土用丑の日にコンビニに並んだ「約3千円の鰻重」は売れたのか?今や味も品質も中国産で十分?


 土用とは立春、立夏、立秋、立冬直前の18日間を指す言葉で、その間を昔の暦では干支で数えたことから、土用の期間の丑の日を「土用丑の日」と呼んだ。昨年は1月26日、4月20日、5月2日、7月25日、8月6日、10月29日の6日間、今年は1月21日、2月2日、4月27日、7月20日、8月1日、10月24日、11月5日の7日間が「土用丑の日」となる。

しかし、一般的に「土用丑の日」といえば、日本では“鰻を食べる日”と思われており、夏場の「土用丑の日」のことを指す。昨年は7月25日と8月6日、今年は7月20日と8月1日で、「土用丑の日」が2年連続で2日あった。ちなみに、来年は1月28日、4月22日、5月4日、7月27日、10月31日の5日間で、夏の「土用丑の日」は7月27日の1回のみ。夏に「土用丑の日」が2日ある場合、それぞれ「一の丑」「二の丑」と呼ぶ。

日本における鰻食の始まりは縄文時代とも奈良時代ともいわれるが、本格化したのは江戸時代との説が有力だ。本来、天然鰻の旬は、成長して脂の乗る秋の終わりから冬場で、夏場に鰻を食べる習慣はなかった。鰻屋が夏場に鰻を売るため、江戸中期の学者・平賀源内に相談したところ、「土用丑の日に鰻を食べよう」というキャッチフレーズが考案され、夏の土用丑の日に鰻を食べる食習慣が日本に根付いた。江戸時代には天然鰻がたくさん捕れたので、夏場でも鰻はすべて「天然」かつ「江戸前」だった。

ちなみに、戦後の天然鰻の漁獲量のピークは1961年(昭和36年)の3387トン。このままの漁獲量が続けば養殖や輸入に頼る必要はなかったが、海洋環境の変動や生息環境の悪化、稚魚のシラスウナギの過剰な漁獲などの要因で鰻は激減の一途をたどった。

平成に入ると、これまで「高級品」だった鰻の蒲焼きが、技術開発によりスーパーなどの量販店向けパック詰め商品として誕生し、一気に身近な食べ物となった。夏の風物詩だった鰻の蒲焼きが、季節を問わず、ほぼ年間通してスーパーの店頭に並んだ結果、鰻の供給量は2000年にピークに達した。同年の供給量は15万8094トンで、うち輸入が13万3211トンを占めた。国内養殖量のピークは1982年(平成元年)の3万9704トンで以後、供給量は次第に減少し、2003年には3万5000トンまで減少した。

インターネット調査会社のマクロミルが12年と17年の2回、「土用の丑の日に関する調査」を実施した。12年は「土用丑の日に鰻を食べる予定」と回答したのは54%。「1人分の予算」は平均1321円だった。「食べるなら高くても国産」と回答したのは68%。「安いなら輸入で良い」は32%だった。17年の調査では、「土用丑の日に鰻を食べたい」が69.7%。「1人分の予算」は1834円だった。

鰻の蒲焼きの購入者に「どこで買うか」の意識調査を行ったところ、「スーパー」74.1%、「専門店」13.6%、「デパート」11.6%、「宅配・ネット通販」7%、「コンビニ」3.7%、「外食チェーン・レストラン」2.9%、「その他」0.8%で、やはりスーパー・量販店での購入が群を抜いて高いことがわかる。スーパー店頭のパック蒲焼きはほとんどが中国産だったが、03年に中国産蒲焼きから禁止薬物が検出されたため、その後は輸入が激減。宮崎産や鹿児島産などの国内養殖鰻を使ったパック詰め蒲焼きの販売を開始。近年は中国産の残留薬問題も解決したといわれ、安い中国産パック詰め蒲焼きと、ちょっと高い国産パック詰め蒲焼きを店頭に並べ、どちらを購入するかの選択は消費者にまかされるようになった。

日本に大量に輸入されていた中国産加工蒲焼きの鰻が、実はヨーロッパウナギだったことが発覚したことから、ヨーロッパウナギは国際自然保護連合(IUCN)がレッドリスト“絶滅危惧種”の最上位である1A類に指定。07年にはワシントン条約附属書2への掲載が決まり、09年より規制。またEUは10年12月からヨーロッパウナギの輸出入を全面的に禁止した。同様にニホンウナギとアメリカウナギも14年に国際自然保護連合がレッドリスト絶滅危惧1B類(近い将来における野生での絶滅の危険性の高いもの)に指定。また、ニホンウナギに味が近いことから輸入量が増えている東南アジア産ビカーラウナギも準絶滅危惧に指定されている。

●今年の丑の日の売り上げは?

