酷暑対策でサマータイムの愚! 過重労働、健康被害、システム障害...デメリットだらけなのに五輪無罪でゴリ押し

リテラ

2018/8/8 21:10


 オリンピックの暑さ対策のため、日本政府が夏の時間を2時間繰り上げるサマータイムの導入に前向きな姿勢を見せている。

先月27日、オリンピック組織委員会の森喜朗会長が首相官邸を訪れ、安倍首相にサマータイムの導入を要請。安倍首相も解決策の一つとして導入に前向きな姿勢であることから、秋の臨時国会への議員立法提出を目指すという。

サマータイムを導入したことによる問題点は大きく分けて3つある。1つは労働時間がますます長時間化するのではないかという懸念だ。

7日放送『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日)でジャーナリストの青木理氏は「ヨーロッパなんかでサマータイムを入れているんですけど、早く帰って買い物できるとか、明るい時間に帰宅できるとかっていうメリットというのは、すぐにデメリットにもなるわけですよ。(中略)日本人的ないまの雰囲気でいうと、帰れるのかと。つまり、早くから働いて、遅くまで働いたら、労働時間が長くなるだけの話だし」と語っているが、実際、始業時間に厳しく終業時間には緩い日本の企業風土では、サマータイムを導入したところで早く帰れることはなく、ただ2時間早く出社しただけで、帰る時間はいつもと同じといった状況になる可能性が非常に高いと言わざるを得ない。また、小売業やサービス業は営業時間を大幅に変更させることが予測され、ここでも労働時間が長くなることが懸念される。

実は、日本でも、1948年から51年にかけてサマータイムを導入していたことがあるが、その際も残業量が増加して労働環境が悪化したことから廃止されている。この歴史が繰り返される可能性は残念ながら高いだろう。

もうひとつ懸念されるのが、健康問題。通常よりも2時間ずれた生活をいきなり強いられることで睡眠不足などを引き起こし、心疾患をはじめとした様々な病気を引き起こす可能性が指摘されている。前述『モーニングショー』で玉川徹氏は「夏に自律神経が乱れる人、多いわけですよ。これだけ猛暑になっていると。それで、いきなり睡眠時間2時間ぐらいずれちゃったら、本当に多くの人が命に直結するような事態になりますよ」と語っているが、過酷な気候のもと国内にいながら無理やり2時間の時差ボケを引き起こさせるような施策は、高齢者や持病のある人などにはかなり大きな負担となる。

とくに、心筋梗塞を発症するリスクが高くなることが報告されており、事実、ロシアでは2011年にサマータイムを廃止しているが、その原因も心筋梗塞で救急車を出動する回数が増えたからだとされている。

3つ目はシステムなどの構築に莫大なコストがかかると予想されることだ。2時間繰り上がった時計のために各コンピューターシステムを調整し直す必要があり、各企業はそこに多くのリソースを割くことを強いられる。エンジニアが、新国立競技場建設での過重労働のような状態にさらされる可能性が高い。

このようにサマータイムの導入では大きなデメリットがあるわけだが、それでも導入を決行するに足る十分な理由があるかといえば疑問だ。

サマータイムの恩恵を受ける競技の代表として、巷間よくあげられるのがマラソンである。サマータイムの導入により朝の5時スタートにすることができるとされているが、ならば現在の時刻のまま朝の5時スタートにすればいい。『モーニングショー』で玉川氏はこうも語っていた。

「マラソンだって午前5時スタートにすればいいだけじゃないですか。なんでそれだけのことのために、システムからみんなの生活から全部影響を受けなければならないのか。あのね、五輪無罪、オリンピック無罪みたいなのっていうのは、僕は大反対ですよ。オリンピックは楽しみですよ。楽しみだけど、たった2週間の話じゃないですか。それのために、たとえば、共謀罪を通してみたりね、こういうふうなこと考えてみたり、なにやってんだって思いますよ」

●オリンピック無罪で国家総動員状態! 過重労働、ブラックボランティア、学徒動員...

今回の東京オリンピックをめぐっては、あまりにも横暴なやり方が横行し過ぎている。玉川氏のあげた共謀罪もそうだが、死者も出ている新国立競技場建設での過重労働、劣悪な条件でのボランティア募集、大学や高等専門学校に対してボランティア参加のため試験時期をずらすよう文科省とスポーツ庁が通知を出した件、東京都オリンピック・パラリンピック準備局大会施設部のスタッフが大会期間中は混雑防止のためにネット通販を控えるように提言した話など、「国家総動員」「オリンピックのために自己犠牲しない人間は非国民」とでも言いたげな施策が次々と出されている。

サマータイムの導入もそのひとつと言っていいだろう。なぜ、たかだか数週間の運動会のために、日本に住む人々全員がこんな負担を強いられなければならないのか。暑さ対策のためなら、ここまで犠牲を払ってさほど効果のないサマータイムを導入するより、オリンピックを2カ月後ろ倒しすればいい話だ。

そもそも、この時期の日本は酷暑だということを知りながら、〈この時期の天候は晴れる日が多く、且つ温暖であるため、アスリートが最高の状態でパフォーマンスを発揮できる理想的な気候である〉(「立候補ファイル(日本語版)」より)などと言ってオリンピックを招致したのは誰か。

また、サマータイム導入にあたっては、もともとは恒久的な導入ではなく、2019年と20年の2年間のみの限定導入になるというが、前述したようなシステム変更のコストに見合わないとの指摘を受けて、恒久的なサマータイムの導入に舵を切り始めているとの報道もある。森氏は〈五輪のためにやるということではなく、日本政府が地球環境保護に取り組むという観点で進めてほしい〉(8月8日付ニュースサイト「スポーツ報知」より)と述べているが、そもそも、湿度が高く夜も暑い日本の気候ではサマータイムを導入しても冷房などの使用料は変わらないため省エネにはつながらないと長きにわたって指摘され続けている。

また、批判を受けてすぐさま限定的な運用から恒久的な運用に切り替えたというのは、要するに、たいして深く考えていなかったということだろう。こんなのはあまりにも杜撰過ぎる。日本に住む人々は政治家のオモチャではないし、オリンピック組織委員会の奴隷でもない。

こんなかたちでしか開催できないオリンピックならば、即刻返上するべきだろう。
(編集部)

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