プロが教える本当に怖いホラー映画3選

夏は、ホラー映画の季節でもある。今年の暑さは尋常ではないため、顔面蒼白になりそうなほど怖い作品を見ても丁度いい気がする。

「本当に怖いホラー映画を教えてください」という質問が「教えて!goo」にも寄せられており、数々の恐怖映画のタイトルが挙げられている。しかし、本当の恐怖を味わいたい人にとっては、まだまだ物足りないものかもしれない。ということで今回、映画評論家の前田有一さんに、本当に怖いホラー映画を3作紹介してもらうことにした。

■『オープン・ウォーター2』

最初の作品は、夏にぴったりなホラー映画ということだが……。

「夏にぴったりな作品といえば『オープン・ウォーター2』です。ここでは、あえて2作目をおすすめします。タイトル以外、前作とのつながりはないので『1』を見ていない人でも問題ありません。メキシコ湾にヨットで繰り出した仲良し若者6人が、沖合で海に飛び込んで遊んでいたら、さあ大変。ハシゴをかけ忘れたせいで、数メートル上の甲板に戻る手段がありませんでした、というお話です」(前田さん)

前段だけでも、何か起きる感が半端ない。

「ほんの少し上に安全地帯があるのに戻れない。そのもどかしさは、やがて恐怖へと変わります。『このまま永遠にビキニ姿で漂流……。いや、海ですからヤバい生き物がいるし、そんなのが来たらどうすんの?』、というわけで期待通りの展開となります。船体側面のツルツル感がいかにも絶望的ですが、なんと船内には仲間の一人が連れてきた数カ月の赤ん坊が寝ています。ハシゴも下さず遊んでいたバカな若者はともかく、かわいい赤ちゃんが放置され、じわじわ衰弱していくのはたまったもんじゃありません。これが、パート2ならではの凶悪な設定です」(前田さん)

凶悪な設定とはいうが、この作品は実話だそうだ。

■『PVC-1 余命85分』

次は、ちょっと珍しいコロンビアのホラー映画だ。

「ホラー映画は、突然大音響で幽霊を出すなど、その気になればいくらでも脅かす演出ができると思います。しかし、そういった工夫のない演出は誰も評価しないし、見にいく気も失せるものです。ですので、いかにそうした力技を使わず、お客に恐怖心を抱かせるか、予想外の方向へ連れていくのかという創意工夫こそが、ホラーやサスペンスというジャンルの醍醐味になります。その意味で『PVC-1 余命85分』はよくできています」(前田さん)

前田さんのハードルの上げ具合から察するに、相当期待できそうな作品である。

「85分間リアルタイム進行、全編なんとワンカット撮影の映画です。南米発の恐怖映画というのも珍しいですが、演出もストーリーもアイデアがよいです。強盗グループの腹いせで時限爆弾入りの首輪を装着された妻を救うため、爆発までのわずかな間、奔走する主人公たちを描いています。手持ちカメラ一台による撮影ながら、構図を工夫して画面にメリハリをつけ飽きさせません。舞台となるコロンビアの村人たちの生活臭が伝わってくるのも新鮮です。リアルタイムなので、単なる移動などの無駄が残り時間の浪費を意識させ、恐怖感を高めています。怖いものを見たい人には掘り出し物と言える作品だと思います」(前田さん)

公開時はレイトショーのみだったとのことで、マニア度は高め。なんと、こちらも実話だそうだ。

■『ライト/オフ』

最後は、怖さレベルが尋常じゃないため、閲覧注意と前置きをもらった。

「近年もっともヤバかったホラー映画というと『ライト/オフ』です。2分間の短編動画が『怖さレベルが異常すぎる』とネットで爆発的に再生されたのを知ったジェームズ・ワンが、製作を名乗り出て長編映画化したものです。実際、そのネットの短編はとんでもない怖さで、ネットだから許されるレベルの恐怖演出でした。通常、商業映画は、怖くし過ぎることで、ついてこられる客がいなくなるのを避けるため、多少なりとも手加減をするものです。しかし、本作はそのラインを完全に超えていました」(前田さん)

手加減なしの怖さとは、確かにヤバそうな気配が……。

「『ライト/オフ』は、その原作短編レベルの緊張感を81分間強いる、とんでもない恐怖映画です。要するに、短編に耐えられた“恐怖耐性”をもつエリートだけに鑑賞が許された映画ということです。ホラー初心者が見たら大変なことになるでしょう。『暗いところだけに出る恐ろしい何か』を描いた作品なのですが、この超シンプルな設定が実によくできています。映画館は当然暗いので、客席にも安全地帯はないわけです。画面がブラックアウトしただけで恐怖メーターは跳ね上がります。ですので、この映画を見るときは、是非部屋を暗くしてみてください」(前田さん)

我こそはという恐怖映画のエリートは、是非自分の目でその恐怖を確かめてみてほしい。

寝苦しい夏の夜には、今回紹介した作品を見て、恐怖に凍りついてみてはいかがだろうか。眠れなくなっても、そこは自己責任でなんとかしてもらいたい……。

●専門家プロフィール:前田 有一
映画評論家。2003年より自身が運営するサイトと日本文化チャンネル桜の番組内で「超映画批評」と題し、大手が配給する映画からインディーズ系の映画まで幅広く批評。「新作映画を公開直前にネタバレ無しで毒舌紹介」として、作品によっては厳しい評価をしている。

教えて!goo スタッフ(Oshiete Staff)

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