さて、猛暑のなか一の丑、二の丑も終わったが、今年のウナギの売れ行きはどうだったのか。日本養殖新聞の高嶋茂男編集長に話を聞いた。

「ウナギ業界でいえば、専門店さん向けの活鰻の流通と、スーパー・量販店向け加工品の流通の2つに分かれますが、加工品は金額ベースで中小・大手スーパーも入れて丑の日当日の対前年比は100%を若干下回る数字じゃないかとみています。国産の活鰻に比べると中国産の活鰻のほうがキロ当たりで500円くらい下回っています。中国産だからといって、マズいということもありません。扱ってみて、品質も意外といいので、そのまま中国産を使っているケースも多いです。

今年の年明け、1月、2月くらいまではシラスウナギが大不漁で、このまま捕れないんじゃないかと先行きが懸念されました。大事な7月にウナギがなかったら元も子もないということで、国産の出荷がかなりセーブされました。その代替品として、中国産の輸入活鰻はどうですかと問屋さんが声をかけて、うなぎ屋さんも背に腹は替えられないとして中国産活鰻を扱いました。3月以降、国産活鰻の出荷も増えてきたのですが、一部のうなぎ屋さんとしては、中国産は値頃で、品質も自分たちが考えていたより問題ないということで、国産活鰻に戻らずにそのまま中国産活鰻を使ったようです」(高嶋氏)

今年6月の築地市場におけるウナギの平均卸売価格は、1キロ当たり5449円。昨年同月比で34%高く、過去最高値となった。これまでの過去最高値は2013年6月の1キロ当たり4859円だった。当然、専門店で食べようと思ったら、相当の出費を覚悟するしかない。

「価格については仕方ないでしょう。ここ10年で相当上がっていますからね。2013年に4年連続でシラスウナギが大不漁で相場が暴騰して、今年と同じくらい値上がりしました。そこで専門店さんがメニュー価格を上げました。それに続いて今年も上げているので、昔なら特上とか上のいい鰻重が食べられたような値段でも、今年は並が精一杯というのが実状です。この状況が変わることはないでしょう。今シーズンは、シラスウナギが来る時期がずれたのが大きいです。普通だったら11月、12月からシラスウナギ漁が始まって採捕、1月半ばくらいまでに池入れされたシラスを新物として出荷し、7月の丑の日に間に合わせるという流れです。しかし、今シーズンはようやく捕れだしたのが2月半ばくらいからでした」(同)

多くの専門店が200円以上の値上げを余儀なくされた一方、あえて丑の日は休業にしている店もあるという。

●コンビニ各社の鰻重の売れ行き

今年はお手頃な価格ということで、コンビニエンスストアで事前予約して食べた人も多かったのではないだろうか。セブン-イレブンローソン、ファミリーマートといった大手コンビニチェーンでは、今年も予約販売で「うなぎ蒲焼重」を発売した。セブンとファミマは、お手頃な1000円台は中国産、2600円前後の上は鹿児島産、ローソンは鹿児島県産で1980~2980円とやや高めの設定だった。

「中国産が1000円台で提供できるのは、ずっと取引があって販売ルートが確立されていることが大きいと思っております。販売数量は公表しておりませんが、一の丑、二の丑ともに昨年並みと聞いております。予約されるお客様は毎年楽しみにされているリピーターの方が多いと、現場の声として聞いております。来年以降の販売については、まだ決まっておりません。当社の特徴としては、全国に専用工場を持っているので、炭火での焼きと蒸しにこだわりを持って製造・販売いたしております」(セブン&アイ・ホールディングス広報センター)

「販売数量については公表しておりませんが、前年比ではウナギ4品で対前年比120%弱になります。当社のうなぎ蒲焼重は鹿児島県産の特上、上、あとは国産のうなぎ飯、中国産の蒲焼重も今年は入りましたが、メインとなるのは特上と上になります。予約の特上と上に関しては、お茶が1本付いて100円引きということをやったので、それも数字を押し上げる効果になったのではないかと考えております」(ユニー・ファミリーマートホールディングス広報室)

「うなぎ蒲焼重は、おそらく20年ほど前から展開していたのではないかとのことです。土用の丑の日のウナギは、古くからの日本の行事食であり、ニーズも高い商品ですので、うなぎは例年同様のラインナップで展開いたしました。販売数量は非公表ですが、前年並みとなっております。昨年は一の丑が7月25日で給料日にあたり好調だった。今年は20日だったため大きな伸びではなかったようです」(ローソン広報室)

●さらに高騰する可能性も

さて、このまま高騰が続けばどうなるのか。ニホンウナギもヨーロッパウナギのようにワシントン条約の附属書に掲載され、規制対象にされてしまうのだろうか。

「来年5月のワシントン条約締約国会議(スリランカ)での議題に関しては、附属書掲載の提案期限である12月24日までにどこかの国が提案すれば、そのままほぼ来年の5月に向けて附属書への掲載が決まってしまう可能性が高いですが、今の時点ではまだなんとも言えません。7月16~21日の動物委員会ではニホンウナギは取り上げられず、あくまで附属書にすでに掲載されているヨーロッパウナギの話題が中心でしたからね。ただ、来年5月に附属書に載る載らない以前に、業界内外で資源を守っていくということには変わりありません。もし載れば、貿易規制に伴い相場も今より高くなって、消費者離れが起きる心配もあります」(前出・高嶋氏)

シラスウナギの国内採捕は、12月から4月の新月の夜前後の河川や海岸線において、都道府県知事の許可証を得た全国約2万人の採捕者が行い、その後、集荷業者から養殖業者に供給され、養殖場に池入れされる。池入れするシラスウナギの上限は全国計で21.7トンと決められているが、今年の池入れ数量は約14トンと、昨年の19.6トンを大幅に下回った。天然シラスウナギは「白いダイヤ」と呼ばれ高値で取引されており、密漁者も後を絶たない。

まずは、12月24日までにニホンウナギが附属書掲載種として提案されるのか否か。そして、来年7月27日の「土用丑の日」に鰻は食べられるのか。非常に気になるところだ。
(文=兜森衛)

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