「必要悪」「暗黙の了解」という認識が医学生や医師たちにも?東京医科大の入試不正問題、日本女医会会長に聞く

AbemaTIMES

2018/8/8 16:30


 東京医科大学の入試で女子受験者の得点を一律に減点していたとされる疑惑。結婚や出産による女性医師の離職率の高さを理由に、女子の入学者数が3割を超えない程度に抑えることが目的で、遅くとも7年以上前から常態化していたとみられている。

今年の同大の受験者数は男子1596人、女子1018人で、合格者は男子141名、女子30人だった。7日に開かれた内部調査委員会の報告書によれば、2次試験(小論文・面接)では全員の得点に0.8を掛けて一律に減点した後に、現役生と2浪までの男子には20点、3浪の男子には10点をそれぞれ加点。一方、女子と4浪以上の男子には加点をしないという得点操作が行われていた。つまり、女子と4浪以上の男子は2割減点されていた計算になる。3浪以上の学生を減点した理由は「医師国家合格試験の合格率が低い」「浪人生は留年・中途退学者が多い」というものだったようだ。

 同大は文科省の「女性研究者研究活動支援事業」(2013年)に採択され、3年で8000万円以上の補助金を受けていたこともある。公式サイトでは「女性研究者が能力を最大限に発揮できるとともに、出産、子育て又は介護と研究を両立できる環境整備を行う取り組みを支援することを目的とした事業」と説明していたが、一方では女子学生を減らす操作を行っていたのだ。

 医療行政を所管する加藤勝信厚生労働大臣は3日、「女性だからといって一律に制限を加える、いわば不当に差別することは一般論として申し上げればあってはならないと思う」とコメント。また、ロイター通信が「女性は相変わらず就職で苦戦を強いられ、出産後の仕事復帰でも壁に阻まれている」と報じたほか、フランス大使館が「フランスの大学医学部に占める女子学生の割合は2000年の57.7%から2016年には64.1%に上昇した。皆さん、是非フランスに留学しに来てください」とTweetするなど、海外からも注目され始めている。

医療現場の男女平等はどこまで可能なのだろうか。6日放送のAbemaTV『 AbemaPrime 』では、東京女子医大卒の泌尿器科医で、日本女医会会長も務める前田佳子氏に話を聞いた。

■"必要悪""暗黙の了解"という認識も
 前田氏は「学生は皆、医者になろうと思って医学部に入ってくるので、就職とも直結している。そこが入試の時点で入学者を制限するということに繋がっている。女性医師の数は増加傾向にあるが、ある時期から女子学生の割合は増えていない。なにか意図的なものがあるのではないか、ということは皆が薄々感じていたのではないか」と指摘する。

 しかし、医療の現場が女性にとって体力的に厳しいという現実を指摘する意見もあり、東京医科大のような措置についても"必要悪""暗黙の了解"だという認識を持っている女子医学生や医師も少なくないようだ。「医学部なんてそんなものではないかというのはある」と話す東京医科大の現役学生もいた。

 実際、株式会社エムステージの「ジョイネット」が男女の医師99人にアンケートを取ったところ、入試の減点に対し「理解できる」が13.5%、ある「程度理解できる」が51.4%と、「理解できない」の35.1%を上回った。「理解できる」とした医師たちからは「女医の離職率や、当直なしかつ時短などのパート勤務が男性より多いのは事実」(整形外科)、「妊娠出産で喜ばしいが、一番精神的、体力的にもきつい当直の穴埋めをするのは非妊娠女医と男性医師。ひとつの大学が女性受験生を減点するのは問題ない」(腎臓内科)といった理由を挙がった一方、「理解できない」と回答した医師からは「女性医師が仕事を辞めざるを得ないのは昭和型男性医師の働き方を皆に押し付けていることにある」(脳神経外科)、「女性医師が産休育休後に復帰しやすい職場環境を整えないと医師不足は進むばかり」(精神科)という意見が聞かれた。

前田氏が「外科系を選ぼうとすると"入らない方がいいのではないか"、"やめた方がいい"と言われることはあった。ただ、重い物を持つといった、体格差や性別差が影響する状況を除けば、女性だからできないということは思い込みでしかない」と話すように、「女性医師3人で男性医師1人分だと言われた」(女性・小児科)、「女性医師は期待されない。手術に入れないことも」(産婦人科)という実例が挙がった。他にも「フルタイム勤務ができず、戦力として男性医師がほしいという気持ちも理解できる」(男性・総合臨床科)、「女性医師は17時までしかいないから仕事が進まない、という愚痴も多い」(医師)という意見もあった。

■「どの業界でもある話」
 厚生労働省の「医師・歯科医師・薬剤師調査」(2012年)によれば、年代別の女性医師の割合は29歳以下の35.5%をピークに、年代が上がるにつれて割合は少なくなっている。ただ、男女比で見れば20.4%(2014年)と、増加傾向にあるといえる。また、日本医師会の調査(2017年)によれば、仕事を1か月以上中断した女性医師は47%で、最も多かった理由は出産・育児(84%)だった。

 これについて前田氏は「日本では"女性は子どもを産んで育てるもの"という、"性別による役割分担"が深く根付いている。育児をしながら働こうとすれば、男性よりも圧倒的にやるべき仕事が多いし、それが原因で辞めてしまうのは、社会のサポート体制が足りなかったということだ。それなのに、女子学生を減らす、という対応で片づけられるのはいけない」と話す。

 厚労省が掲げる「医師の働き方改革」によでば、子育てをする女性医師が求める条件には「職場の理解・雰囲気」「短時間勤務制度」「当直や時間外勤務の免除」「勤務先に託児施設がある」「配偶者や家族の支援がある」が挙げられている。前田氏は「卒業後は都会に出ていく医師も多いので、地方ほど医師数が不足している。そのため男女共同参画に関わる部門を設けて女性医師の支援をしている大学も多い。託児所を作ったり、時短勤務やシフト勤務など柔軟に働ける制度を設けたりしている大学もあるが、地域差は大きい」と、都市圏と地方の格差の問題も指摘した。

 東京医科大学前での抗議デモに参加した北原みのり氏は「将来を夢見て机に向かっていた女性たちの心を挫く行為。もしかすると私にもそういうことがあったのではないかと思ってしまうし、社会人女性としても非常にショッキングなことだと思う」と話す。マーケティングアナリストの原田曜平氏は「普通の民間企業でもこのような性別による差別は大いに行われている。理由を人事担当に聞いてみると、出産のときに離れてしまうことや、繁忙期が多い業界だと体力的にきついからと言われる。どの業界でもある話だ」と指摘した。

前田氏も「今回のような事実は悲しいが、ニュースで特集が組まれたりすることで社会の意識が変わっていくことが大切だ。頭の固い人たちを変えていかないと世の中は変わらない。個々の能力が優れていれば性別は関係ない。そのようなことに捉われない社会になることを望んでいる」と訴えた。

厳しい医療の現場において、男女平等はどこまで実現できるのだろうか。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)

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