とは生真面目で融通が利かない感じと解釈できる。不正を許さず真実を求めて懸命に弁護を続ける。まだ新米で慣れないことが多いながら真摯な態度がドラマの救いになっていた。

また、社会的ブームになった『逃げるは恥だが役に立つ』(16)の森山みくりは、真面目で頑張り屋。就職浪人したので大学院まで出たが、結局派遣労働を余儀なくされるようなついてない人物。何かと気が回って優秀に見えるが「小賢しい」ところをコンプレックスに思っている。一見なんの問題もなく見えるにもかかわらず、何かちょっとだけ残念な感じのキャラクターだ(でもかわいい)。

映画『ミックス。』(17)の富田多満子は、子どものときは天才卓球少女、辞めてふつうのOLをやっていたが卓球の才能のある女性に恋人を奪われてしまい、どん底の状況から再び卓球をはじめる。どん底から這い上がるがむしゃら感が良かった。
○能あるガッキーは額を隠す

こんなふうに、新垣結衣にはちょっとだけ残念な役が似合う。用心に用心を重ねながら落とし穴にはまったり、黒板消しを頭に落とされたりするような、罠にはまってしまうような、でも、絶対にへこたれない。汚れない。すぐに立ち上がり、走り出す。だからこそ愛される、みたいなところがある。

映画『コード・ブルー』でドクターヘリに乗るため、リュックを肩にかけて走るカットが2回ほど出てくるが、走る姿もひたすら真摯。腰の位置が高くて足が長くてスタイルがものすごくよく、下手したら上目線キャラになりかねないのに、決してそうならず、逆になぜか上目遣いな(下から目線)印象すらある。

背の高い女の子が気にして少し猫背になってしまうことがあるが(ガッキーは猫背ではないすらっとしている)、そういう感じなくていい、はにかみみたいなものがガッキーを魅力的にみせているように思う。あの声もいいのだと思う。くちぶえを吹くような柔らかな声。すべてにおいてやり過ぎない。

映画『コード・ブルー』の白石の前髪からちらっと聡明そうなつるっと白い額がのぞいているが、その絶妙な空きが深窓のお姫様が御簾を全開でなく、ちらっと一瞬空けて顔を見せてくれたような喜びに通じる。それはまるで、天岩戸を女神が開けた瞬間のありがたさみたいな感じにも似て、すっかりガッキーについていく! と思ってしまうのだ。能ある鷹は爪を隠す。能あるガッキーは額を隠す。

■著者プロフィール
木俣冬
文筆業。『みんなの朝ドラ』(講談社現代新書)が発売中。ドラマ、映画、演劇などエンタメを中心に取材、執筆。著書『挑戦者たち トップアクターズ・ルポルタージュ』『ケイゾク、SPEC、カイドク』、ノベライズ『隣の家族は青く見える』『コンフィデンスマンJP 』 など。5月29日発売の蜷川幸雄『身体的物語論』を企画、構成した。

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